第74話  もうひとつの恋物語



「できるの?それは助かるなー」

司書主任さんは、めぐのアイデアを聞いて喜んだ。


貸し出しは別にして、返却処理は自動にしたかったのだ。


この図書館は、夜間返却ポスト、と言うものがあって


閉館時間でも、本を返せるようにポストがある。



その返却処理が大変。



朝、ポストの中が満杯になっているので


コンピュータに一冊づつ掛けて、書架に返す。


それだけで2時間くらいは掛かってしまう。




めぐのアイデアでは、図書室入り口にあるアンテナと

似た仕組みで、本の図書コードを読み取ると

貸し出し情報を本のRFIDタグから消す。



コンピュータのデータベースから貸し出し情報を照合し、

あれば、消去する。


それだけの事。



ポストの左右にアンテナを張っておけば、せいぜい1冊か2冊の情報を

読み取るのにエラーはないでしょうから。



めぐは、そんなふうに想像した。




その情報を受信したら


RFIDタグに返却情報を書き込めばいい。



割りと、そこは簡単。





主任さんは「それね、自動にしたいと思っていたの。

でも、お金がとってもかかるって聞いて。

できるなら、1階のカウンターも自動にしちゃえば、楽でしょ。」




めぐは、ちょっとひらめいた。


「それなら、ポストのも1階で自動処理にしちゃうのも.....。」



返却ポストに入った本を、入り口から持ってくれば

自動ドアの横、アンテナを通るから

ポストにアンテナを作らなくてもいい。



本を持ってくるのは、開館前だから

その時だけ、ソフトウェア・スイッチで

返却情報を書き込めばいいだけ、だ。



普段はスイッチを切っておけば、受信アンテナだけになる。





「なるほど。それだとアンテナ代がいらないね。」司書主任さんは

名案ににこにこ。





めぐは楽しかった。



役に立つ工夫をすること、そんなことを

考えるのは、ちょっと楽しい。







「おはようございます。」

さわやかな声が、高いほうから聞こえてくると

めぐは思った。



めぐは、知らない人だけども....。



司書主任さんは「ああ、ひさしぶり」。



その青年は...そう。めぐを、かつての人生(笑)で

デートに誘った、司書主任さんの甥、映画作家さんである。


めぐは、映写技師さん、って呼んでいた(笑)けど


めぐの、2度目の人生では、その事が何故か起こらなかった。

それは、たぶん、めぐが魔物に襲われなかったせいで

快活な女の子になっちゃったから(笑)。ちょっとした誤解だけど


恋愛ってそんなもの。



その、映写技師さんで

今のめぐは、もちろんその事を知らないし


知っているのは、ルーフィと、Meg、それと神様。


それと、これを読んでいるあなた(笑)くらいである。


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