72話 ユニークスキル
「次は
(え?なんですかその間は。もしかしてまたくだらない系のやつですか?)
「大河さん、スキルのほうの確認をしましょう」
マイナのその言葉と視線には同情やら哀れみといった感情の類が秘められていた。
「え、あの…」
マイナは大河の隣のエルドに写しを渡して
「大河殿も色々と大変だったんですな」
「………」
一体何が理由でこのような視線を送られているのかはわからなかったが、好意的な理由でない事は確かであった。
そして気にはなるものの一種の警告のような感じで留めてくれたマイナの気遣いを無下にしてまでわざわざ精神が半分以上消耗している今日に地雷を踏みに行く必要ないと判断した大河は次のスキルの項目に目を移した。
「次はスキルですね」
「あの…できればユニークスキルの方を先に確認させてもらっていいですかね」
(スキルの方は一定の行動や条件をクリアして会得するものだろうし、この世界に来て大して経っていない俺がそうそう所持してることはないだろう。それにあのクソ神から渡された
「ユニークスキル…ですか?聞いた事のないスキルですね。タイガさんの住んでいた地域ではエクストラスキルをそう言う風習でもあったんですか?」
「…そうではなく知り合いが授けた…というよりは押し付けた特別なスキルらしいです」
「そうなんですか。あ、確かにスキルの下の欄にユニークスキルという初めて見る項目がありますね」
「本当ですね。これまた新発見ですな」
「もしかしたらこのスキルエクストラスキルより更に上位のスキルの可能性があるかもしれませんね」
「確かに」
「…因みにそのスキルを授けたのは駆け出し前の俺をこんな
「「………」」
タイガの言葉を聞いた直後、未知のスキルに対して興味津々といった感じの2人だったが硬直して動かなくなってしまった。
「ああ…ええ。まあ、どのような効果なのかは確認してみなければわかりませんし、もしかしたらレアスキルの可能性もありますし」
「そうですな。案外掘り出し物の類かもしれませんしな」
もしかしたらや案外、などという言葉を表情を曇らせながら使ってしまっている辺り
希望的観測を口にしている2人もレアスキルの可能性がかなり低いだろうと思っているのが2人の態度の変化からヒシヒシと感じ取れた。
「えっとスキル名は…【ゆびをふる】。当然ながら初めて聞くスキルです。効果はえっと…『指を振って願いを唱えるともしかしたら叶うかも?』。なんて言いますか面白そうなスキルですね」
苦笑いをしながら向けられるその表情から『やっぱり期待外れのスキルでしたね』といった心の声が聞こえてくるようだった。
「汎用性は皆無な気がしますけどね」
「でもまだあるみたいですね」
(え?他にもまだあるのか。まさかこれ以上くだらないものじゃあるまいな?)
____________________
………
【一応の保険】
死亡のダメージを受けたとき一度だけ瀕死状態で留める事が出来る。この効果は一日一度しか適用されない
*このスキルを所持している間、食器が割れやすくなる
【大いなる代償】
【ゆびをふる】を使用する毎に運気が減少していく。【ゆびをふる】成功時に減少した運気がランダムで回復する
*このスキルを所持している間、転ぶ確率が上がる
………
____________________
(正直1つ目のスキルに関してはもう少しまともなスキル名を付けられなかったのかと問いたいが、それでもゆびをふるに比べてスキルがちゃんとした役割のもので恐らくあのクソ神が作ったとは思えないくらいの性能だな。まあスキル名の通り俺が死んだら自分が困るから文字通りの保険として付けたのだろうけど)
大河に対してというよりは
(転生直後に巨大ハンマーみたいなので肋骨ごっそり持っていかれたり、隕石落下の衝撃で全身ボロボロの瀕死体みたいになっていたにも関わらずギリギリ生存出来ていた理由が転生したことによる謎パワーみたいなのじゃないのがよく分かったよ)
前世なら間違いなく死んでいるであろう激痛にも関わらず三途の川手前状態とはいえ生存し続けていた事によって『もしかしたら俺の転生の肉体は正常体ではなく
「【一応の保険】。スキル名は少々残念な感じがありますが効果はかなり貴重なスキルですね。特に冒険者の方には」
「俺は運気が異常レベルで運気が低いので尚更重要になってきそうですね」
(2つ目は…最早スキルというより
1つ目のスキルとのあまりの落差に思わず溜息を吐く。
(冒険者なんてただでさ危険が付きまとう職業だと思うのだがその辺をちゃんとりかしているのだろうかあのクソ神は?俺に死なれて困ると言うのであればこんな死亡フラグが簡単に建築されてしまいそうスキルは極力避けるべきだと思うのだがな。にしても2つのスキルに付随されているというか制約みたいな感じで付いているこの地味な嫌がらせみたいな効果は必要なのか?まあ、どうしようもないような害悪効果を付けられるよりはずっといいが)
運気減少スキルに関しても前もって運気の低さを把握していた事によって『またいらんスキルを付けてくれたもんだな』と思っていたが先に付けられていた生存系スキルが冒険前の大河でも結構なレアスキルである事が分かっていたため、2つ目のスキルに対しての怒りが1つ目のスキルの恩恵具合によって気持ちが相殺されていた。
「………」
「どうかされましたか?」
「………」
「あの…」
「………」
尋ねても応答せず反応を示さないマイナの態度を不審に思い、自分の指でさら下の方へとスクロールしていった。
ここまではステータスの確認という序盤ながらも冒険者っぽい前世ではなかったイベントになんだかんだで興味深々に目を通せていた。しかし次のスキルに目を通し始めてから笑えない効果のスキルが並んでいた。
____________________
【ゆびをふる修得おめでとう】
盾の防御力が半分になる
*このスキルを所持している間、剣で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる1回目おめでとう】
斧で与えるダメージは半分になる
*このスキルを所持している間、槍で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる5回目おめでとう】
剣の攻撃力が半分になる
*このスキルを所持している間、斧で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる10回目おめでとう】
風魔法で弓で与えるダメージは半分になる
*このスキルを所持している間、弓で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる25回目おめでとう】
魔道具を装備している時、魔力の合計値が半分になる
*このスキルを所持している間、銃で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる50回目おめでとう】
槍で与えるダメージは半分になる
*このスキルを所持している間、鞭で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる75回目おめでとう】
鎧の防御力が半分になる
*このスキルを所持している間、鈍器で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる100回目おめでとう】
弓で与えるダメージは半分になる
*このスキルを所持している間、水属性魔法で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる125回目おめでとう】
特になし
*このスキルを所持している間、光属性魔法で与えるダメージは0になる
【ゆびをふる150回目おめでとう】
特になし
*このスキルを所持している間、非属性魔法で与えるダメージは0になる
…………
____________________
制約に次ぐ制約、縛りに次ぐ縛り。スキル名はおめでとうと祝福の台詞を用いているくせにスキルの内容にまるで反映されていないどころかこれほど酷い
____________________
………
【ゆびをふるあ10000回目おめでとう】
特に意味はなし
*このスキルを所持している間、武器を使用することができない
【ゆびをふる10000回目おめでとう2】
特に意味はなし
*このスキルを所持している間、防具を装備することができない
【ゆびをふる10000回目おめでとう3】
特に意味はなし
*このスキルを所持している間、魔法を発動することができない
【ゆびをふる10000回目おめでとう4】
特に意味はなし
*このスキルを所持している間、魔道具を所持することができない
____________________
(こっ…あ、本当に、ど…つ、ば)
あまりの縛りスキルの多さに『どこまであるんだよ』とすっ飛ばして下へ下へとスライドし続けた。そして最後に記載されていたスキルがまるで冒険者家業禁止とでも言わんばかりの駄目押しスキルのオンパレードだった事に言いたいことは止めどなく怒りと共に溢れてくるのに問題視する部分のあまりの多さに言葉を上手く発言でぎず硬直していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます