第85話 天使のヌード(?)

そんなわけで、この町にも

作家志望の人達が、少しづつ

集まってきたり、していた。




「それで、御呼び立てした理由は・・簡単に言うと、お二人に

出演して頂けたら、と思って。

お願いに上がった訳です。」



めぐは、ちょっと勘違いしていた

自分が可笑しくて


笑いだしたくなった。



クリスタさんを、デートに誘ったのかと


思ったので(笑)。




それは、そうなのかもしれないけど(笑)


でも、さりげない誘いかたで



女の子としては、映画に出て、と

言われると


ちょっと、嬉しいかもしれなかった。




めぐは「ヌードはないですね」と

ユーモアたっぷりに言うので


映写技師さんは、笑ってしまった。




「もちろん、ないです。いや、

おのぞみならば・・・・」と

にっこり。



「まあ」と、その大人っぽい

ユーモアに

めぐは、少しどっきり(笑)。



めぐよりも、年上の映写技師さんは結構、大人なんだ。


そんな事を、その会話の中で

めぐは、感じた。



そういうふうに、少しづつ

おとな、になっていくのかしら。



そんなことを、めぐは思った。



クリスタさんは、のんびりと


話を聞いてる。


別に、ヌードの話にも

何も感じる事もないのは

元々、天使って

セミヌード(笑)みたいな格好

だからか。


クリスタさんは、ふつうに

服を着ているけど。




「ありがとうございます、これから

夏休みで旅行に行く予定なので・・」



スケジュールが合えば、別に

出てあげてもいいわ(笑)。



女優さんみたいな気分を

めぐは楽しんで。




クリスタさんは、黙って聞いてて

「わたしは・・・そうですね。

めぐさんと一緒なら・・・・」と


そんなに、興味がある感じでも

なさそう。




アイスココア



フランスのスキーリゾートとか

スイスのお山、あたりでは

ココアは夏の飲み物だとか。


スカイレストランのシェフは、ヨーロッパが好きで

若い頃、フランスで修業してきたので


今でも、休暇の度にフランスへ出かけたりして


それで、こんな

楽しい話を聞かせてくれる。


お店を出そうかと思っていた時に

この、図書館が建て直されて。


レストランのシェフに採用された、と

笑う。



「この年でね、公務員なんだもの」って


日焼けしたお顔で、白い歯を見せて

笑う。


めぐのお父さんくらいの年齢だけれども

いいなぁ、と

おもってしまうめぐである。



どうも、めぐは若い男の子が苦手だった。



なんというか、動物的、って言うのか

粗暴な感じがして。




エレベーターに乗って、めぐとクリスタさんは

5階を目指した。


きょうは、割と図書館は空いている。

夏休みなので、海や山へ出掛けたのだろうか。


エレベーターホールは、やや暗くてメタリックな装い。


新しい感じがして、そのあたりも

めぐは気に入っている。




エレベーターホールから、東側の奥手に

スカイレストランはある。

屋上の、太陽のようなモニュメントの

中側が、展望室になっていて

景色が良いし、上品なので

人気のある場所だった。


もちろん、カジュアルでは

本当はダメなのだけれども

女の子は、気品のある服装なら

通された。



もちろん、男の子は正装である(笑)。



めぐは職員なので、もちろん通れる。



クリスタさんも。



簡素であったが、清楚な服装だった。





レストランに入ると、「こんにちは」と

時々、ロッカールームで見かける

ウェイトレスさんがにこやかに


ご挨拶。


「こんにちは」と、めぐが言うと、



「あら、お姉さん?そっくりね。

双子みたい」と、ウェイトレスさんは

短く揃えた髪で、まるく微笑んだ。




天使さんです(笑)。



そう、本当の事を言いたいめぐだけど。


それは言えない(笑)。



従姉妹のクリスタです、と言うと



いいお名前ね。と彼女はにこにこ。




年齢はめぐとそう変わらないはずだけども


ウェイトレスさんは、なんというか

大人、レディーね、と

めぐはおもってしまう。



クリスタさんの事を「お姉さん」と見るウェイトレスさんは




めぐとクリスタさんをそっくり、と

言いながら


微妙に、クリスタさんのステキなとこを見て



「お姉さん」と言うのかな。




そんなふうに、めぐは

ちょっと思ったりもした。




でも、それは思い過ごし。


いつかはレディーになるのだけれども


今のままのめぐは、かけがえのない

ステキな時間を過ごしている。




後になって気づくものだけど。





「奥で、お待ちよ。ボーイフレンド」と

ウェイトレスさんは言う(笑)。


もちろん、ユーモア。


めぐは、かぶりを振って「お目当ては、こちら。」と

言うと、ウエイトレスさんは



「そか、ざーんねんでした。」

と、ユーモラスに首を振った。



クリスタさんは、なんのことか

わからない

(笑)。



天使だもん。





レストランのエントランスから、同じフロアーのテーブルでも


海が見えたり、山が見えたり。




でも、展望室は

そこから、短い階段を昇ったところにある。



ステップは3つ。

音のしない靴なので、めぐと

クリスタさんが昇っていっても

彼は、気づかなかった。

図書館に行く時に、唯一

気にする事、それは

音がしない靴で行く事だった。


本を読むのに、邪魔にならないように、と言う

心遣い。



さりげなく。



遠くに山の見えるこの町は、海に面している。


観光地に程近い中核都市なので


比較的、商業も盛ん、そのせいで

文化的雰囲気にはやや薄いところもある。


面白いもので、商工業の盛んなところは

だいたい、どこでも文化的ムードに薄い。



そんなところなので、図書館を綺麗にしようと

考えたらしい。



それで、レストランに居る映写技師さんも

大学を出てから映画を作っていると言う、面白い人。



本当に商業映画を撮るなら、芸術学部の映画学科を出て

映画会社に入る、なんていうのが順当な人生。



でも、個人映画を作っていたいというその人は


そんなに、お金儲けには興味がないのだろうし

もの作りに信念のある人、なのだろう。


商業的に作品を作るのは、人によっては辛い時もあるからだ。




そういう、主張のある人生を送っている人は


好みもあるけれど、いまのめぐ、には

ちょっと重い、と思わせるだけの雰囲気があって。


例えば軽妙洒脱なルーフィの自由さとは

対極をなすものだった。




もちろん、それは感覚。


でも、恋って感覚。それでいいのだ。




そういう「今」のめぐと、最初の人生のめぐとは

同じ人。


でも、人から見る彼女の雰囲気が、今は自由闊達で

生き生き、やや奔放に見えたりするあたり(笑)



とってもステキなのだけど。



かつての人生では、魔物に追われたせいで

慎重になってしまっていて。


そこが、映写技師さんに好まれて。



今は、そうではなくて。





「ようこそ、いらっしゃい。」と、映写技師さんは

展望席の椅子から立ち上がり、ふたりに椅子を勧めた。






スカイレストラン



夏休みなので、お客さんは

そこそこ入っていた。


ちょっと、高級感があるし

カジュアルな服装では入れない。

そんなところもあって、静か。


そのあたりも、レストランを好む人たちには

好評で


景色を眺めながら、美味しいものを静かに頂きたいと言う、穏やかな趣味のひとお


賑やかに談笑しながら、会食をしたいと言う人達とは

相容れないのも、仕方ないところ。



なかなか、このあたりは

事前に判るものでもないので


入ってから、しまった、と

思わないように。


入り口に看板でも立てればいい、と

思ったり(笑)。




このお店は、公共の施設にあって

静かに、料理を楽しむところだった。



それなので、めぐたち若者には

あまり縁のないところだったりもする。



「はじめまして」と映写技師さんは

クリスタさんに挨拶。



クリスタさんもご挨拶をして。


「僕は、映画を作っている者なのですけれど。映画、と言っても

ほんの趣味程度のもので。


時々、ここのシアターで

上映させてもらっています。」



この町は、割と文化的に

すこし遅れてる(笑)と市長さんが

思ったのか


文化事業に力を入れていて。


彼のような創作をする人達に

シアターを貸してあげたり。


演劇を、シティホールで行ったり。




そんなわけで、この町にも

作家志望の人達が、少しづつ

集まってきたり、していた。




「それで、御呼び立てした理由は・・簡単に言うと、お二人に

出演して頂けたら、と思って。

お願いに上がった訳です。」



めぐは、ちょっと勘違いしていた

自分が可笑しくて


笑いだしたくなった。



クリスタさんを、デートに誘ったのかと


思ったので(笑)。




それは、そうなのかもしれないけど(笑)


でも、さりげない誘いかたで



女の子としては、映画に出て、と

言われると


ちょっと、嬉しいかもしれなかった。




めぐは「ヌードはないですね」と

ユーモアたっぷりに言うので


映写技師さんは、笑ってしまった。




「もちろん、ないです。いや、

おのぞみならば・・・・」と

にっこり。



「まあ」と、その大人っぽい

ユーモアに

めぐは、少しどっきり(笑)。



めぐよりも、年上の映写技師さんは結構、大人なんだ。


そんな事を、その会話の中で

めぐは、感じた。



そういうふうに、少しづつ

おとな、になっていくのかしら。



そんなことを、めぐは思った。



クリスタさんは、のんびりと


話を聞いてる。


別に、ヌードの話にも

何も感じる事もないのは

元々、天使って

セミヌード(笑)みたいな格好

だからか。


クリスタさんは、ふつうに

服を着ているけど。




「ありがとうございます、これから

夏休みで旅行に行く予定なので・・」



スケジュールが合えば、別に

出てあげてもいいわ(笑)。



女優さんみたいな気分を

めぐは楽しんで。




クリスタさんは、黙って聞いてて

「わたしは・・・そうですね。

めぐさんと一緒なら・・・・」と


そんなに、興味がある感じでも

なさそう。







女優、めぐ



それは、ちょっと意外な言葉だったけれども


映画好き青年が、自分の作品に

出てほしい、と言うなら

憎からず思っているのであろう。


悪役でない限り(笑)。



「クリスタさんは、いかがですか」と

彼は誘う。

それは、やはり好意を持っているのであろう。



見た目、結構カッコイイ感じの

映写技師さんではある。


しかし、慎重な誘いかたに

めぐは、彼の優しい人柄を思った。



そうは言っても、好きな人とは

ちょっと違ってる(笑)。


それはそうかもしれない(笑)。



それで

「旅行に行っている間は、すみません、ちょっと無理です・・。」と、めぐは告げた。



クリスタさんも「ひとりでは少し・・・・。」



と、言う。




映写技師さんは、それを残念がるでもなく。にこにこと微笑んで。



その笑顔を、めぐは


アメリカの映画作家の、・・・誰だったか。


有名なひと。


その人が、おひげを剃って

若くなったら、こんな感じかしら。




そんなふうに、空想したりして

映画がヒットして、あたしは

女優になれるのかなー(笑)。


なんて、楽しい空想をしたり。


お芝居なんてしたことないのに(笑)。




「それじゃ、秋になったら。

いつでもいいです、教えてください。



と、彼は、男らしくさっぱりと告げた。



そして「なにか、ご馳走しましょう」と。


でも、そんなに休憩時間はないので


とりあえず、めぐはレモネード・スパーリング。



クリスタさんは天使なので、何も摂らなくていいのだけど


いまは、人間でもなく

天使でもない、なんて

説明するのも変、なので

とりあえず、めぐと同じものを頼んだ。




元々実体がない天使さんだったので


つまり、理論物理学的に言えば

それは、4次元以上の存在だと

言う事になるので

たぶん、食べたり飲んだりしたものは

そのまま異次元の空間に消えるはずで


とても小さな点、0次元に凝縮されて


無限大のエネルギーに転換できるはず、であるから


それを転用して、時空間を旅行する事も

あるいはできるかもしれなかった。






レモネード・スパーリングは

爽やかで、刺激的。


夏に似合いだね、と

レストランのシェフも言っていたっけ。



そんな事を思いながら

めぐは、短い休憩時間を

楽しんだ。


まあ、若いし、プランが一杯あるから

休んでるなんて、もったいないって

思ったりしちゃうんだけど、



それでも、地上の時間は3次元的に刻々と進む。


いつか、4次元の時間の流れに慣れてしまうと

それが鬱陶しいと思うようになるかもしれないけれど.....。


時間旅行もそうだし、通信、例えばインターネットなどは

電気通信の場合、音の速さで進む。 340m/sである。



その上、話題の「量子テレポーティング」のように

波の概念で通信しているから


見かけ上、一瞬で通信できてしまうし

情報そのものは、記憶されたものである。



つまり、時間の概念が無い。


リアルタイムの通信以外は、の話だが。



従って擬似4次元とも言えるので


その、偽時空に慣れてしまっていると


ほんものの、3次元の時空は、まどろっこしく感じる人も居る。

その上、自分の好みの情報だけと遊んでいるので


そうでない時、それは楽しくない気分になる。



禁断症状、などとオーバーに表現する医師もいるが

人によるけれど、そういう事も起こり得る。




それはもちろん、時間旅行のように

自分の体がどこかへ行ってしまうような事は、もちろんないのだけれど。





映画作家にも、その映画の世界に耽溺してしまうタイプもいて

そういう人は、現実の世界ではしばし怒りっぽかったりする。


それは、なんでも思い通りになる世界から、外に出てしまったから、で



小説家にもそういう人も多い(笑)。




ニンゲンのアタマは、そのくらい柔軟に環境に合わせてしまうのである。



映画も

小説も

インターネットも



ニンゲンの作り出したもの、それがニンゲンのアタマを変えてしまうのは

不思議な事。





そうはなっていないめぐ、も映写技師さんも


幸せだ。



ただ、めぐの場合

これから時間旅行をすると、どうなってしまうかは

自身にも分からない。


未体験のことだからだ。




もともと、時間旅行者は昔から居たようで

予言者と言われたり、神と言われたり。


果てまた、音楽の大作家であったり。



そういう人は、時間旅行の能力者であったのかもしれないと

訪ねて歩いていたMegとルーフィ。



彼らが、過去に旅して

音楽作家と遭遇し、彼らに閃きが起こった。

そんなこともあったくらいだから

他にも時間旅行者は居るのだろう。




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