第239話 20 わんこ語




それは、ひとつの好み。



We're dreamer,have some potential.



図書館の仕事も、めぐにとっては

誰かに喜んでもらいたい。



そんな気持ちが、どこかにあっての

事みたい。


そういう子は、クラスメートにもいて


路面電車の運転手さんになりたい、とか


郵便局で働きたい、とか


それぞれに夢を持っていて。




たぶん、恋をしたとしても

恋人に喜んでもらいたい、そんな

気持ちでいっぱいな子になったりする。





愛された恋人さんも、それで

彼女を愛したい、と思うのだろう。




そういうひとがいっぱいなら、街も

優しくなるんだろう。







めぐは、クリスタさんと一緒に

図書の整理をしてから


主任さんに、ご挨拶して

お家に戻る事にした。




すこし、お話したかったので


路面電車に乗らないで

クリスタさんと、歩道を歩いて

帰る事にした。



もう、夕暮れの街は


夏休みなのに、ちょっと涼しい。



空気も澄んできて。




そんなふうに、季節は過ぎていく。




「天国って、どこにあるの?」と

めぐは、クリスタさんに

率直に尋ねる。




クリスタさんは、ふんわりと


微笑みながら



「たぶん、どこにでもあるんでしょう。

しあわせなとき、心の中に

天国はあるのでしょうし。


そのとき、どなたの気持ちも

天国につながっているのでしょう」





つまり、11次元多重宇宙なので

複雑につながっている、その

共有ドメインが、天国。


だけど、その共通項目が、しあわせな

気持ち。



そういう事なのだろう。



数学的な感覚では。







なので、めぐが

さむくんの事を思って、一瞬垣間見た

天国は


めぐの気持ちが、天国、に

つながった。



そういう事なのだろう。





「もし、そうなら。

夢に見たりしたら、会えるの?」と


めぐは、夢想的に

クリスタさんと、歩きながら


微笑みあった。


そうですね、と

クリスタさんは、めぐに微笑み返した。



音楽のような声



その晩、めぐは

夢を見た。


見たい夢を見れたら、いいなと

思うけど。


この日のめぐは、そんな感じだった。



あの夏の日、絵本に入ってしまっためぐを

助けてくれた、老犬さむくんが


まだ、元気な若い犬だった頃に

めぐは、時間旅行して



さむくんと一緒に、あの

岬の砂浜を


駆け回っていたり、渚に戯れたり。



風さわやかな、春の日。




さむくんも楽しそうに。



波しぶきが冷たくて、めぐもはしゃいだり。




そんな時、さむくんは言う。「いつか、こんな日が来ると思っていたよ。」と


なぜか、めぐにわかる言葉で言うのだった。





絵本だと、魔法使いの女の子は

にゃんこやわんこの言葉がわかって。


空を飛んで。




....あたしも、空は飛べるけど。




(飛べると言っても、重力F=mghを加減しているのだが、めぐの魔法は)。



さむくんの言葉が分かれば、ほんとによかったのに。




そんな思いが、めぐにそんな夢を見させたのか?


あるいは、心だけ時間旅行して

本当に、若い頃のさむくんに会いに行っていたのかも。





でも、さむの言葉は、めぐには分からなかった。

今までは。









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