第26話
着信は、榊汀子からだった。
「あの....姉の、意識が戻ったんです。奇跡だって、お医者様はそう仰ってます。....お伝えしておこうと思って....。」
「わかりました。ありがとう。今、病院ですか?すぐ行きます。」
僕は、空車のタクシーを掴まえて、飛び乗る。
「国立病院まで。あ、タクシー代はRFIDで払うから、心配しないで。」
運転手はにこやかに返答。
RFIDマークがついているスマート・フォンなので安心したようだ。
「悪いけど、急いで運転手さん。」
「どうかなさったんで?」運転手は、スポーツ刈の襟足でそう答えた。
すでに、アクセルを深く踏み込んでいる。
PWMインヴァーターが、唸りを上げて
全電力を、駆動用モーターに注ぎ込む。
巨人に掴まれたように、タクシーは全力で加速していた。
「友達の、意識が戻ったんです。」
運転手は、楽しそうに
「そいつぁ良かった、じゃ、ご祝儀だ、飛ばすぜ、坊ちゃん!。」
更にスピードを上げ、バイパス・ロードに飛び込む。
高架道路を、流れ星のように僕は飛び去っていく。
時の流れのように。
PWMインヴァーターと、DCシンクロナス・モーターは
ジェット戦闘機のような高周波音を立てて。
さながら、地上を走る航空機のようだった。
国立病院に着き、僕は転がるようにタクシーを飛び降りた。
「ありがとう、運転手さん!」
RFIDで、一瞬で支払いを済まして
僕は2階へと、静かに急いだ。
薗子の病室の扉を静かに開く。
汀子は、嬉し涙に濡れた頬を隠そうとせず....。
どうぞ、と、僕を招き入れた。
汀子の肩越しに、薗子、21歳の薗子は
生まれたての天使のように眩い微笑みで、僕を見た....。
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