第14話 カッコつけてみた
俺は、驚きのあまり言葉を失った。
地中から飛び出したアカヅメモグラの鋭い爪がララの盾に防がれたかと思えば、次の瞬間にはアカヅメモグラのご遺体が転がっていたのだ。
アカヅメモグラの体は、真っ二つに斬られている。
もちろん、そんなことが出来る刃物を持っているのはロロだけだ。
肝心のロロはといえば、鉄製の剣を片手にアカヅメモグラの後ろへ立っていた。
その背中には、緑色で半透明の翼が見える。
そういえば、ロロは「【
この翼も、オリジナルスキルの一部なのだろう。
「お兄ちゃんっ!!ちゃんと見ててくれた?」
ララが「すごいでしょ、褒めて褒めて!!」という顔で、ぴょんぴょん跳ねながら近づいてきた。
「いや、すごかったんだけどさ。何が起きたんだ?」
あまりの速さに、完璧に目で追うことが出来なかった。
気付いたらモンスターが討伐されていた、という感じだ。
「ロロのスキル、速かったでしょ?」
「めっちゃ速かったな。それだけは分かるよ。で、具体的にどんなスキルなんだ?」
「う~ん。ロロが説明した方がいいかも。」
そう言うと、ララは戻ってきたロロに目で合図した。
その目を見て、ロロが自分のスマホを取り出し、説明してくれる。
その背中からは、もう翼は消えていた。
「えっと【
ロロが見せてくれた画面には、オリジナルスキルの説明が表示されている。
それはこんな内容だった。
---------------------------
【
効果:背部に一対の翼が出現し、高速で飛行することが出来る。
飛行速度:自身の速度×500%
---------------------------
やっぱり、あの翼はスキルの一部だったか。
さすがオリジナルスキルというだけあって、なかなかにえぐい効果だ。
まず、飛行できるという点でぶっ壊れスキルである。
さらに、自身の速度の×500%。つまり5倍。
「ちなみに、ロロの速度はどれくらいなんだ?」
「780です。」
このレベルにしては、めちゃくちゃ速いな。
それが5倍ってことは、3900。
そりゃ、今の俺の目では追いつけない訳だ。
「レベル51で780ってことは、初期値でかなり高かったんじゃないか?」
「はい。220ありました。でもその分、防御力と体力の数値が低くて…。」
なるほど。
初期値で220というのは化け物クラス。
さすがに、他の数値で釣り合いが取られたということだろう。
「まあCランクダンジョン帯に速度4000近くなんて多分いないから、その速度は大きな武器だな。」
速度4000近くというと、ロロのようなオリジナルスキルが無い人ならレベル390前後の数値だ。
ロロがそのレベルになるころには、単純計算で速度29000以上。
末恐ろしいといったらありゃしない。
「ロロはもちろんすごかったけど、ララの動きもすごく良かったな。」
実戦となった途端に雰囲気が変わり、確実に盾役の役目を果たしていたように思う。
普段はおちゃらけているが、もちろんずっとその調子ではとてもこれから先の難易度の高いダンジョンは攻略出来ない。
ララも、そこはしっかり分かっているのだろう。
「にゃっはっは~。ありがと、お兄ちゃん。」
相変わらずの猫みたいな笑い方とともに、褒められたララが喜んだ。
「ララも、結構速度が速いんじゃないか?」
アカヅメモグラへ突っ込んでいく時の動きや、爪の攻撃に反応する速度はなかなかのものだった。
普段の俺より、全然速かった気がする。
「私も速度は初期で150あったよ。今は730かな。ロロは防御力と体力が低かったけど攻撃力がそれなりで、私は攻撃力と幸運が低かったけど防御力と体力が高かったから、私が盾役でロロがアタッカーになったの。」
それぞれの個性を活かした、的確な判断だな。
もしかしたら、探索者管理局の職員におすすめされたのかもしれないけど。
「さあお兄ちゃん、先に進もう!!」
ララが「おー!!」と手を突き上げる。
ロロも、一緒に手を突き上げた。
普段から控えめだが、意外とノリはいいのかもしれない。
「おー!!」
俺も、思いっきり両手を突き上げた。
その後、エレクトリック・アースワームは俺、アカヅメモグラはララとロロという風に分担して、25分ほどでボス部屋に辿り着いた。
俺はもちろん、【放電】もコピペしている。
ロロの【
間違いなく、これから成長すれば上位層に食い込める素質だ。
「このダンジョンのボスって、確かビリビリミミズのでっかい版だよね?」
「そうだな。一応、種類的な違いはないらしい。ただでかいだけ。」
「じゃあ、私たちの出番は無いね。頑張って、お兄ちゃん!!」
「頑張ってください!!」
もう、心の中ですらツッコむ気にならない。
いうことはただ一つ。
「お前ら、このダンジョン出たら武器を買えよ。金はあるのか?」
2人とも「は~い」とかわいらしく返事した。
ララはてへっと舌を出している。
はあ、買える金あるんだったらとっとと買っとけよ…。
ボス部屋に入ると、Dランクダンジョンの時と変わらずボスが部屋の中央に鎮座している。
ボスのエレクトリック・アースワームは、体長3mくらい。
普通の個体の倍はある。
ボス部屋自体は、Dランクダンジョンより大きい感じだ。
ボスモンスターのサイズが大きくなるということもあるかもしれない。
天井も高くなっているし、【跳躍】も思いっきり使えそうだ。
「じゃあ俺は思いっきり暴れるから、安全圏で待ってろよ。」
「了解!!」
「頑張ってください!!」
2人の声援を受け、俺はエレクトリック・アースワームに向けて歩みだす。
やることは、いつもと変わらない。
モンスターを火で焼く、ただそれだけ。
さっきはただ焼いたが、せっかくの広い部屋だしちょっとカッコつけてみることにしよう。
「【跳躍】!!」
俺は両足に力を込め、思いっきり床を蹴った。
俺のジャンプの高さに、後ろの2人が「お~」と声を上げる。
多分今の俺の顔は、かなりのドヤ顔になっているだろうな。
「【ラビットファイヤー】!!」
うさちゃん火の玉が連射される。
俺のコントロールも確実に成長していて、全ての火の玉がエレクトリック・アースワームの巨体にきれいにヒットする。
何発かは、クリティカルヒットしたようだ。
ボンボンと、爆発音もする。
エレクトリック・アースワームの体の周りから、何やらビリビリと音がし始めた。
この巨体で【放電】でもされたら厄介だ。
その前に、決着をつけてしまいたい。
「【分身】!!」
俺は、着地と同時に体を2つに分けた。
後ろから「え~」と驚く声がする。
なかなかリアクションが良くて、スキルの披露のしがいがあるというものだ。
「【跳躍】!!」
「【ラビットファイヤー】!!」
片方の俺は高く飛び、片方の俺は相変わらずの火の玉連射を始めた。
何も、2人の俺が全く同じ動きをする必要はないのだ。
「【ラビットファイヤー】!!」
空中の俺も、うさちゃん火の玉を撃ち始めた。
もちろんステータスの数値は半分こされているので、分身したからといって与えるダメージが2倍になる訳ではない。
ただ、カッコつけてるだけだ。
「よし、いったな。」
エレクトリック・アースワームが、悲鳴というには気持ちの悪い音を発して倒れた。
初めてのCランクダンジョン、攻略成功である。
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氏名:
年齢:18
《STATUSES》
レベル:56
攻撃力:680
防御力:680
速 度:680
幸 運:680
体 力:680
《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【
【体当たり】Lv.2
【粘膜シールド】Lv.3
【分身】Lv.2
【跳躍】Lv.1
【ジグザグジャンプ】Lv.2
【ラビットファイヤー】Lv.4
【催涙花粉】Lv.1
【ステムバレット】Lv.1
【進化】Lv.2
【
【帯電】Lv.1
【放電】Lv.1
〈ノーマルスキル〉
【鑑定眼】Lv.1
【ウィンドアロー】Lv.1
スキル習得ポイント:2650
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