クリスタさん、ふたり目のめぐ

第76話  好き嫌い



わりと、男の子の方が

女の子の好き嫌いを

恋愛について、言ったりする。


面白い傾向で

霊長類、つまり

人間のお友達くらいは

そういう雄が主体で


他の動物は、概ね

雌が選択権を持っているけれど

でも、来る雄の中から選択する。



つまり、人間は

それだけ、選択について

自由だ。






めぐはルーフィが好きなので

別段、映写技師さんが

クリスタさんに興味を持っても

なんとも思わない。




過去のいきさつについて、知らないのだから

当然である。



でも、そのいきさつを知っている


ルーフィとわたし、Megは、釈然としない(笑)。




「天使を誘惑するなんて。」


と、わたしが言うと、ルーフィは


「フレンチポップスのタイトルみたいだね」と笑う。



「冗談じゃないわよ、まったく。

こないだ、めぐを誘っておきながら。」





「それは、ほら、神様のせいで

無かったことになってるから」と

ルーフィ。




「それにしたって、軽いよ」と、わたし。



「だって、めぐちゃん自体が変わってしまってるんだもの。

最初から、あの、元気いっぱいの

台風娘なんだから。」と、ルーフィ。



「人柄は同じじゃない」

と、わたしは(怒)。





「ま、恋心なんて不条理なものさ」と

ルーフィは、シャンソンみたいに。

イヴ・モンタンの真似っぽく(笑)。




お気楽魔法使いめ(笑)。





映写技師さんは、映画鑑賞会を

開くつもりで、司書主任さんを

訪ねてきたらしい。



そのあたりは、めぐの最初の人生と

おんなじだ。



「どうしてなんだろう?」とわたしはつぶやく。




「まあ、同じ人間の考える事って

そんなには変わらないから。

魔物が関係ない映写技師さんは

ふつうに映画を作ってる。でも

めぐちゃんは、魔物に関わったから

見た目の雰囲気が少し変わった。

そのぐらいの事かな。クリスタさんが

ここに来るのは偶然だけどね。」と、ルーフィ。




「神様は、天使さんが人間界に

いる事をお許しになってるのかしら」

と、ふとわたしは思う。



「さあ」と、ルーフィ。


そして


「許さない、とすれば

何か起こるかもしれないね。」と。








まあ、そのあたりは

例えば、映写技師さんも

この世界に魔物が居なかったせいで

大胆になっているのかもしれなかった。



魔物が居た頃は、ひとの心にも魔物が棲んでいたから

女の子でさえ、自分を偽って高く売ろう、そんな世界だった。


女の子雑誌の恋愛コーナーを見ると



「お金持ちでイケメンの彼をゲットする方法」(笑)


とか、つまりは人騙し(笑)の手法ばかりが書かれていたりした。




まあ、悪い大人が書いてたんだけど。




それなので、映写技師さんのような青年が

女の子に恋したとしても慎重にならざるを得なかった。


傷つけられたりしたくないもの。




そんな訳で、以前の映写技師さんは、従順なめぐを好んだとしても

おじさんを通じて、デートに誘ったりしたけれど


今、神様が粛清した世の中では

魔物は、人の心に棲んでいないから


そう臆病になる必要もない。



めぐが台風娘(笑)なのも、そのせいだけど。





「ま、いいことなのさ。伸び伸びと恋でもなんでもすれば」と

ルーフィは、楽しそう。





「ルーフィはどうなの?」と、わたし。




「どうって?...ああ、僕はここの世界の住人じゃないもの」ルーフィは、疑問形。





そっか。



わたしは納得。



わたしたちの世界は、神様が粛清しなくても

ほどほどに欲がある人が居て、それなりに暮らしている世界。




魔物が心にいない、か、どうかは知らないけれど(笑)。




そんなに世の中も住みにくい訳でもなかった。



経済は相場師中心で動いてもいなかったし

お金持ち中心でもなかった。



為替レートは固定だったし、金融市場も

国内だけだったので

銀行は、国家が保護して

産業をバックアップしていた。


そのおかげで、ヘンに競争しなくても

平和にみんな生きていた。





めぐの世界は、ひょっとすると

まだこれから騒乱が起こるかもしれない、そんな風に

わたしは思ったりもした。




相場があるなら、結局損をして不幸になる人がいるから。










「生まれ育ちで、後の性格が決まるなんて.....。

過去に戻ってやり直したくなるわ。」と、わたし。



ルーフィは、笑って「僕らは、時間旅行者だから。

そう思うけど....そうだ。面白いオモチャがあるよ。」


と、ルーフィは、とても小さなメモリーカードを取り出した。


「なにそれ?」と、わたしは、ルーフィのてのひらをよく見る。



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