天国で安らかに眠りたかったのに、異世界へ勝手に連れて行かれ人生強制リスタート
ロッキーズ
第一章 異世界初心者編
第1話 異世界強制連行
「先生!次の指示をお願いします。脈がかなり弱くなっています!」
「電気ショックの準びして!」
モヤモヤした声が聞こえてくる。何をそんなに慌てているんだ?ああ、そうか、俺は癌との闘いに負けて死にゆくんだ。24年と短い人生だった、まだまだこれからだと言うのに。。。
「海斗!しっかりして!起きなさい!」
母さんの叫び声が聞こえてくる。こんなに辛く長い闘い、もう嫌だ。神様、もう俺を天国に連れて行って下さい、暖かい風が吹く草原で安らかに眠りたいです。
最後の力を振り絞って集まっている家族一人一人を見た。
(母さん、父さん、姉ちゃん、お爺ちゃん、、ん?誰?あのお爺ちゃん誰?)
俺は癌のせいで記憶喪失になってしまったのか、ただの赤の他人が様子を見ているのか分からなくなった。
白髪頭で垂れ目のおじいさんはただ真顔でこちらを見ているだけだ。そんな中とうとう生きる力が尽きた俺は視界が真っ暗になり、ついに安らかに眠る事が出来た。
出来たと思っていた。
「!?」
はっと目を開いた時、俺が居たのは暖かい風が吹く大草原でも、気持ちいいベットの上でもなく、自分の家のリビングルームだった。
夢?いやいや、俺は幽霊になったのか?え、未練があって天国にいけないとか?
「はじめまして、海斗くん。そこに腰かけなさい。」
背中の方からおじいさんの声が聞こえて、ビクッとしながら振り向いた。
「俺の病室にいたお爺さん?」
白髪のお爺さんは、あたかも自分家の様にテーブルの前に座り、俺に座れと行ってくる。
「わしは神様じゃ。」
いきなりすぎる。俺、実は空飛べるって感じの勢いで言っている。なんだこの爺さん。でも、早く天国に行きたいから話に乗ってみる事にした。
「神様、お会いできて嬉しいです。」
「ふむ、皆はお前と違って悲鳴を上げるか、気絶するのじゃが。まあ良い、お前は天国希望じゃったのう。」
死んでからも気絶ってするんだ。
「はい、24年間の短い人生でしたが、悔いはないです。精一杯闘って、精一杯生きました。」
実は嘘だ。俺は生前友達は一人二人しかいなかったし、恋人もいない、つまらない人生だった。。趣味も無い、夢中になろうと思うものに出会えなかった。人と関わりたくないって訳じゃなくて、いつも受け身になってしまう、自分から行こうとは思わない。
「んー、そうじゃな。一つ提案がある、転生してみる気はないか?」
自称神様はまたぶっ飛んだ事を言いはじめた。
「異世界転生じゃよ。ほら、お前たちの世界ではアニメや漫画でよく描かれてるじゃろ。」
自称神様が言うことは信じ難い、天国までの迎えが来るまで話に付き合う事にしよう。
「異世界には行きたくないです。アニメも漫画も興味なかったので異世界については理解した事がないです。」
「異世界が君を必要としていたら?」
中二病?
「そんな訳ないです。」
「よしわかったわい。お前の今までの行いと、その心に秘めている思いはようわかったわい。」
自称神様はいきなり神々しく光だして宙に浮かび上がった。失礼しました、自称ではなく、マジな神様でした。
「お前は天国に行きたいと言うのじゃな??
最後に、お前に言葉をたくす。異世界へ行ってらっしゃい。」
「????????」
この爺さんは何を言っているんだ?頭が一瞬フリーズして何をどうして良いのか分からなくなった。
「か、神様!?」
頭がフリーズしている内に、俺の体は青い光を放ちながら宙に浮いていた。
「ほう、お前の魂は澄んだ青色か。お前はまだお前自身を知らない様だ、異世界へ行き、お前が本当に望んでいるままに生きてみろ。」
神様は真剣な眼差しでこちらを見て言ってくる。もう今の俺にはどうする事も出来ない。もう俺は人間を引退したいのに、せめて異世界では鳥とか猫とかにしてくれ。。。
「お前に新たな名前をやる。ヘデンだ、異世界を生き抜くためのスキルは付けといてやる、しかし、その青い魂の光は特殊スキルに変化する可能性がある。どんなものなのかわしにも分からん。」
答えは直ぐに出た、また人間のようだ。
神様は言い終えると両手を俺の方に向けもっと強い光を放った。それと同時に視界が真っ暗になり意識を失った。
意識を失っている間、なぜだか声が聞こえてくる、脳に直接届く声。何を話しているんだろう。
「ヘデンくんの転生先は〇〇王国、種族はどうする?」
小さな声だが聞き取れる。また訳のわからない事を。
「ヒューマンでいいだろう。」
「そうだな。」
「おい!何やってる、そんな事をしてしまったら・・・・」
なんだ?肝心なところがモゴモゴして聞こえない。
「バランスを保て、最悪ハーフでもいい!」
最悪??もう疲れた、どうにでもなれ。
声は無くなり、俺は暖かい風が吹く大草原で目が覚めた。体の痛みは無く気持ちいい寝起きだ。体を起こし一番に視界に入ってきたのは、斧を振りかざし全速力でこちらに向かってくる一匹のゴブリン。
そう、こうやって俺の人生は強制的にリスタートしたのだった。
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