ふつうのめぐ

第37話 裁定




「まってくださいますか」と

涼やかな声がする。


風に吹かれて、丘に佇んでいるのは....


めぐの意識であろうか。


眠っているはずの

めぐの、能力者としての意識が


天使さんに、ついてきたのだろうか。



もちろん、めぐ自身は眠っているから

不思議な夢を見てる、けど

たぶん、めざめると

覚えていない・・・・


そんな感じだろう。





「お話しは、伺いました。神様、それでは裁定をお願い致します。」


めぐの、能力者としての意識は

潔く、凛々しく言い切る。



神は、また驚愕した。


「なんと・・・お前は、能力者としての自分を封殺するとな」



いま、裁定を要求するのは

つまり、目覚め掛けている

能力を停める、そういうことだ。



能力がなければ、神の意思に沿い

零歳から人生をやりなおす。

それで、この世界が元通り、平和な

世の中になって。



でも、これまであった事は

全部、霧散してしまう。


ひょっとしたら、17年後に

であうかもしれないけれど。




天使さんは、穏やかに微笑みながら

「それで、いいの?ルーフィさんと・・・。」



めぐは、頷き「はい。元通りの世界になれば、いつか、わたしとルーフィさんは出逢うかもしれません。

そうならないかもしれないけれど。

でも、それはもう、いいんです。

ルーフィさんには、決まった方がいらっしゃるのだし。

天使さんに、しあわせになってもらいたいし。

いままで、18年もお世話になっていたのですから。

あたしも、お返しをしたいんです」




そう言って、めぐの、能力者としての意識は

神に裁定を迫った。









別離



「よいのだな。」神は、確かめるように

最後通告をした。


めぐは、無言で頷いた。


「待ってくれ」と、丘に

昇ってきたのは、ルーフィだった。


屋根裏の、ルーフィの部屋から

飛び出して来たのだろう、

スマートな彼にしては、裸足のまま。


「めぐちゃん・・・」ルーフィは

そこまで言って。


でも、めぐの決意が

読み取れたのか


そこまで言って、黙った。



めぐは、俯いたまま、静か。


でも、ルーフィの姿を見て


透明な涙滴、さらり。




神様を見る。



神様は、意思を感じ取り


左の指で、天を差した。



満月の夜だった。

けれど、一瞬、月明かりは陰り・・・



その場の空気が揺らいだ。



眠っていためぐの意識は

一瞬にして18年戻り・・・



そして、一瞬で18年を経験した。

ただ、魔物と異なる次元の記憶を

失って・・・。






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