第28話  異質な想い



天使さんは、めぐの能力の変化を

感じ取っていた。


もちろん、それは喜ばしい変化なのだろう。

パフォーマンスとして持っていたものが顕在するのは。


でも。



それは、天使さんの持つ天界の者の雰囲気とは

やや異質な。


ルーフィの魔法、に近いような

魔界に近い異質なエネルギーを呼び寄せている、そういう感じだった。



いま、天使さんはめぐに宿っているけれど

その、魔法をめぐが使う事で


異質なエネルギーの雰囲気に、ちょっと困っていた。


音楽で喩えるとすれば、天界の雰囲気が

バロック音楽のような、理論的に美しい響きを

数学的に割り切れる、キレイな波....。

バッハの「バディネリ」のように収斂するものだとすれば


めぐの使った能力は、もっとエモーショナルな、ロック・ミュージックのように

ビートを含む波、だった。


それは激しさをも内包する、まさに魔法と呼べるような。

やや淋しさをも含む、例えばLed Zeppelinの「Stairway to heaven」の

ような、荒々しさを持つものだった。


快活な、今のめぐの気分でそうなるのだろうけれど

そうした違和感は、宿っている天使さんとしては

ちょっと気になるところ、だった。



不協和なエネルギーがこのまま目覚めると、共生するのは

難しくなる。




人間でもそうだけど、一緒に居続けるのは

相性がないと難しい。



気になるところがあると、無駄なエネルギーを費やすからだ。


にゃご



「にゃごー、だいじょーぶ?」

めぐは、それでもちょっとぐったりしてみえる

にゃご、を気にした。


毛皮ふわふわなのが、水に濡れて

ちょっと疲れてるみたい。


にゃんこは、だいたいそうらしい。



でも、夏場になると

にゃんこだって暑いでしょって

人間はそう思うので(笑)



毛皮はちょっと暑く見えるし。




おふろでさっぱり。



大きなバスタオルでふんわり。

にゃごを拭いてあげると、いつもの感じに

ちょっと戻ったかも。




ドライヤーは嫌がるので(笑)。


そのままにした。



扇風機は好きみたいだけど。





お風呂にある、お父さんが置いた扇風機に

にゃご、をあてて。



風で、ふわふわ。

毛皮が、すこしづつ。



いつものにゃご、に戻ってくると


やっぱり暑いのか、のそのそ、ぐったり。



夏のにゃんこは、もの憂げだ。






にゃごは、もともと悪魔くんの転生だけど

どうやら、過去の記憶は覚えていないようだ。


もっとも、覚えていたとしても

動物さんと言葉を交わすことは、めぐ、にはできないし


めぐも、悪魔くんの事は知らないので

お話できる事もない。




「そういえば、前、にゃんこ、いたんだっけ。」



めぐは、遠い記憶を思い出す。

キジトラにゃんこで、おばあちゃんが貰ってきた子猫。

ミー子、だった。


雄なのに、なぜか「ミー子」なの(笑)は

おばあちゃんが、めぐ、位の頃に

飼ってたにゃんこの名前なので。



でも、みーこ、って呼ぶと返事したので

それで、みーこ、ってみんなで呼んでた。




結構長生きのにゃんこだったけど

ある朝、いなくなってしまって。


おばあちゃんは、「猫は、死ぬ所を見せないものなの」って

ちょっと淋しそうな事を言った。



それっきり、ミー子は姿を見せなかった。




そんなことを、ふと、めぐは

思い出した。


悲しかったけど。でも、いつか、楽しかった思い出だけが

残った。


死んじゃったところを見なかったから、かも

知れなかった。




「いつか....。」



にゃご、にも

そんな日が来るのか、って思うと

ちょっと怖くなる。



それは、めぐ自身も生きているから。



別れる事はとっても淋しい....。




「ずーっと、生きていけたらいいのに。」








めぐは、ほんとにそう思った。



「転生」の事を知らないから、もある。

天使さんは、とても寿命が長いし

悪魔くんも、もともとそうだった。



けれども、悪魔くんは転生したから

いつか、猫からまた転生するかもしれないし

そのまま猫、だったりするかもしれない。


そんな、途方も無い時間を

天使さんは、過ごそうとしている。


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