第238話 evergreen








evergreen



めぐは、でも回想が続く。



回想も、こころのスイッチは


ケミカルな、神経内分泌物質が

起こしているので


それの、再吸収、と言って


使った薬をもう一度カプセルにしまって



また使う時に備える、そんな仕組みが


働くまでは、回想が続く。





例えば、選択型セロトニン再吸収阻害剤

(SelectiveSerotoninRecollectInhiviter)

などは、その再吸収を抑えて

心の働きを保つ医薬品、だったりもする。






ふつう、回想が続くのは

楽しい事だ。





めぐは、回想の続きで



おじいちゃんの育てていた

花壇のサルビアを



蜜がほしくて。



花を散らしてしまった事、を


思い出した。





おじいちゃんは、叱らなかった。



とても優しいおじいちゃん。



花壇を見る目が、でも

淋しそうで



めぐは、とても後悔した。





おじいちゃんの大切なお花を

散らしてしまった自分。




叱ってくれるより、余程

めぐにとって、抑制になった。



もう、二度と

おじいちゃんを悲しませないようにしよう。



幼な心に、めぐは

そう誓った。




それから、めぐは

おじいちゃんの願うような子供になろうと



頑張った。




愛って、そういうものなのだろう。






おじいちゃんが喜んでくれるように。





誰かが喜んでくれるために、働く。




それがなかったら.....

何をして生きるのだろう。




めぐは、おじいちゃんが天国に

行ってしまってから

そんな気持ちだった事もあった。



穏やかなひと



めぐには、お父さんも

お母さんもいたけれど。


めぐが幼い頃は、まだ、両親も

若く



まだまだ、自分を際立たせたいと言う

欲のある年代だった。





生き物なので、自分が生き残りたいと言う

性質を


生物として、記憶している。



そして、婚姻して

めぐが生まれて。


もう、生き物としての自分たちを

際立たせる必要はなくなった

(つまり、良いパートナーを得るための

行動なので)。



なのに、生物的な嗜好は

変わらない。




それは、生殖の能力が

衰えを見せるまで


変わらないので




つまり、おじいちゃん、おばあちゃんに

なるまでは



誰でも多少は

自分中心である。





それでふつうなのだけれど



でも、幼い娘、めぐにとっては




そのせいで、お父さんお母さんよりは



おじいちゃん、おばあちゃんの


方が



可愛がってもらえる(笑)。




そんな理由も、ごくふつう。





なので、めぐは


おじいちゃんのような



無類な優しさが好きだったり。







中学生くらいになって、恋を意識しても


周りの男の子って、なんとなく

優しさが足りないように



見えて来て。





でも、おじいちゃんは天国に行っちゃったから




淋しい気持ちはそのままで




天国に行ってみたいな、なんて



思ってた。


そんな気持ちが、いまのめぐに




天国への旅行(笑)を



する能力を作らせたのかもしれない。





思えば、老犬さむも



おじいちゃん、



ルーフィも、おじいちゃん(笑)みたいな

魔法使いさんだし。




めぐは、穏やかな人が好きなんだろう。


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