第164話 おかあさーん!

おかあさーん!



リクルーターだった、彼女は

「いえ、わたしは・・・・・2階の資料室で、調べものをしていたのです。」



ルーフィーもめぐも、彼女がお母さんなのかと思ってしまった(笑)。

でも、よく考えると

こんな坊やのお母さんにしては若すぎる。


めぐと、そんなに歳は変わらないのだから。



「じゃあ・・ひと違いか。」


ちいさな坊やなので、誰でも

懐いてしまったのだろう。


でも、めぐは


お母さん、って自分は思われてないのね(笑)と


ちょっと、にこにこ(笑)。


若すぎるお母さんには、ちょっとまだ・・。



お姉さんでいいの、まだまだ(笑)。




そうは思ったけど、リクルートさんは

それだけ、落ち着いてるのかしら?


なんて、すこい複雑だったりもする。



ほんの少しの歳の違い、なんだけど。


久しぶりにあった、お友達。


そんな気持ちになった。


でも、相手は覚えていないって

ちょっと、それは淋しいかも。




それで、めぐは連想する。



・・・・ルーフィーさんは、時々

そんな思いをしているのね。



異なる時空間を旅して。

記憶の中にあるはずの人に

出逢っても。


その人が自分を覚えていない。

出逢っていなかったりする。



それ以前に、自分の住む時空間が決まっていないのかもしれないし・・・・。



いまは、ここにいるけれど。



「どこで生まれて、いつ生まれたとか・・・。」


めぐは、何も知らないのだった。




その反動ではないけれど、リクルートさんに話し掛けた。



「よく、ご利用ですか?」と

めぐは、一応ここの臨時職員なので(笑)。


無難に。



ルーフィーも、その、めぐの気持ちは

なんとなく分かった。






「はい。蔵書が綺麗で、嬉しくなります。」と、リクルートさんは、無難に答えた。


朗らかな表情には、あの、前途を

悲観していた女の子の雰囲気は無かった。



いまは、世の中が安定しているのだ。


元々、若い人々に仕事が無くなったのは

この国の人々の欲望というよりは


外国の、たとえばアメリカのような国で



お金を会社に貸して、儲けを上げようとする人々の欲望であったりしたので


魔法の成果(笑)で



この国の国会は、外国の

そうした人々の

会社への経営参加を禁じた。


もともと、禁止されていたところを

この20年ほど、人々の心が


魔物によって欲望を煽られていたので


政治をしている人々が、お金儲けのために開放したのだった。




そのせいで、お金儲けにならない

新人の女の子の就職などは


「仕事教えても、すぐに結婚して

辞めてしまうから、教育はむだ」


と、判断されて

それでリクルートさんたちは

前途を悲観していたのだった。






でも、いまの彼女はそうではなくて。



調べ物をして、没頭できると言うような

恵まれた仕事を得たようだった。




「それだけでも、よかったな」と

ルーフィーは、魔法改革(笑)の苦労を思い出した。




めぐと、天使さんの命を救う為、とは言え



大胆な魔法だった。


政府高官や、大物政治家たちが


欲望に駆られないよう、神経回路を

磁気で遮断したのだった。



攻撃を司る神経、そのスイッチになる


神経内分泌物質を止め、代わりに


慈愛を司るホルモン、オキシトシンが

満たされるようにしたのだった。





磁界を持続させるのは、大変だった・・・・・。





いまは、もう必要がなくなったけれど。










「坊や、お昼ごはんね。」と

めぐが言う。




ルーフィーは、そのコトバで

我にかえった。


坊やのお母さんは、見つかってない・・・・・・。



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