第155話  魔法使いさんの気持


魔法使いさんの気持



でも、その方法は見つかりません。


ちいさな子に、物語、お話だからって言っても

たぶん、分かってくれない。


そんなふうに、めぐは思いました。


童話を、やっぱり

幼い頃、めぐは読んでいて


不思議に思ったりした事があったりしました。



硝子の靴は、重くて割れなかったのかしら(笑)とか。

かぼちゃの馬車って、重そう(笑)とか。



そういうところは、夢のあるお話なのですけれど。



思い出すと、不思議に微笑んでしまう、めぐ、でした。



幼かった頃、絵本の世界に入り込んだ夢を見たりした事を

思い出して。




「そうだ!」と、めぐは思いつきました。




昨日、絵本の世界に二次元になって、行ったんだもの。


この子と一緒に、行けないかしら?





同じ気持になれば・・・・。




めぐは、「ゆきのひとひら」の、絵本の次のページを

見て。



一緒に絵本を見ている、ちいさな子を連れて行きたいっ、って

思いました。






まだ、涙ぐんでいるその子を、撫でたまま。






flash!!



ゆらり、と

地面が揺れたような、いつもの感じで

陽炎を見ているように、周りが揺れ・・・いいえ、揺れているのは

めぐ自身でした。










一瞬の間に、めぐは

その、ちいさな子と一緒に。



「ゆきのひとひら」の

2ページ目に、2次元モデルになって入り込みました。



めぐは、2回目なので

どうってことないけれど。



その子は、ちょっとびっくり。目を丸くして


雪の原に、立っています。




でも、少しも寒くないんです。


絵だもの(笑)。





ゆきのひとひら、スノー・フレイクさんは


「いらっしゃい、めぐさん。おかえりですね」と。



ちいさな子は、びっくりしてあたりを見回しています。





そして、自分が靴下のまま、雪の原に立っているのに

足が冷たくないし、雪もぜんぜん、へこんでもいないのです。


なんたって2次元モデルなので(笑)。





それを見て、ちいさな子は、ちょっと不思議な顔で

足元の雪に触れました。



「だいじょうぶ?」と尋ねるように。



雪の、さらさらした結晶たちは

何もかたりませんけれど


つぶれてもいないし、砕けてもいないのです。



それが不思議、だったけれど


ちいさな子は、とりあえず

悲しい事は、ここでは起こらない。

そういう事が分かりました。




「ゆきのひとひら」の中の世界は、本当の、雪山とは違う。


その事に気づいて、悲しくはなくなりました。



そう思うと、雪の原に寝転んだりしました。



「遊んでみたかったのね」と、めぐもにこにこして


一緒に、寝転んだりしました(笑)。




ゆきうさぎさんは、丘の向こうに

おミミだけをのぞかせています・・・・。








いつも、慣れている世界。

それが、想像と違う事は結構あったりします。


めぐは、その事に気づきました。



絵本を見ていても、いろんな感じ方があるんだな、って。



物語を読むのに慣れていると、リアル・ワールドと違う事を

いつの間にか忘れていたりもして。





それで、ふと思ったりするのは「ルーフィさんは、魔法使いさんだから

いろんな世界を、それぞれに知っていて。

ルーフィさんの世界って、どんなところなんだろう?」




物語を書く人は、物語の。

音楽を作る人は、音楽の。


料理を作る人は、料理の。



その人の「この世界でなくちゃ」って基準があるんだろう。

そんなふうにめぐは思います。




それは、ひとそれぞれ。




「たぶん、ルーフィさんの・・・魔法使いさんの気持は

魔法使いにならないと、分からない。」



そんな風に、めぐは思って。



その世界への憧れを思います。






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