満開

通学路と校庭にある桜が満開を迎えた

迎えたけどワタシたちには関係ない

関係ないのは何も変わらないから

変わらないのはワタシたちの保健室

保健室はワタシたちのお城

城と言っても、ただただ三人が好きなことをやる

好きなことは描くこと読むこと書くこと

三つの項目になる

この項目に喋るはない

喋ることなんてないもない

なにもないのは何も重なっていないからで

重ならない、ワタシたちは桜の満開も忘れてる

忘れてしまうのは……

何も、何も変わらない

でも変わったのは窓を開けて暖かい風を感じること

感じると何をやっているんだろう、て思う

読むのをやめて外を見る

見ながら「あたたかいね」とぽつり言った

ここからは桜が見えない

見えないのは保健室が学校の内側にあるからだ

ワタシのぽつりに答えは返ってこなかった

いつまで閉じこもろうか

いつまで『感じて』いようか

もうすぐ学年があがる

二人は必死に『かいて』いた

ワタシは文庫本をぺらぺらとめくりながら

満開の限界を感じていた

だって本は終わりがある

終わりがあるならワタシも終わる

ワタシは、もう、限界

満開になることはない

ワタシは立ち上がって保健室を跡にした

跡は、ずっと残る

二人が、ずっと覚えてる

ワタシは咲きにいく

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