第33話 思い出



それはそれで、楽しい出来事が

あるのかもしれないけれど。

でも、今のめぐにとっては

いまの気持ちは、自然なものだったから

特別に、変えなくても

いい。

そういう、素敵な季節を

生きている。


その時は、気づかないけれども

後になって、振り返ると

そう思う。

そんなことが、誰にでもあるものだ。


「じゃあ、ありがとう、本当に。」

司書主任さんは、いつもの

のんびりした表情で。


すこし、忙しかったからか

汗の

浮かんだ額で、そう告げた。


その、汗の感じを

めぐのクラスメートたちは、

ちょっと嫌ってしまうような、そんな季節だったりもするけれど。

めぐは、そんな風には思わなかった。


お父さんみたい。


そんな感じにおもうだけ、だったり。めぐのお父さんは、優しいから

幼い頃、いつも一緒にいて

守ってくれる、神様みたい。


そんな存在に感じていた。



それも、ファンタジーなんだろうけれども

でも、少年期にはよくある


現実と夢想の

合間を、曖昧に漂っているような

いまの感じを、めぐは好きだった。


幼い頃から、ずっとそれは続いていて。


その世界が、本の世界に

つながっているようにおもっていたりもした。



めぐのお父さん



そんなふうに、お父さんが

優しかったので、めぐは

お父さんを嫌いにならなくてすんで

よかた、と思っている。

お父さんに、怒られた記憶が

ほとんどないからだ。

それは、やっぱり

お父さんが、めぐのことを

可愛がっていてくれたから、

なんだろうな、って

いま、すこーしだけ

大人にちかづいて

めぐは、そんなふうに思う。



図書館で、小さな子が

泣いているのを見かけて、

お母さんに叱られて、泣いてる。


そんな情景を見かける時、

かわいそう、って思うことが多かったりする。


それは、子供の気持ちが

なんとなく、想像できるからで

思いのまま、気のむくままに

遊んでいたい、って思ってて。



そんな時、お母さんは

3次元的な、日常のスケジュールに追われて。


それで、子供の自由な感覚、4次元的なそれを

3次元に合わせようとして、

いらいらしたり。



そんな構造が、おぼろげに

わかってきたのも

めぐが、ルーフィと会って

時間旅行のお話を聞くようになって。


物理学、を

勉強するようになったから、かな?



なんて、思ったりも、した。



めぐのお父さんは、幼いめぐに

いらいらしたりしなかったのかなー

なんて、思ったりしたけど



いつも、にこにこしていて

のんびりしているおとうさんは


おばあちゃんに似てるのかなー、

なんて、そんなふうに思う。



おばあちゃんは、おとうさんのことを

「やんちゃな子だったのよ」

って、お庭のおおきな木に登って

おりて来ないで、夕陽を見てた事、

2階から、トランジスターラジオを

落として。

ラジオがかわいそう、って

ずっと撫でて、ごめんね、って

泣いてて。


それがきっかけで、ラジオを修理する事を覚えた、こと。




いろんな思い出を、話してくれたけど


いまのお父さんからは、想像できない

優しくて、行動的な少年、どことなく

ルーフィに近いのかしら。



そんな事を思うと、ルーフィがいつか

お父さんみたいにまんまるに

なちゃうのかな(笑)なんて


その絵を想像して、おかしくなっちゃって

笑ったりしたり。



ひとりで、笑ってると


だれかがみたら、変、かしらってちょっと恥ずかしいけど。



それも、めぐの心が

自由に、4次元的に飛翔していて

それは、ちいさな子供の心が

自由なのと、そんなに

かわらないような。



そんな気がして、それもまたちょっと

はずかしくなっちゃう、めぐ、だったりした。



お父さんもそうなのかしら?w






恋と記憶



お父さんは、お母さんと

どんな恋をしたんだろう、なんて

中学生の頃に、聞いたっけ。

めぐは、なつかしく

思い出に浸ったり。



そんなことを思うのも、

恋って気持ちがちょっと不思議だった

そんなせいもあるのだけれど。


とつぜん、だれかが気になって。

いつも、その人の事を

考えたり。


それって不思議だな、って。


めぐにとって、ルーフィは

別世界の人だから、いつかは

お別れすることになるんだろうけど。

でも、好きな気持ちは

計算してするんじゃないもの。



そんなふうにも、めぐは思った。



それは、にゃご、いまは

にゃごになっている、元悪魔くんも

同じだった。


本当なら、魔力を手に入れていたのに


それを捨てて転生した、悪魔くんも

やっぱり、好き、と言う気持ちのままに

行動している、のだろう。



もちろんその事を、めぐは

たぶん知らない。


なので、図書館のお池で

にゃごが大活躍した意味も

どうして、子猫が

そんな事ができるのか?も

わからなかった。


とりあえず、めぐのそばにいる

にゃご、は


ふつーの子猫にしか見えないから

「見間違いなのかなー」


なんて、にこにこしながら思ったり。




土曜日の図書館も、そろそろ

終わり。



いろいろあったなぁ、と

すてきだった一日を、思い返しながら。



映写技師さんも、思ったよりは

怖くなくって、よかったし。


でも、改めてデート、は

ちょっとご遠慮したかった。


やっぱり、ルーフィが好きだもん。



心のなかで、でも「ルーフィ」って

さん、なしに呼んでみると

どきどきした。



恋人になったみたいな、そんな気がして。



それは、ファンタジー、なんだけれど、

そういう時間って、楽しくて

いつまでも、心のなかのルーフィと

恋していたかった。



不運なことに、(笑)

ルーフィは、いつもそばにいるので

本物を目の前にしていると

やっぱり、夢想には浸れないので



ひとりで恋してるのも、いいかしら。



そんなふうに思う、めぐには

なので、映写技師さんみたいな

現実のおつきあい、は

まただちょっと早いのかな。?




そんな感じかもしれなかったり。



曖昧な、そんな季節は

駆け足で過ぎていってしまう。


めぐ自身が、そう思えば

いつでも、その季節は

過ぎていってしまう。




なので、「のんびりでいいの」と

めぐは思ったし、司書主任さんも

そんな、めぐを

大切にしてくれていた。


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