第213話 魔法の鏡

魔法の鏡



でも、やっぱり18歳なりの

幼いところもあったりする。



上空に漂っているめぐは「プールも泳げないなんて、困っちゃう。

どうしてあたしを追うの?」と


思う。



おばあちゃんは、めぐの後を追いかけてきて。


一緒に、雲の揺り椅子でふわふわ。


「それは、ほとんどの人って見た目で判断してるから」と。

微笑みながら。



えい!とめぐに魔法を掛けた。



めぐのお顔。


目が吊り上がって、口が大きく。牙が剥き出し。

お鼻は上向いた(笑)。



全身、毛むくじゃらになって。



割と簡単な魔法で、心、つまり内包されるイメージ、4次元のそれを

3次元モデルにしてくっつけるだけだ。





その姿をおばあちゃんは、空中に円を書いて鏡にして見せた。





「ナニこれ!」と、めぐは笑ってしまった。




おばあちゃんは、すこし真面目な顔をして「誰の心にもある醜い部分をね

形にしたの。いつも、醜い事を考えていると

そんな顔になっちゃうのよ。



目が吊り上がるのは、攻撃の心。

鼻が上向くのは、欲望の心。

口が大きくなって、牙が出るのはね、なんでも食べちゃうぞー、って

人のものまで頂いちゃうって気持ね。



それで、体も毛が生える。



いろんな、恵まれている事をアタリマエ、って思う気持がね

今のめぐにあるの。それを形にしただけよ」


と、おばあちゃんは言う。




「その姿なら誰も寄ってこないわ。プールも泳げるわよ」と。








「あたしの醜いところ?」と、めぐは少し反省。



急に有名になって、ちょっと人気を鬱陶しく思ったりした。

でも、誰かが愛でてくれるって、本当は有難い事なんだ。



まあ、外見だけで心までは見えない(笑)って


自分がかわいいって、自惚れてた。




女の子は誰でもあるけど。











それは、人間だから。




より、良い種を残す為に選択される。



その為に綺麗になろう、それは正しいけど

外見だけじゃ駄目。





それは、真理。




人を作るのは心だもの。








おばあちゃんは言う。「でも、わかる人は少ないわ。

アイドルスターだって、よく見ると怖い顔をしてるもの。

綺麗な顔してる人は少ない。

心って顔に出るの。」





そうか、と

めぐは思った。




そう思った瞬間、醜い特殊メイク(笑)





は、なくなっていった。



でも、めぐ自身には

まだ、目が吊りあがっていて

牙が出ている顔みたいに見えた。







「その鏡には見えるの。」と、おばあちゃんは言う。



時々見直すといいわ、とも。




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