能力の使い道
第5話 能力の差違
王都を出発した私たちは、馬車にて西へと向かうため、乗り込もうとしている最中でした。男性陣が進行方向に向かって左側に前から勇者さん、アルドさん。私を含む女性陣は向かい合うようにして前からレミスさん、私、レオ姉という順番で座ります。それからほどなくして馬車はガタガタと微かな振動と共に走り出しました。
いの一番に口を開いたのはレオ姉です。その口から勢いよく飛び出してきた内容は、先程私をからかうかのように現れては消えたヴォックスさんについてです。
「にしても、さっきの人は何だったの!?エレナが初めから失敗する前提で語ってたけど、あと少しで灰にしてた所だわ……!」
「落ち着いてよレオ姉……。あの人は
「つまり、あいつを殺ればエレナは晴れてそこに入れるのね!?ちょっと行ってくるわ!」
「ちょっと待って!本当に落ち着いてレオ姉!そんなことしたらギルド入会どころか投獄モノだよ!」
疾風のごとく元来た道を駆けようとするレオ姉を抱きつくようにして止めると、アルドさんは苦笑いしながら私たちに言葉を投げ掛けます。
「国王の推薦でお会いした事もあるでしょうに……。覚えてらっしゃらないのですかな?」
その問いかけに、レオ姉は私を腰からぶら下げながら顔だけアルドさんに向けて答えます。
「当たり前じゃない。私の脳細胞の全てはエレナの可愛い姿を記録する為にあるのよ。あんなむさ苦しい男を記憶するなんて脳細胞の無駄だわ」
「……呆れて物も言えない……」
レミスさんの苦言を涼しい顔をして受け流すと、レオ姉は考え直したのか再び座ってあることを提案します。
「あいつとエレナの能力が同じって事は二人の差違から活路が見い出せそうね。エレナ、カードの内容は覚えてる?」
「やっとレオーネ君が真面目モードになってくれて嬉しいよ僕は……」
「まったくですな……」
やれやれといった表情で語る勇者さん達を尻目に、私はレオ姉へヴォックスさんのスキルカードの内容を伝えました。
「……明確に異なっている部分として、『発動時間』『重量の変化』あとは『対象に取れるものの違い』といったところかしら」
顎に手を当てて考え込み、時おり呟くようにして考えを吐き出すレオ姉。私も改めて能力の違いを振り返る事にしました。
まず『発動時間』です。これは私が5秒に対し向こうは永続、完全に上位互換です。次に『重量の変化』私は拡縮させても重量はそのまま、向こうは比例して重量が変化します。そのため、私には大量に物を運ぶということができません。重量が変わらないのですから。最後に、『能力の対象』ですが、違いがよく分かりません。
ヴォックスさんのカードには、『全ての物体を対象に出来る』と書いてありましたが、私は『万象』とだけしか書いていませんでした。私はその意味もよく分からず手当たり次第に色々な物に能力を試し、その全てに発動させる事が出来た為、『万象』とは『全ての物体』と認識していたのです。ですが、彼のカードにはわかりやすくそう書いてあったのです。
では、私のカードにかかれている万象とは何を指すのでしょうか。スキルをもらった14歳の誕生日、頭を悩ませながら辞書のページを手繰った思い出が甦ります。何せ希少な能力だった為、周囲には同じ境遇の人が居なかったので聞くに聞けなかったのです。悩んだあの時の私もレオ姉に意見を求めたのですが『判断材料が少なすぎる』とついにその時は答えが出ませんでした。ですが、今日は違うようです。頼れる幼馴染みは顎に当てていた手を放し、推測ではありますが自分なりの答えを導き出しました。
「……もしかして、の話だけれども。エレナのスキルは物体以外も対象にとれるんじゃないかしら。もし対象が物体のみであれば、あいつと同じ文章で記載されるはずなのに、実際はそうではない二文字で記されているのがその理由よ」
「でもレオ姉、物体以外のものって一体なに?火とかの現象?」
「それもありますが、私としては空間もそうではないかと思いますぞ」
アルドさんに答えを言われたのが悔しいのか、少し不機嫌そうにレオ姉は同意します。
「……私がエレナに教えて『レオ姉素敵!』ってなるのを想定していたのに……まぁいいわ。肝要なのはそこ、空間が対象に入っているかどうかよ。それをいじる事ができれば、持続時間が5秒しかなくても十分に強力な能力と言えるわ」
「ものは試しだ。早速検証しようじゃないか」
勇者さんの一言で、私の能力の使い道を探る検証が始まりました。私はこのとき、自身の能力があれほどまでに強力だったとは全くもって思っていませんでした。
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