春、クラス替え

今日も晴天なり

ヤツとはクラスも席も同じである

去年もそうであったからに

同等の成績なんだろう

春の知らせを配られて

「どーぞ」「ありがと」

などと、また繰り返している

もう腐れ縁みたいなもので

ホームルームにて

「一緒に帰んね?」と言われた時

「は?」とケンカを売った

ヤツとはジャンルが違う

陽キャと陰キャぐらいの差があって

どんなに春先で学年が変わって

クラスが変わって席が替わって

それが変わらなかったからって

これはないでしょう

「方向さあ~同じなんだよ~」

「知らないよ」

「駅前のさ~クレープ食べたくね?」

「食べたくない」

問答に立ち上がって鞄を

バン、と机を叩かれた

鞄の紐中を通った腕

これじゃあ鞄を持ち上げられない

「食べてこ~ぜ~な~」

無駄に長ったらしい言い方は好きじゃない

「なんだよ、そういうのは好きな子と行けよ」

「……そんなこと言っちゃう?」

「は?」

地雷じゃないといいが真面目になったヤツの顔は

イケメンだったので迫力が違う

「お友達宣言だって~」

「今更すぎる」

「おなクラスなんて運命だって~」

「運命ってのは互いに喜ぶのが運命ってんじゃないか」

「いいこと言う~」

すぐに、にこやかな顔に変わったヤツは

「俺と一緒じゃ、やだ~?」

まず整理しよう

駅前を知っているということは

ヤツも電車かバスを使っている可能性が高い

と、いうことはヤツはついてくる

こんなの、のらりくらり

負けの文字が頭に浮かんで肩を落とす

「じゃあ、お友達宣言~俺の名前はねえ~」

心底知らない情報だったが、ヤツが楽しそうで

毒気を抜かれたオレは付き合う羽目になったっていう

くだらない春先のことだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る