第34話  記憶と時間



その、いろいろあった土曜日も

なんとか、終わり。

図書館は、帰るひとで賑わうように

エントランス・ホールをノイズが包む。

アート・オブ・ノイズなんて

気取るつもりはないけれど

めぐには、そんな都会の喧騒も

楽しむ気持ちが、あったりもした。


めぐのお母さんも、楽しいひとで

ジャズ音楽を聞いたり、ダンスをしたりと

毎日を楽しく暮らすひとだったから

そのせいも、あったりもするかもしれないな、と

めぐ自身は、思っていたりもして。


幼い頃の思い出に

縁側にあった、ラジオ、脚のついた

ステレオから

英語の放送と、ジャズ音楽が

いつも、ながれていた。


そんな記憶が、めぐ、には

朧げにあったりもする。


大きな木があって、お風呂場が

外にあって。


やっぱり、桧のお風呂だった。


いまのお家、じゃなくって。

前に住んでいた、公園のそばの

おうちだったっけ。



その公園にも、大きなお池があって。


いつも、杭の上で

カメさんがお昼寝してたっけ。。


どうやって、杭に登るのか

不思議に思っていたけど


めぐが、お散歩で近くに行くと

カメさんは、ぽちょん、って

お水に飛び込んじゃうので

ついに、わからずじまい。



「いつか、あの公園のそばのお家をたずねてみたいな」


なんて、めぐは思うのだけれど。



お池、と言うと。


めぐは、思い出した。



お池にお水を入れて、わんちゃんが

泳いだりして。


それで、困ったりしたことは、なかったかしら。



主任さんは「べつに、かわったことはなかったね」


と、おっしゃってくださっていたけど。



わんこさんも、泳いだりまま


おうちに帰るのも、ちょっと大変かもしれないわ。



そんな風にも、思って。



「わんこの美容院さん、来るといいですね」と

主任さんに言ったり。



「そうだね、おおモテかもしれないね」


と、主任さんは、いつもみたいに

にこにこしながら、答えたりして。


夕暮れの図書館は、のんびりと

時間が過ぎていくようで。


そのことも、めぐを

ご機嫌にする理由だったりもした。




時間って、自然に

淡々と過ぎていくものだけど

それは、いま、わたしたちが

住んでいる、この地球が

太陽の回りを、とんでいる。


それで、時間の単位が決まって。


一日が24時間で、って

割り切れない数字になったりして。


不思議におもったりもする、そんな

時間、ってものだったり。


それとは別に、時間の感覚は

ひとりひとりにあったりして。


生物学の本を見ると、お魚の

背中にある器官で

光を感じて、メラトニン、という

ホルモンが分泌され



それで、人間も時間を感じる、という


面白い話を、みたことも、あって。




でも、その感覚は25時間で

一周なので


おひさまに、朝、おはよう、って

当たるのも大切で



そうしないと、時間感覚が

わからなくなって、いらいらしたりする。


そんなことも、書いてあったりして。



それで、いつか、児童図書館で見た


いらいらしている、若いお母さんと

坊や、そんな情景を

思い出したりもして。


いろんなことが、科学と時間に

結び付いていて。



時間を旅するって、結構

大変な魔法なんだ、って

いまさら実感する、変なめぐ、だった。


めぐ自身は、その能力が

目覚めている実感はないけれど。






とりとめなく、考えていると


ルーフィとMegが、5階から

降りてきて。


めぐの楽しい空想も、終わる。。



好きって感覚



「よかったね、デート」と、わたしはめぐに言った。

ほんとうは、感想を聞きたかったけど


でも、ルーフィもいるので


それは、めぐの気持ちを考えて(笑)控えた。



だって、めぐはルーフィが好き。

でも、誘われるのは

それなりに楽しい。

と、思う。



それは、自然な感情。

恋愛、とかじゃなくっても

映画見るくらいは、別にいいんじゃないかしら。


でも、ルーフィの前で

それを言うのは、ちょっと妙かな?

なんて。


ライバルをやっつける、意地悪さん

みたい(w)だもん。


当のルーフィも、平然としているから

そんなに、気にすることもないけど。



めぐは、聞かれたことには答えなかったけど


でも、ちょっと恥ずかしそうだった。



「こんど、いつ?」なんて

ルーフィは、ふつうに言うので


ちょっと、めぐはかわいそうだったけど。




「でも、きょうのにゃご、すごかったよね:」と

わたしが言うと、めぐははっ、と

気づいたように

「あれ、やっぱりにゃごだったのかしら。」



そうだと思うけど、って

わたしは、めぐに答えると


ルーフィも「うん、そうじゃないかなぁ」なんて。



どうして、そういう事になるのかは

まだ、めぐには話してなかったので


ただ、不思議な子猫ちゃん、って


感じで見てるんだろうけど。




それで、ルーフィは「にゃごは、この世界でいい事をしたいんだよ」と

和やかな言葉で、そういうと



「そうなんですね.....。」と

めぐは、解ったような、そうでないような

曖昧な微笑みで答えた。



なんとなく、その、半疑問の表情はかわいくて素敵って

わたしは思う。



わたしも、3年前は

あんなだったのかな?



とか思って、過去にタイムトラベル

してきたんだけど。




ちょっとした間違いで

長旅になっちゃった。




実際、好きって感情も微妙なもので

幼い頃に、趣向はできあがるから


わりと、お父さんとか

お兄さん、を異性のパターンって

最初は思い込む女の子は、多かったりする。


それが、快い存在は否か、は

その時の感情に左右される。



つまり、快い時にそばにいると


快い存在になったり、する。

不条理だけれども、おそらくは

赤ちゃんの頃の記憶って、そんなものなのだ。



お母さんが、のんびりと

赤ちゃんを可愛がっていられて。


おとうさんも、お世話ができて。


そういう時の、お父さんの匂いとか

お母さんの雰囲気、を

朧げに覚えてて。

後になって、恋する時に

好き嫌い、のどこかに

それを忍ばせたり。


たまたま、めぐ、は

お父さんが優しかったから


お父さん、みたいなパターンを

優しい、って感じるのかもしれない。







愛と心、現世・時間



もちろん、お父さん嫌いって子もいるけど

心の底から言ってる子って、そんなにいなくて。


ハイスクールくらいだと、いろいろ

男の子とかを

ちょっと、粗暴で嫌、って思ったりするから。


それで、お父さんが乱暴な事をした記憶、とか

あったりすると


それを連想して、嫌い、って思う事もあったりもするけど

自然に、大人になると

忘れてしまったりする。



ふつう、娘を可愛がらないお父さんは少ないし

めぐは女子高だから、男の子から嫌な事をされる事も

学校では無かったりする。


なので、クラスメートでお父さん嫌い、な子って

めぐのお友達にはいなかったよう、である。




好悪の感情は、単純なシステムで

電気で決まっている。


と言うと、不思議に思うけど

理科の実験で、小学校の時に

塩水を電気分解したような、あんな単純な仕掛けで

決まっている、と思うと

だいたいアタリ(笑)。


塩水の濃さが変わると、電気分解される気体の量も変わる。


ある量に達すると、「好き」とか、そう感じるように出来ている。

好き・嫌いって、そんな程度のもので


その量が「閾値」。thretholdだ。




コンピューターは、これを真似て作られたけど

気持、そのものをコンピュータが真似できないのは


記憶を、一杯ならべて連想する仕掛けが

スーパーコンピュータでも、まだ出来ないから、だ。



その、大切な記憶は膨大で、それが人柄、とかを形成している。



なので、神様が「めぐの人生をリセットする」と言い出した時

天使さんは、それを思い直してもらうように、考えた。


経験が変われば、別の人になってしまうし

今、ルーフィを想っている、その大切な時間も

訪れないかもしれないから、だ。



時間。

誰にでも平等なのは、3次元の場合で


ルーフィは、魔法でそれを乗り越えたりできる。


4次元の時間軸を持っているのである。





Megも、ルーフィに付随する事はできる。



もちろん、めぐも

Megの3年前(笑)だから素質はあって。



能力の兆しが見え始めている。



きちんと、能力を使いこなせれば

神が、めぐの人生をリセットする必然は無くなるのだけれど


今、気づいているのは、天使さんくらい、だ。





「つぎのデートはさ、どっか美味しいものでも食べてさ」と

ルーフィが言うと、めぐはちょっと淋しそうな表情になって。



「はしたないわよ、ルーフィ」と、わたしはそう言って嗜める振りをして

ルーフィの無神経さを諌めた(笑)。



ルーフィも気づいて「そっか、レディのする事じゃないよね」と。



この国にも、そういう風潮があって。

それは、働くより投機の方が儲かるのが流行った頃だった。


政府がそれを流行させて、土地の値段、などと言う

本来価値の無いものを吊り上げてお金儲けを企んだ。


この間まで言っていた、金融緩和と同じような企みで

所詮はギャンブル、なので


正当な事をすると、損をすると言うヘンな風潮が横行したのである。


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