某国のパレント
オハラ
第1話 はじめまして
少子化が進んだ現代、この国は働くことよりも人口を増やすことを優先し新たな施設が誕生した。
そこでは、知り合ったばかりの男女が【愛のない】愛を育み子を作る。
男は何も考えず、ふらっと立ち寄り快楽を堪能し帰っていく。
女は後日検査され、妊娠していればそれが出てくるまで施設で監禁される。
といってもそこそこ優遇された暮らしはできるようになっており、中には外の暮らしより快適だと言って、何回もお世話になっている【常連客】もいるほどだ。
そして、【身軽になった女達】はそれの顔も見ることなくまた元の暮らしに戻っていく....。
産み落とされたモノたちは、ある程度になると国が指定した所で語学を学びながら、仕事をする。
そして、18年経ったモノから【捨てられる】。国としては自由になると公言しているが、それを口言するものは誰もいなかった。
そして捨てられる側から捨てる側になった者達は、そのうち施設へそれを捨てていく。
この人工的なループのおかげで人口的にはかなり効果が得られたが、人として何か虚しさを感じるモノもごく僅かだが存在していた....。
そんな時代が当たり前になって来た頃、僕の物語は始まっていく....。
快適とは言えないものの少し暑いくらいのある日、僕はいつもの様に働いていた。
と、言ってもまだ14年製なので大したことは出来ず、雑用と呼ばれる仕事を立派にこなしていた。
歴史によると大昔のモノたちは20年製辺りから働いていたらしく、中には40年製でも働いていないモノもいたとか。
「なんと羨ましい」
物語の主人公の第一声が妬みとはどうかとも思うが、僕がどういうモノかと言うことが伝わりやすいかもしれない。
僕はいわゆる【米袋の中の米】のようなもので、何も変わったところが無ければ、変なところもない。
普通ですら超越した普通だ。
そんな溜息を二酸化炭素と配合しながら垂れ流して遊んでいた時、少し離れたところからざわめきが聞こえてきた。
音の方へ目を移動させると何やら人だかりが出来ていた―――。
人とは愚かなものである...何でもかんでもすぐ群がる。そして自分に関わりのない事件が大好物なのだから。
そう心で他人を見下しながらも、足はいつの間にか騒ぎの中心へ向かおうと歩き出していた。
期待感で顔は既に、にやけているとも気づかずに...。
人の隙間をすり抜けながら開けた中心部が見えるところまで潜り込んだ。
そこには抑え込まれている子供が泣いてた。
何かを訴えてるようだが、周りの雑音狂想曲によって全く聴こえなかった。
そこでふと気づき、子供の視線の先を追ってみると、数メートル離れたところにこれまた押さえつけられている女がいるのが見えた。
その女も何か言っているのだが全く聞き取れない。
そして、また子供の方を見ると力尽きたのかぐったりしていて、指ひとつ動いていない様子だった―――。
そう.....まるで...生きていないかのように...。
っと誰もが思ったその瞬間!
押さえつけられている手をすり抜け、獣の様な素早さで女の方へ迫っていくその子供の形相は、周りの者達を1秒間身動き出来なくさせるほどだった...。
「ダメだぁぁぁぁ!」
押さえつけていた男が叫ぶ頃には、子供は女の目前まで迫っていた。
あれだけ騒がしかった場を静寂が支配した時、子供の声が扉を開くかのように微かに聞こえてきた―――。
「マ...マ.....。」
そう聞こえた時、子供は女の前で立ち尽くしていた。
ピピピピっ!
ボンッ!!
この2人の関係を把握出来たと思ったその時!爆発音が巻き起こりまた、周りの人間達は一時的なパニックに陥った―――。
反射的に身を丸めていた僕は、辺りが収まったのを伺いながら子供の方を見る...。
その目には未だ立ち尽くしている子供が映っていた―――。
そう....頭部の無くなった...立ち尽くしている子供の姿が.....。
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