やる気のない暗殺者は、元・勇者

緋色火花

第1話 あくびから始まる物語・・・。

ふあぁぁ~・・・ねむい・・・。

もしも~し・・・寝てもいいですか~?・・・寝ますよ~?

(はーい)・・・よしっ!心優しい誰かからのOKはもらったからな・・・

寝るか・・・暖かい日差しよ、ありがとう♪

そして、おやすみなさい。


Zzz・・・Zzz・・・Zzz・・・。


暖かな日差しが差し込む窓辺の机の前で、

ぐっすりと眠りに着く男が居た・・・。



13年前・・・


「うおぉぉぉぉっ!魔王っ!シュタイゼルっ!

 これで・・・これで終わりだぁぁぁぁっ!」


「お、おのれぇぇっ!勇者めぇぇぇっ!

 こ、この魔王である私がこんなところでぇぇぇぇっ!」


「いけーっ!リョウヘイーっ!」


「さっさと決めちゃいなさいっ!」


「あんたに・・・託したわっ!」


仲間の叫びにリョウヘイは笑みを浮かべると、

全ての力を聖剣へと集めた。


「・・・決めるぜっ!極伝・天魔絶剣っ!」


「キーンっ!ザシュッ!」


「グハッ!・・・わ、我が・・・ほ、ほろび・・・るの・・・か・・・」


「ま、魔王様ぁぁぁぁっ!?」


光り輝く聖剣に込めた勇者の渾身の一撃は、魔王の剣ごと胴体を斬り裂いた。


「も、もう・・・復活・・・はぁ、はぁ・・・するんじゃねーぞっ!」


「ズリュッ・・・ドサッ!」


「・・・か、勝った・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・勝ったぞぉぉぉっ!」


3年もの間・・・。

魔王軍との死闘を繰り広げてきた勇者の戦いは・・・

今、終わりを告げた。


それは18歳冬の出来事だった・・・。



そして現在・・・。


「王都・ファーナス」から1500km程離れた南にある街。

「ルクナ」と言う温暖な地域で緑豊かな山々に囲まれた街にその男は居た。


そんな街の中を2人の女が大量の荷物を抱え、

「ユウナギ」と書かれた2階建ての家の階段を昇って行く。


「ガチャ・・・」


「ただいま~・・・ユウナギ様~・・・♪」


「戻ったわよ・・・」


静まり返る家の中から返事はない。

一人の女は苦笑いを浮かべ、もう一人の女は顔を引きつらせていた。


「ま、まさか・・・」


「あははは・・・多分その、まさか・・・ですよね?」


女達はリビングにあるテーブルに荷物を置き、

一人の女が荒々しく足早にドアノブを掴むと・・・。


「アスティナ?・・・加減・・・してよね?」


「ぐっ・・・わ、わかってるわよっ!」


「・・・暴力も・・・ダメだからね?」


「・・・ちっ!」


振り向きもせず不満そうにそう言うと、

ドアノブを回しリビングを出ていった。


「・・・死ななきゃいいけどね~♪」


そう言いながら、二階に居るであろう男に視線を送るのだった。


「ドタッ、ドタッ、ドタッ!」っと、

苛立ちを隠さないまま階段を荒々しく昇ると、

突き当りにある男の部屋へと向かって行く。


「ドンっ!」


「ユウナギーっ!」


勢いよく開けられたドアは壁に当たり激しい音を立てるのだが、

ユウナギと呼ばれた男は夢の中だった。


「Zzz・・・Zzz・・・」


その激しい音を気にする事もなく男はスヤスヤと熟睡していた。

そんな様子に、こめかみをヒクつかせていた女が怒気を込めながら叫んだ。


「やっっぱり・・・寝てたわね・・・こ、こいつぅ~・・・

 こらぁぁっ!ユウナギーっ!起きろぉぉぉっ!」


「うっ・・・んぁ・・・?

 ふぁぁぁ~・・・どうした~?アスティナ~?」


椅子の背もたれに身体を預けたまま、まだ夢現ゆめうつつだった。


「ほほう~・・・これはこれはユウナギ殿~?

 夢現とは・・・ふっふっふっ・・・いいご身分ですわね~?」


殺気を放つアスティナにユウナギと呼ばれた男は・・・

強制的に現実世界へと帰還したのだった。


「・・・ハッ!・・・ま、待てっ!は、早まるなっ!

 な?・・・な?・・・は、話せばわかるってっ!

 怖い、怖い、怖い、まじ怖いってぇぇーっ!」


指をパキパキと鳴らし威嚇しつつ、

アスティナはゆっくりと歩きながら歯を食い縛り、

「ギチギチ」と音を鳴らしながら呻くようにつぶやいていた。


「私・・・言ったよね?

 私達の代わりに冒険者ギルドに行って来てって・・・」


「あははは・・・い、行こうと思った・・・うんうん、思ったんだけどさ~?

 あ、あまりにも・・・さ?ひ、日差しが気持ちよ、よくって・・・さ?

 わ、悪いのは・・・そ、そうっ!アイツだっ!

 俺を眠りへといざなう・・・この暖かな日差しがいけないのだっ!

 こ、こらぁぁっ!太陽っ!お、お前が悪いんだぞぉーっ!

 俺に謝れぇーっ!」


机の前に辿り着いたアスティナは、

身を乗り出しユウナギに睨みを利かせた。


「ふっふっふっ・・・悪いのは・・・あんたで・・・しょうが・・・。

 まず私達に・・・土下座して謝れぇぇぇっ!」


「ま、待て・・・は、早まる・・・な・・・って・・・うわっ!」


ユウナギの眼前に迫ったアスティナの迫力に、

勢いよく椅子から転げ落ちてしまった。


「ぐはっ!ぐぉぉぉぉっ!いてぇーっ!うぉぉぉぉぉ!」


後頭部を強打したユウナギは、ゴロゴロと転げ回り、

その痛みにもだえていた。


「ふんっ!いい気味よっ!きっと天罰が下ったんだわ。

 私達の頼みを聞かず、昼間っから寝ているあんたが悪いのよっ!」


ユウナギに指を差しながら見下ろすその目は・・・恐ろしく冷たかった。


「おお~・・・いてててて・・・まーじ・・・痛いっつーのっ!」


「あんたが悪いっ!性格も悪い!全てが悪いっ!」


アスティナの物言いに、ユウナギは勢いよく立ち上がると、

全力で抗議を始めた。



「待て待て待てーいっ!さっきから言いたい事いいやがってっ!

 性格はまだしも、全てが悪いって何だよっ!」


「す、全てって・・・そ、そこなのっ!?せ、性格の方は・・・別にいいの?」


「んぁ?性格は・・・フッ・・・手遅れだぜ♪」


「て、手遅れって、自覚している分、タチ悪いわね?

 はぁ~、もう怒るのもバカらしいわ・・・」


「はっはっはっ!」


「笑うなぁっ!・・・もういいから、さっさとランチを食べましょ・・・」


「あいよ~・・・って言うか・・・痛たたたた・・・まだ痛いし・・・」


「はぁ~・・・」


溜息を吐きつつ2人は昼食を取る為、1階へと降りて行くのだった。



ここでちょっと自己紹介やらなんやらしとくわ~。


俺の名前は「浅野 涼平」元・日本人だ。

只今、28歳独身・・・独身ったら独身なんだけど・・・何か?

彼女は居たんだが・・・今は訳あって・・・会ってない・・・

つーか・・・会えない。王都に行くとかまじ無理ゲーだからっ!

で、今はこの街でCランクの冒険者をやってる。


それでまぁ~一体何があったかと言うとだな・・・。


俺が15歳の時、理不尽な神にこの世界・・・

異世界「ザナフィー」に放り込まれた。

「ポイッ」と、まぁ~お気楽に放り込まれたんだが、

まぁ~簡単に言うと、「異世界転移」ってヤツだな?


そして転移させられた場所は「王都・ファーナス」の地下祭壇だった。

つまり俺は・・・「勇者」として転移させられてきたらしい。

あ~・・・まじでこんな事ってあるんだな~?

つーか、「勇者」とかまじで聞いてないんだけど?

今度あのクソ神に会ったら・・・ワンパン決めてやるっ!


で・・・よくある展開で、俺に魔王を倒せって言いやがった。

まぁ~当時の俺はその展開に、

痛々しい青春が暴発してたから別にいいんだが、

・・・今思うと、俺も青かったな~って、つくづく思うぜ。


だいたいだな~考えても見てくれ?

15歳だぜ!?・・・そんなガキに魔王討伐って・・・バッカじゃねーのっ!?

大人が戦えよっ、大人がっ!

こんなガキに頼ってんじゃねーよっ!

てめぇー達が戦えっつーんだよっ!

世界の運命なんて、そんな大それたモノを背負わすなよっ!

まじでこの世界の大人達の神経疑うぜ。


いや、まじでさ~?何度死にかけたと思ってんだよっ!

あぁ~・・・そう言えば、俺ってば、2度ほど・・・死んだっけ・・・(遠い目)

ははは、懐かしい~♪あん時は・・・死ぬほど痛かったっけなぁ~・・・。

まぁ~、死んでたからわかんないけどな♪


っていうか・・・ついでに言わせてもらうが・・・。

この世界の女連中の装備は・・・兎に角・・・おかしい・・・。

男の装備は普通なのによ~?なのに、何故・・・?why~?

つーか・・・すっげーエロいんだが・・・?


ま、まぁ~エロは正義だからそう言う観点からだと、

うむ・・・実に素晴らしいモノなんだが・・・

まぁ~それは、とりあえず置いておいてだな・・・。


女の装備ってよ~?

ぺらっぺらの服で露出も半端なく高くてよ~

例えばビキニアーマーとか、レオタード的なヤツとか・・・。

一体それでどこを守るんだよっ!

防具の意味を理解しろよっ!

わ、わざとかっ!?わざとなのかっ!?

もうアレって職人側の趣味だよな~?


っていうか・・・思春期舐めんなぁぁぁぁっ!

俺ってば当時まだ15歳だぜっ!?

多感な時期にそんなモノを見せつけやがってっ!

こんちくしょうめっ!


前屈まえかがみで戦えってかっ!?

俺の息子が聖剣ですっ!ってかっ!?

ふざけんなぁぁぁぁっ!

そんな状態でっ!戦えるかぁぁぁぁぁっ!ボケェェェっ!


ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・。


す、すまん・・・。

つ、つい昔を思い出すと・・・ちょっと・・・な?


まぁ~それでだ・・・。

3年かかって魔王を倒したんだけどさ・・・。

それから暫くの間は、平和だったんだ。


魔王が居なくなったからって、魔族や魔物に魔獣達ってのは、

別に居なくなったりはしねーんだ。

まぁ~、大人しくはなったけどな?


俺は魔王討伐の功績で王都に屋敷を持ち、騎士団まで下賜かしされた。

120人の騎士団だぜ?しかもそこのトップっ!

正直・・・すごくね?


異世界バンザイって感じだったぜ。

・・・命の代償がそれに見合うか?と、聞かれたら・・・困っちまうがな?

国王始め、王女達や皇太子に王子達とも仲良くなれた。

これでも皇太子とは親友だったんだぜ?

日本に居たら・・・こんな事ありえねぇーよな~?


まぁ~それから国内での揉め事が次第に目に着くようになったんだが・・・。

当然俺なんて新参者じゃん?

魔王を倒した俺なんて・・・クソ貴族どもからしたら化け物じゃんよ。

そりゃ~ネチネチと色々と言われたり、されたりしたけど、

俺の部下の出来が良くって何とかなりはしたものの・・・

あ~あぁ~・・・まじで面倒臭せーっ!


特に・・・副団長「リーチェ・フロー」って言うエルフの女なんだが、

まじ優秀・・・まじ、リーチェさんっ!何度助けられた事か・・・。

これで胸がもっと・・・ハッ!ゲフン、ゲフンっ!

こ、これ以上は流石にこの俺でも言えねぇーな~?


んっ!?何故かってっ!?

そ、そりゃ~俺ってばまだ死にたくねぇーもんよ~。

だから言えませんっ!ごめんなさいっ!!


まぁ~この後の事は、追々話す事もあるかも・・・しれないが・・・。

結局なんやかんやあって、俺は王都を出たって訳なんだ。


因みに・・・なんやかんやは・・・なんやかんや・・・ですっ!


んっ!?魔王を倒した後、日本に戻らなかったのかって?

あ~・・・それな?まじ・・・それな?


本当なら、魔王討伐の後・・・神が迎えに来るって言ってたんだけど、

待てど暮せど・・・神のヤツ、来ねーでやんの!?

ないわ~・・・まじ、ないわ~・・・。


実際あれだよ?

窓にてるてる坊主を吊るしてお祈りを捧げていたんだよ~?

ちゃんといい子にしてたのによ~?

まじ・・・来ねぇーでやんのっ!


もし忘れていた・・・とか言う、訳の分からない事が理由なら・・・

・・・ぶっ殺すっ!まじ神であっても「ぶっころ」だぜっ!

次に会った時はもう~あれだっ!

ユウナギ必殺の進化系デンプシーロールでだな~

「バキッ!ベキッ!グチャッ!メキッ!」と、

もう~ボッコボコにしてやんぜっ!


あぁ~そうだ・・・言い忘れてたわ~

実は俺、日本に戻るつもりだったんだよ?

理由は・・・やっぱ、家族の事もそうなんだが、

ちょっとやりたい事もあったからな~・・・

だから俺は魔王退治を頑張ったんだぜ~?


全くよ~・・・神のヤツどうなってんだよっ!


で・・・だ。

結局この世界に残留する事になった俺は、王都から出てこの街に来た。

つまりこの時の俺の気持ちは~・・・アレだ。


高校球児がドラフトに声が掛からなかった・・・そんな気分だな?


それで・・・だ。

この街に来た理由は・・・。

以前勇者の俺と共に魔王軍と戦った冒険者ギルド軍に居た男・・・

当時Sランクの冒険者だった、「カートラル」の誘いを受けて、

現在この街に住む事になったんだ。

今の俺は一応、Cランクの冒険者をやっている。

あっ、これ言ったの2回目だっけか?

悪りぃ~悪りぃ~♪


カート・・・もう面倒臭いから愛称でいいよな?

そのカートから俺の状況を詳しく聞いたところ、かなりヤバい事になっていた。


リョウヘイ・アサノは・・・世界へ向けて指名手配されているって・・・

・・・まじでかっ!ったく・・・やってくれるぜクソ貴族どもっ!

められた俺が悪いっちゃ~悪いんだけどな~・・・。

まぁ~そんな訳で、今の俺は名を変え顔を変えているって訳なんだ。

それに俺の協力者からもそんな情報をもらっているからな~・・・

まじでヤバいんだわ・・・これが・・・。


ってな訳で、今の俺の名は・・・。

「ユウナギ・ウルフウッド」って、名に変えているんだ。

顔も神からもらった創造魔法で変えてしまっているから、

まぁ~・・・バレる事はないだろうな?


ただ、俺には追手が居るらしいから、用心に越した事はないんだけどな。

そしてこの街で俺の正体を知っているのは、

さっきの凶暴な女・・・アスティナと元・Sランク冒険者のカート、

それに、アスティナと一緒に居た女、

それと今はちょっと仕事で街を出ている雑用係の男の4人だ。



ここらでちょっとした詳細を説明しておこう・・・。


※ ユウナギ・ウルフウッド 28歳 177cm 男 人族 独身 魔剣士

  顔は中の上 黒髪のウルフカット 細マッチョ体型 Cランク冒険者

  創造魔法を得意とし、魔力は神級。

  体術及び格闘術も神級。

  メイン武器は刀 剣術も神級。

  特技 「眠ったまま戦闘が出来る」

  勇者時代に身に着けたスキルなんだぜ?

  すごくね?

それに俺の場合は鑑定でバレないように、ステータスカードを偽装しているんだ。

バレるとまじ・・・ヤバいからな~。

まじで色々と面倒臭せーんだわ。ま・じ・でっ!


※ アスティナ 年齢不詳 170cm 細身 女 独身 魔剣士

  人種は人外だ。 Cランク冒険者。

  切れ長の目で美人 銀髪のラフカール・ロング

  スタイルは・・・美乳マンだな。

  赤い服を好んで着る目立ちたがり屋の自己顕示欲の強過ぎる女。

  魔法全般で魔力も膨大。

  体術及び格闘術にも優れている。

  だが・・・凶暴である・・・。

  つーか、トロール素手でぶっ殺せるってまじで謎なんだが?

  教訓・・・天は二物を与えずって言葉の典型的なヤツ。

  メイン武器はロングソード。

  特技 「・・・格闘」(剣・・・いらなくね?)



因みにアスティナと一緒に居た女は・・・まぁ~第2話で話すわ♪

ってなことで、今後とも宜しくな?


じゃ~俺は飯でも食ってくるわ~・・・じゃ~な♪

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