繋がる、糸

小さい頃から憧れた

運命の赤い糸

でも、歳を重ねるうちに

そんなことないや

と 大人ぶった

好きだ 好きだ 好きだと

言われても そう

と しか返せない

糸が繋がっていない

イマイチぱっとしなくて

いつの間にやら

高嶺の花 とか

くだらない名前がついて

どんどん糸が千切れてく

幻想さえ見られない

恋の夢さえ抱けない

愛はどこかに置いてきた


ある日のこと

放課後、もう帰らないといけない時間

図書室が騒がしかった

そこには一部の人間と決別した委員長

と よく廊下でチャラチャラしてるヤツ

委員長は笑いながら仕事をしつつ聞き流し

チャラはスルスルとおしゃべりして


そこに糸が見えた

狡い、そう言いたくなる糸

絡まることなく二人を繋いだ

細やかな糸


私は逃げ出した

あんなに綺麗な関係を知らないから

私は逃げた

うらやましいと心から思ったこと


棟を飛び越えて行きもしない場所に出た

帰るには戻らないと駄目だ

ぐったりと疲れてうずくまる

高嶺の花とかカマトトぶってるとか

そんなの知らないよ と修正液さえない


「だいじょうぶ?」


見上げたら人がいた

胸元に本を抱き、首を傾げ

一瞬、私のこと知らないの と

言いかけたけど


「だいじょうぶ、じゃないかも」

「保健室、いく?」

首を振る

そこまで酷くない、はず

うらやましくなんてない

「じゃ、じゃあ……」

人間が言う、そして隣に座った

私は驚いた 私を知らないの?

「少し気分がよくなったら、

 一緒に下駄箱いこ?」


「は?」


私を知らないカッコ仮は

優しく笑った

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