149話 予想だにしない形となってしまった依頼

(この金髪の方、今までは静観していたにも拘わらずどうしてこんな急に迫って…)


「どうなのですか、はっきり答えてください!」


「は、はい!間違いありません」


「姉上、これはもしかして…」


「ええ、どうやらそのようですわね」


 何だ、この二人の感じ。今の話を聞いてから妙な緊張感があるように見えるが…


「エルノア、申し訳ありませんが予定変更ですわ」


「ええ、このような事態では致し方ありません」


 こいつらのこの言い回しからするともしかして…


「同士よ、スマンのだが私と姉上は急用ができてしまったので一緒には行けなくなってしまった」


「ああ、そうか」


 さっきまでのウキウキピクニック気分のようにはしゃいでいたのに。そんなにこいつらにとって大事な用ということか。


「お待ちください我が姫よ。どうか我々も同行させて頂きたい!」


「初心者の冒険者だらけの街とは言え、お二人のように容姿に秀でた方々が女子おなごだけで行動しては危のうございます。なのでどうか我々をお供に!」


「えっ?いや、しかし…」


「決して、決してお邪魔など致しませんので。どうかぁ!!」


「………仕方ありませんね。けれど付いてこれなければ置いていきますからね」


 エルノアとクラリスは何やら重要そうな感じだがこの馬鹿共はただ付いていきたいだけだろう…ん?てことは向かうのって俺一人?冗談じゃないぞ!只でさえ戦力不足が浮き彫りとなっているクエストなのに単独決行とか、もうクエストじゃなくて特攻みたいなもんじゃねーか!?


 いや待てよ、このネジ外れセット×2が同行しない。つまり依頼に直接携わるのが俺一人という事はクエストへ行く行かないの判断も俺しだいって事か?あれ、いつの間にか思いもらぬ展開に!


「そ、そうかそうか。お前らに急用ができてしまったのなら仕方ないな。しかし困ったな~。そうなるとパーティーは俺一人となってしまう。こうなると流石に依頼は断りざる得なくなってしまったな。いや~、非常に残念だな」


 大河が心にもない事を口走っているときょとんとした表情で不思議そうにエルノアがこちらを見つめて質問を飛ばしてきた。


「何故わざわざ断る必要があるのだ?」


「えっ?いや、何故って言われてもお前ら四人が抜けるとなると俺一人になってしまうわけで、流石にそんなパーティー状態でクエストをこなすのは不可能に近いというか…」


「ふっふっふ。相変わらず謙遜を」


「いや、断じて謙遜とかではないのだが」


 元々5人でも結構無理があると思っていたのに俺一人での単独ミッションとか無理ゲーもいいとこだしな。


「少々難関かもしれんがの依頼ならば同士一人でもなんの問題も無い!頑張って行って来てくれ!」


 おい、何を言い出すんだこのポンコツ王女様は。問題しかないんだが?俺を窮地に追い込もうと悪意的に意図があってわざと言ってるわけじゃないだろうな?


「そうだな。我々はお嬢様方の護衛で忙しいのだ。一人で頼むぞ」


「いざという時の為にちゃんと墓くらいは用意しておいてやるから安心して逝って来て大丈夫だ」


 このクソヘア~ズからはヒシヒシと悪意を感じるな。


「これだけ仲間の方々から信頼されているのであれば心配は無用そうですね」


(決してそんな事は無いのですが。寧ろ頭を抱えるレベルで心配する要素しか見当たりませんが?)


「そう思うには些か早計なのではないでしょうか?」


「そんなに謙遜されなくても大丈夫ですよ」


 そんな殊勝なモノでは断じてないのですが…


「で、ですがやっぱりここは…」


「失礼ながら私もタイガさんに対して半信半疑な部分がありましたが先程の助言で吹っ切れました。私もお二人を信じる事にします!」


 うがあぁぁ――――!!さっきまで主張が薄く流されやすかった受付さんは何処へ行ったんだ!?多少ながら強引に意見を通してきたんですけど!?くそっ、まさか先程の行いがこうも仇となるとは。これも一種の因果応報だというのか!?


 タイガが自身の行動と運命を呪っているとクラリスが割って入った。


「しかし確かにそこのタイガさん一人に任せるのは少々不安ですね」


 な、何だと!あのクラリスが俺のフォローを…


「タイガさんはかなりアレ、な上に所々抜けていて危なっかしさが見受けられますからね」


 フォ、フォロー…だよな?かなり棘のある内容だが俺の身を案じたクラリスなりの俺へのフォロー…


「それにここぞという時にへたれやがりますからね。これまで何度脱走しようとして来た事か。今回もきちんとクエストに行くか事態疑問がぬぐえませんわ」


 フォロー、じゃねーな。ただの悪口じゃねーか!しかもへたれ云々ってお前らの奇行に対してであってクエストには全然関係無い事だろうが!


「なので一つ提案ですがそこのフードの方。ナイトメアさん、でしたか?その方に同行し、補佐する形でクエストを実行しては如何でしょうか」


 おい、この女は突然何を言っているんだ?未知だらけのクエストに同行?誰と?あの黒ずくめと?………うぅ。


 タイガは未だに正体不明のナイトメアと行動を共にする光景を想像するとあまりの先の見えなさと言いようのない恐怖に一瞬にして自身の頭に頭痛に似た痛みが走るのを感じた。


「なるほど、それはとても良い案ですね!」


 クラリスの提案に対して強く賛同するミルナ。しかし当然大河の気持ちは彼女とは正反対のところにある。


(良くない!何一つ良くない!)


「戦力的に不安を感じているタイガさんもそれなら安心なのではないですか?」


 物理的な不安は解消される代わりに精神的な不安が沸き上がって来ると思われるのですが!?


「それではナイトメアさん、タイガさん。お二人の活躍をお待ちしておりますね」


 反対する間も無く流れ的に決定事項となってしまった強制ミッション二人のでクエスト。大河の気持ちなど知る由もないミルナは満面の笑みを浮かべ、そんな彼女に大河は苦笑いを浮かべるだけで精一杯だった。




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