回復魔法の副作用
「え? なっ何でっ。…うぎっ!!」
アイリの腕が私の頭を飛び越えて少し離れた位置に落ちた。
うわっ、血が飛んできたんだけど!
私は直ぐに魔力を使い血が掛からない様にした。あ、ついでにアイリの腕も回収しておこう。後で拾いに行くのも面倒だし、会場もまだ滴っている血で汚れるしね。
「お前は本当に公爵家の者か? このような場での他者に影響の出る魔法の使用は禁止されているはずだ。そんなことも知らないのか?」
「うぐっ、魔法は使っていっません」
アイリが切られた腕の痛みに耐えながら国王に反論した。腕切られた痛みに耐えるなんてすごいわねぇ、と思ったけど、どうやら魔法で止血した上で痛みを和らげているみたいね。
「何を言っている? 今、左手に嵌めた指輪から魔法を発動していたではないか。それとも魔道具だから魔法ではないとでも言い張るつもりか? どちらにせよ、魔道具であろうと相手に干渉する魔法は禁止されている。使ったのは凡そ魅了系の魔法だろうが、元よりそれは国内での使用が禁止されているのもだ」
国王は痛みで蹲っているアイリを侮蔑のまなざしで見下ろしている。
まあ、ここまでルールを無視し続けていれば誰だって同じような視線を向けるだろうけどね。
「国王。いくら禁止事項を無視したからと言っていきなり腕を切り落とすのは止めてください。会場が汚れるじゃないですか。それに飛び散った血が掛かりそうでした」
「そんなこと気にすることではないわ! しかし、レイアお前も一応公爵家の一員だろう。何故こんな馬鹿が公爵家に居るのだ」
「私にそんなことを言われてもわかりません。と言いたいところですが、この子が特別馬鹿と言うのもありますけれど、元より公爵家の考え方がバレなければ問題ないと言う感じなので。まあ、これは多くの貴族が同じように考えているようですけれどね」
そう言って私が周りを見回すと思い当たる節があるのか、拙いと思っているのか、険しい表情をしている貴族と顔を背けている貴族がちらほらと見られた。
「なるほどな」
国王はあまりこのような場所に来ることは無いので、今までそんなことがあるとは知らなかったようだ。
「っと、その前にこの子の腕を治しておきましょう。いくら何でもこのまま放っておくと失血死しかねませんし、規則違反をしたからと言って国王だとしても直ぐに殺していいわけではありませんよ」
「…何をっ!?」
痛みをこらえていたアイリに近付いて、先ほど拾って置いた腕を傷口と言うか断面同士をくっ付けた。そして、その状態で回復魔法をかける。
「イギャアアアアアアッ!!」
回復魔法をかけ始めるとアイリが痛みのあまり悲鳴を上げる。まあ、魔法で無理やり腕をくっ付けるのって急速に治せる分、その副作用で激痛が走るのよね。
アイリは激痛のあまり体を逃がそうと暴れているけれど、それは無視し体を押さえ付けて回復魔法をかけ続ける。
そろそろくっ付いたかしら。もう悲鳴は出ていないし…ん? アイリ気絶しているわね。とりあえず確認して…うん、ちゃんとくっ付いているわね。って、ちょっと待って。漏らしているじゃないの。
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