第73話  機械の言葉



プログラムも、仕掛けをみなければ

魔法、に似てるのかしら。


そんなふうに、めぐは思った。



「貸出は、F2キーですか」と、

クリスタさんが、柔和に

たずねてくる。



いま、お客さんはいないので

その間に、少し仕事を覚えよう。


そんな感じかしら。




「そう、F2、を押してね。」

と、めぐはにこやかに。


「どうして、画面に触れてもいいのですか?」


と、クリスタさんは素朴な疑問。



「それは、画面のその場所を触ると、F2キーを押したのと

同じスイッチが入るの」と、めぐ。



「スイッチって、明かりを点ける、あれ、ですか?」と、クリスタさんは

幼い子みたいに聞くので

めぐは、愛しくなった(笑)。




「はい。コンピューターってね。

スイッチが一杯入ってるの。

それで、点けたり消したりして

言葉や数字を、人間のね。

それを覚えていくの。」と

めぐは、学校の授業で習った事を

そのまま言った。



「ことば・・・・」クリスタさんは、少し思案顔。



「そう。たとえば数字のゼロ、はね

コンピューターさんは、スイッチをひとつも入れないの。

一、は、ひとつ入れるのね。」と

めぐは、数学の2進法の授業を

思い出して。



「2は、ふたつですか?」と

クリスタさんも楽しそうに。




「はい。ふたつのスイッチで、でも

ひとつめのスイッチは切って。

ふたつめを入れるの。」と、めぐ。



「両方入れると?」と、クリスタさんはクイズみたいに。


「4かしら?」と、めぐも少し不安げ(笑)。



「そうなんですね。それで文字は、どう覚えるのですか?」と、クリスタさん。



「その数字をね、組み合わせて文字を覚えるの。例えば、記号の?、は0133、と言うふうに辞書があるのね。

そのキーを押すと、辞書が数字の0133、と翻訳するのね。」と

めぐは、こないだ使ったキーの

コードを答えた。





「外国語みたいですね」と、クリスタさん。



「はい。魔法みたいでしょ?」と

めぐはにこにこ。




・・・・・そういえば、ルーフィさんの

書く魔法陣も似てるって。



そんなこと言ってたっけ。



ふと、めぐは

イメージで、ルーフィを空想した。



遠くから来て、また、遠くへ帰って行く。



不思議なひと・・・・。


彼の世界は、一体どこなんだろう。



それは、未だ謎だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る