第4話 魔法抵抗
〜アレス視点〜
急に奇声を上げながら駆け降りてくる何かに完全に意表を突かれた。何だ……あれ……は? 人にしては体のサイズが……おかしい? さっき倒した熊の子供……いや違う。そんな事を考えてる間に直ぐ目の前まで来ている! 速い!
「なっ!?なんだ?アレス離れろ!
カイル副団長がヤツに向けて魔法を放つ!状況判断が速い、ちょっと女性にダラシがないが副団長を任される事はある。すぐに拘束の魔法が発動……しない!?
(まさか
背中に冷たい汗が流れる。カイル副団長よりも魔力が多いだって?僕に対処出来るわけが無い!
ヤツは叫び声を上げながら拳を振るおうとしてきた、きっとあの拳には何らかの魔術が付与されているはずだ!僕は恐怖のあまりに事もあろうか目を瞑ってしまった。
「・・・・・・?」
いつまで経っても来ない衝撃に恐る恐る目を開けると、丁度何かがバランスを崩し転がりながら先程ウルトさんが掘ったばかりの穴へと落ちて行く所だった。
◇
「アレス大丈夫だった?」
クリミアが心配そうにアレスを伺う。アレスは動揺する心を落ち着ける為深呼吸をしてから言った。
「はい、僕は大丈夫です! それよりアレはどうなりましたか?」
穴の中には人の形した物がモゾモゾと動いていた。
「・・・・・・・あれ人だと思う?」
クリミアが
「人っぽいが……筋肉が付きすぎだろう、俺は昔、トレイン先生の研究書でアレに似たのを見た事がある。」
「えっ? カイルさんも本読むんですね、意外です」
「ばーか、俺にだって学生時代はあったんだ。トレイン先生の授業は厳しかったからな『レポート遅れたら実験に付き合ってもらうめうよ』とか言って怪しげな人体実験に何人が犠牲に……いやその話はしたくない。えーと、確か・・・『脱毛症の猿』だ」
「・・・・・脱毛症の猿…ですか?」
「あぁ、見ろよあの筋肉! 野生動物ってやつは毛皮をひん剥けば大体皆んなあんなごっつい体してるんだ。服なんか着ているが・・・・・服着てるな? やっぱ人か?」
「……殺してしまえば……問題ない」
「ウルト、お前は早く帰りたいだけだろ」
「まぁ待て、人かどうかは鑑定すれば判る事だ。クリミアはそのまま
「¢£%#&□△◆■!?」
アレが急に何かを話し出した……が、サッパリ理解出来ない。言語っぽいが聞いた事が無い。そもそもこの『オーニール大陸』は共通語なのだ、どの種族も同じ言語で話す事が出来る。遥昔には多様な言語が飛び交っていたと聞いた事はあるが……。
様子を見ているとアレは急に歯を剥き出し両手を上に伸ばした! 不味い、何らかの魔法を発動する気だ! 不審な動向を察知したクリミアが直ぐさま
「う、動くな!!」
クリミアは次弾を精製しながら叫ぶ。
「○□◇#!○▼※△☆▲!※◎★●!」
「……何を言っている?」
「○※?・・・・・・△、×■⭐︎?」
本当に言葉が通じない様だ、お互いにどうしたら良いかわからず沈黙の時間が過ぎてゆく。・・・1、2分の静寂の中、突然アレが大声で笑い出し何かを唱え出した!
「!?ッ」
全員に緊張が走る!
アレは両手をゆっくり合わせて斜め前方に腕を伸ばした、そうしてこちらを見て……笑った?
両手を合わせ地面に向けるのは「貴方に魔法を発動しませんよ」というジェスチャーだ、言葉は話せないが意思疎通は可能なのか?
「取り敢えず、敵意は無い様だが・・・油断するなよ。」
ビエル団長はそう言って右手を対象に向け鑑定魔法を使う。
「
だが魔法は発動前に消えてしまった。
「なっ!?
「団長、先程カイル副団長の魔法も
「全く、俺の魔法を
「えぇ!? はぁ、わかりましたよ、魔法が効かないなら仕方無いか。全く面倒な……」
「カイル……文句言わないで……働け」
「ウルト……お前にだけは言われたくないわッ!」
カイルはブツブツ文句を言いながらロープを取りに行った。
「ウルトもちゃんと周りを警戒してよね!アレス、
「何度か試してはいるんですが……無理そうです。団長の魔法を
程なくロープを持ったカイルが戻ってきた。穴に向かって輪にしたロープを何度も投げ入れるが一向に掛からない。
「カイル……ヘタクソ……」
ウルトの言葉にムッとしたカイルはムキになって何度もロープを放り投げる。
「いつもは魔法で拘束してんだ、ロープの扱いなんて上手い訳ないだろッ! チクショウ」
何度も失敗するカイルに穴の中に居るアレも「いい加減にしてくれ」と言わんばかりの顔をして最終的には自らロープを体に巻き付けていた。
カイルは複雑な顔をしながらもロープをひきあげるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます