第25話
「薗子......。」
僕も、泣けてきた。図書館の構内で、木の下で、電話しながら泣いているなんて、
変だけど、でも、構ってはいられなかった。
「僕、君が好きだよ、薗子。こっちの世界の君は21歳、たぶん
僕の事は知らずに、今も眠り続けている筈さ.....分かるだろう?
僕らは似て非なる世界に生きている。何故か、スマート・フォンだけがつながっていて...。」
そこまで話した時、スマート・フォンの電源が切れた。
バッテリーが切れたのだろうか?故障?
ディスプレイには何も映らない。
僕は、狼狽した。
まだ、話したい事がたくさんあったのに。
僕は、図書館の構内を飛び出すと、あたりを見回した。
.....あった。!
目に付いたコンビニで、スマート・フォンの予備電池を買い
接続した。
充電ランプが点灯する。
...よかった。僕は、安堵の声でそう言ったので
コンビニにいた女の子数人が、くすくす笑っていた。
僕は、恥ずかしくなってコンビニの外へ出、
薗子へ電話を掛けようと、スマート・フォンの電源を入れた。
着信履歴を見る.......。
...ない!。
まさか.......。
メール・アドレスや、日記、ピクチャー・フォルダ。
全てのデータから、薗子の形跡が消え失せていた。
僕は、呆然と、その場に立ちすくんだ.....。
スマート・フォンの、着信メロディが鳴った。
メロディは、フレデリック・ショパンの
練習曲#10-3、通称「別れの曲」。
シューマンの「トロイメライ」に似ているけれど
僕は、この曲が好きだ。
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