元王子と辺境伯の関係
とりあえず、この2人もアイリと共犯と言うことなのだろう。少なくともこのスタンピードの原因を知っていることは確かなはずだ。
「む? そう言えば先行しているあの小娘はどうした?」
「はっ! そう言えば、アイリは何処だ? あの魔具を使っている以上ここを越えられないはずなのに」
あの子との繋がりは確定と。それに魔具を使っている、と言うことはアイリが魔物に襲われていなかったのは、やっぱり魔道具の効果だったのか。
「おい! ここに小娘が来ていたはずだ。そいつはどうした! もしやお前らが殺したのではあるまいな?」
「まさか、そんなことをする訳ないですよ。ここに来たのは確かですが」
殺してはいない。目の前で落ちていくのを助けなかったのは事実だけど。
ん? いや、でも、落ちた堀を作ったのは私だから、間接的に私が殺したことになるのかしら? ……いえ、そもそもあの子が魔物を引き連れてこなかったら落ちることもなかった。
だから、死因が落下によるものだとしても、その原因は魔物に襲われての落下である以上、私の所為ではないはずよね。
「居た、と言うことは、アイリはどこかに行ったと言うことか? おい! どこに行ったかを教えろ!」
この元王子って、王宮を追放されているのよね? だったら今は平民だと思うのだけれど、命令口調でないと話せないのかしら。
既にあの夜会から半年は経っているから、その期間分平民として過ごしているはずなのに、未だに王子気分が抜けていないのかしらね。
「あの子なら魔物に襲われて下に落ちましたよ」
それを聞いて、元王子は驚いたと言うか理解できないと言った表情で堀の底を覗き込んだ。
「嘘だろ? 落ちたって、魔物しか見えないじゃないか!」
「それは魔物が落ち始める前に落ちたからですよ。なので、上に魔物が載っていて見えないだけです。おそらくもう助からないと思いますが、もしかしたらまだ生きているかもしれませんね?」
「なっ!? え、ぐっ」
アイリが魔物に埋もれていると聞いて、元王子が苦虫を嚙み潰したような顔で堀の底と私を何度か見返した。
あれ? あの時は魔道具による洗脳でアイリに従っているだけだと思っていたのだけど、もしかして本当にアイリに好意でも持っていたのかしら?
「なるほど、あの小娘は失敗したと言うことか。まあ、元公爵家令嬢とは思えない程、保有魔力が少なかったから大して期待はしていなかった故、そこまで困る事ではないがな」
保有魔力が少ないから期待していなかったと言うのはどう言うことなのかしら? 別に保有魔力が多いからと言って、必ずしも優れていると言うことは無いと思うのだけど。と言うか、私が見た限り、この辺境伯とアイリの保有魔力量は殆ど同じくらいよ? その理論で行けば辺境伯もって、ん?
何か元王子と辺境伯って魔力の質が似ているわね? 魔力の質が似るって普通は親子とかの血縁関係がないと起きないのだけど、これはどういう事かしら?
まさか、元王子と辺境伯って親子関係? 確かに元王子は国王の子供にしたら魔力は少ないし、頭も悪い。いや、別に親の頭が悪いから、その子供も頭が悪いとはならないけれど。
確か辺境伯が国王付きの補佐になったのは私が生まれたくらい? だから元王子は私の1つ下で、時期的には王妃と不貞をしていても変ではないわね。真実がどうかはわからないけれど、国王があっさり元王子を追放したのもそれがあったからかも?
「一つ聞きたいのだけど、貴方たちは血縁関係だったりするのかしら?」
「…何故そのような事を聞く」
そう問いかけると辺境伯は先ほどとは異なり少し警戒しているような声でそう返してきた。あぁ、これはほぼ確定かしらね。何もなかったら警戒なんてしないだろうし。
「は? 何を言っているんだお前は」
元王子は知らないのか。まあ、半年くらい前まで国王の子供として王子をしていた訳だから知らなくてもおかしくないのだけど。それに、よく見ると確かに顔つきとか体格が、辺境伯と元王子は似ている部分が多いわね。
「いや、それよりもアイリは生きているのか?」
「それは知りませよ。確認したいのなら勝手にすればいいではないですか」
アイリが生きている可能性は限りなく低い。確かに落ちた直後だったら今よりも生きていた可能性は高かったけれど、今では多くの魔物が上に載っているから普通は死んでいると思う。
とりあえず、元王子の方は放置でもいいかしらね。こちらに攻撃する意思は低そうだし。ただ、辺境伯の方はわからない。先ほどからこちらに話しかけて状況の確認をしているけれど、それ以上の行動はしていない。もしかしたら気付かない間に攻撃の準備をしている可能性もある。
ただでさえこうしてスタンピードを起こしているのだから堀が出来て先に進めなくなった程度で諦めるとは思えないからね。
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