第190話 探偵、めぐ(笑)

探偵、めぐ(笑)



ルーフィと電話できなくて

なんとなく、寂しかっためぐ。



とりあえず、坊やの手がかりを得たくて

図書館、もちろんこの街の図書館に



行ってみる事にした。




おばあちゃんは、温泉でのんびりしている、と

言うので(笑)。




坊やも、おばあちゃんに懐いてるので




ひとりで、図書館に行ってみた。



路面電車も、街路樹もそっくりなのに

知ってるひとは、誰もいない。




めぐの街の図書館と、位置は同じなんだけど

世界が違うので



建物は似てるし、主任さんも

似てるひと。



でも、めぐの事は知らない。



同じような顔立ちなのに。




そう、ここはめぐから見て3年後の世界に

並行している別世界。




Megさんが、確かアルバイトしてたはずの

図書館。



それで、旅行作家になったんだった。





きっかけは、いつか、突然に来るもので


めぐが、ここでマジシャン(笑)になれたように




ふっ、と湧いてくるものらしい。








図書館の、坊やを見かけた

絵本のコーナーは、この世界の図書館でも


絵本のコーナーだった。



あたりを見回しても、坊やの手がかりになるような

ものは、なんにもなかった。






ちょっとがっかり。




あの「ゆきのひとひら」を見てみたけども

同じように、擦り切れた表紙で。



かわらない。




それはそうで、並行世界なので


共有しているところはある。


けれど、お互いに見えないだけなのだから。






ひとりぼっちになってしまったようで

めぐは、なんだか帰りたくなった。





「でも、坊やのお母さんを探さなきゃ」



めぐは、そう思っている。



spark!



どうしようか、考えていても

仕方ないけど


ルーフィのように、機械を使って

推測する事は、まだ出来ないから



考えながら、第一図書室の


返却カウンターのあたりに

来ると、司書主任さん、

向こうの世界では、めぐの良き上司。


なのに、こちらではめぐを知らない人。




彼は、めぐの方を見ている。




そして、言いにくそうに「あの、マジシャンの方じゃないですか、空中浮遊の」




そんな、よそよそしい言い方を




普段、親しくしている司書主任さん(に、似たような人なのだけど)が言うと



ここが別世界だとわかってはいても

めぐは、悲しくなる。



顔立ちがそっくりなんだもの。




なんだか、めぐ自身が記憶喪失になったみたいで



寂寥感。





本当に、悲しいのだけど



「サイン頂けますか?」なんて言われると


でも、悪い気はしない。(笑)




それはそういうものだと思う。






でも、だからと言って



目立つところ、図書館のエントランスで

そんな

事をしていると、人だかりが出来てしまって。



ちょっと、怖かったり(笑)。






「あ、あの、あたし、サインなんて出来ませんから」と言って、階段を駆け登って

屋上に逃れた。





たくさんの人に注目されたい人、と

そうでない人がいる。


めぐは、注目されるのが苦手な方だったから




ホントに、ただ怖いだけだった。



坊やのお母さんを探すために、マジシャンの真似したのに。





手がかりなくて、怖い思いに遭って。



もう、本当に嫌。




屋上の鉄扉は、外からは鍵が掛からないから



階段を昇って、追い掛けて来る靴音。



サインくださーい、なんて言う男の声だったりして(笑)。




逃げるのも限界だ。







「どうしよう、誰か助けて!ルーフィーさーん、どこに居るの?」と、

めぐは強くルーフィのイメージを念じる。




いつかと同じような、地面の揺らぐ感じがして



めぐは、どこかに飛ばされた。






次の瞬間、鉄扉が開き



めぐのファン(笑)達が押しかけたが




そこに、めぐの姿は見当たらなかったので

彼らは、辺りを見回すばかりだった。


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