煮え切らないロイド
「えっと、それについての話なら俺、この場に居る必要は無いのでは?」
この個室に着いてから一言も発していなかったロイドが少し気まずそうに声を出した。
いや、まだ話し始めてそんなに時間経っていないわよね? それに話をする前に、って言っていたから、これがこの話の本題ではないでしょうに。
「ロイド。お前は何時も自身のことを軽く考え過ぎだ。過程はどうあれ家は出ているんだ、もうそんなこと風に考える必要は無いのだから、もっと前向きに考えろよ」
ああ、やっぱりロイドが常に下手に出るのって家庭環境の影響か。たぶん他の影響もあるだろうけれど、性格とか考え方が歪む原因って家庭環境による部分が大きいらしいし。それに人の話をしっかり聞かないのも、今まで自分に対して話しかけて来た人が少なかったからかもしれないわね。
「そうね。ロイドはもう少し我が儘になっていいと思う。と言うか、これは話の本題ではないわよ?」
「え? えっと?」
まさか私からもそう言われるとは思っていなかったのかロイドは少し戸惑ったような表情で私とロイドのお兄さんを見ている。
「おっと、まさかレイアさんまでそう言うことを言うとは」
「最近はそうでもなかったのだけどね。最初の頃は割と酷かった」
本当に面ど…じゃなくて、もどかしかった。まあ、私が強引に一緒に居た所為もあるのだけど、魔法を教え始めて1週間くらいは何事に対しても確認を取りに来るから事の進みが遅かったのよね。最近はそれが減ったから滞りなく進めていたのだけど。
「はは、なるほど。想像していたよりも真面目に付き合っているようだね」
「え? いや、あの兄さん? それはどう言う…」
付き合っている? 男女の……、いえ魔法の練習には真面目に付き合っている。うん。たぶんそう言うこと。そうよね? 男女のあれこれ的な意味ではない……はず。…うん。
駄目よ。深く考えない。これ以上考えると、顔が余計に熱くなるわ。
あれ? でも、ロイドのお兄さんは私がロイドに魔法を教えていることを知っているのかしら? もし、知らないのならやっぱりそう言う……こと?
「ははは。いや、2人とも顔を赤くして初心だなぁ」
「兄さん!?」
………顔を隠したい。絶対に今、顔真っ赤になっているわ。
「いやぁ、若いねぇ」
「兄さん! 俺は…別に、レイアと付き合っている訳じゃ」
あ、恥ずかしさが薄れたわ。ロイドから直接そう言われると悲しいけれど、今は顔の赤みが取れただろうから良い……いえ、やっぱり良くないわ。
「ロイド、お前。もしかしていつもそんなことを言っている訳ではないよな」
「えっと…」
今まで揶揄っていて楽しそうな表情だったロイドのお兄さんの顔が一気に真顔になった。それを見たロイドはさすがに今のやり取りが良くなかったことに気付き、少し苦い表情になった。
「ロイド、お前はもう少し人の気持ちを考えろ。もし、ただ恥ずかしかったからそう言っただけなら、もう少し言葉は選べ。それと、もう少し人を信頼しろ。それとも、レイアさんは信頼に値しない人なのか?」
「いや、信頼は出来る」
「では、何でさっきは否定した?」
「実際に付き合っている訳ではないのから」
「そうなのか?」
「……ええ、そうね。告白しても、毎回はぐらかされているから」
私は何度もロイドに告白している。ただ、毎回冗談として受け流されているのから、その実は結んでいない。
「ロイド、お前ってやつは」
ロイドのお兄さんは完全に呆れた表情でロイドを見ている。さすがにロイドも悪いと思っているのか、申し訳なさそうな表情を私に向けている。
「いや、だってレイアは王子と婚約できる程保有魔力が多い人で、俺よりも大分若いだろう! だから俺だと全然釣り合っていないんだ」
ああ、いつもそんなことを思っていたの。告白した後に、申し訳なさそうな顔をしてこっちを見ていたのが気になっていたのだけど、そう言うことだったのね。
ん? いや待って。私が王子と婚約していたのはさっき知ったことよね? と言うことは、あくまで歳を気にしていただけ?
「若いって、お前はまだ23だろう。レイアさんは……何歳だ?」
「16よ。これくらいの差なら問題ないと思うのだけど」
「そうだな。そんなに離れていない、というか、貴族ならこのくらいの歳の差での結婚は良くあることだ。気にするほどじゃないだろうよ」
「そうだけどさ。…いや、俺はもう貴族じゃないから」
「お前はまだ貴族だぞ? あの時、家を追い出されたが、別に絶縁したわけでもないしな」
「え? 俺は絶縁したって聞いているのだけど?」
「それは父上、前当主が言っただけで正式にはなっていない。と言うか現当主が裏で阻止した」
「は?」
ロイドが家を追い出されているのに兄弟仲が良いのは何でなのか、気になっていたのだけれどそう言うことか。
まあ、古い考えを持った親と新しい考えの中で育った子で方針が違ったと言うことなのかしらね。
「だったら問題はないわね、ロイド? 魔力の問題も無くなっているし、何も躊躇うことは無いと思うのだけど」
今更だけど、まさか、単に私が嫌いだから流していただけではないわよね?
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