37話 ミジンコ以下の存在



 クラリスは思い出話を語り終わると自信満々の表情で大河に確認してきた。


「?」


「何ですかその反応は?まるで『何言ってんだこの人?』みたいな表情をされていると理解力がお猿さんと同レベルの無能野郎と勘違いしてしまいそうになりますよ」


「いや、勘違いとかじゃなくまさにお前が何言ってるのか、俺に何を分かってもらってると勘違いしてるのかがわからないんだが?」


(あの話で分かったことなんてこの姉妹が妹の方の誕生日で階段からの転落という、更に恐らくそれがきっかけで特殊性癖に目覚めるという特大の不幸スーパーアンラッキーが起こった事しか分からなかったんだが?それと姉の方クラリスが重度のシスコンだという事ぐらいか)


「何…ですって!?」


(何であの何を伝えたいのかよくわからん話でそこまで驚けるのだろうか?それともあの話で俺の心に響かせる何かを伝えきれたと誤認してしまっているのだろうか?)


「あれだけの言葉を重ねたのに理解できていないだなんて…そんな馬鹿な。貴方の知能指数はだというの?」


「さっきは理解できていない場合はって言ってなかったか?」


(どうしよう…コイツらのおぞましい会話に慣れてきてしまったからか、さらっと罵倒されてるのに特に怒ることなく普通に対応できてしまっている自分が悲しい)


「それは貴方が才能のかけらも感じさせない空気を読まないジョークとして発したものだと思っていたのでお猿さん以下の評価でしたが…」


「色々な意味で酷いな」


「ええ、アレほど酷いジョークは生まれて初めてでよくあの時追及しなかった自分を褒め称えたい程です」


「ジョークじゃないし、酷いのはそっちの事じゃねーよ!」


「腐ったミカンより酷かったからなアレ。姉上が流してなかっら私も留まってなかっただろうし」


「だからジョークじゃねーっていてんだろうが!話聞けよ」


「ですがまさか感性のひん曲がった変態さん止まりでは留まらず、知能レベルがミジンコさんと同レベルだなんて。いえ、流石にそれはミジンコさんに失礼ですね」


「いや、明らかにミジンコよりも俺に対して失礼だろう?」


「いいえ、貴方の価値はミジンコさんより劣っているので間違ってはいません」


(これ流石に俺怒っていい内容だよね)


「というか知能指数が劣ってるって話だったのに何で価値の方も劣ってるって話になるんだよ?」


「わからないのですか?」


「わからないな」


(今のに限らずお前の口にしている言葉の大半が)


「はあ~またも知識不足の貴方に教授しなければならないみたいですね。いいですかミジンコさんは雌であれば。つまり素晴らしい生命体であり、劣等種なのです」


(この話だと端的に言って単独で子供作れる雌のミジンコだから俺より上って事になるけどそれだとミジンコが雄だったらどう言い訳するんですかね?しかも俺だけじゃなくサラッと全世界の男性を罵倒した事に気づいているのだろうか?それにそもそも…)


「その理屈で言えばお前の言う劣等種ってお前らも含まれてるからな?」


「私達がミジンコ以下だってのか!」


「私とエルノアがあんなゴミクズよりも下だなんて…酷い、酷いわ!」


 あっけらかんと言い返した大河の言葉に納得いかないエルノアは怒り、クラリスはまたも手で顔を覆い隠し悲しんだように立ち振る舞っていた。


「何でさっき人の事をそのゴミクズより劣ってるとか平気な顔で言ってたのに自分が言われ返されてこんなに怒ったり悲しんだり出来るんですかね?」


「それはあくまで貴方という人類にカウントできないレベルの人の姿を形どった何かと比べてという意味です。私達をそんな低すぎる低次元の生物を比べるなんて許されることではありませんよ」


「本当に恐ろしく低いなお前らの俺に対する評価は!」


(そもそも人としてすらカウントされてないのかよ!)


「大体さっきミジンコが素晴らしい生命だとか言ってのは何処の誰だよ!」


「それとこれとは話が別です」


「随分とご都合主義の主張だな!」


「少なくとも貴方と比べればどんな生物でも素晴らしいと思ってしまうのは仕方のないことだとは思いませんか?」


「思わねーよ!流石にそこまで自分を卑下しねーよ」


「自分を過大評価しすぎるとろくな目に遭いませんよ?」


「そーだ、そーだ。ナルシスは傍から見てたらキモイだけだぞ。自分がい痛い奴だってちゃんと自覚しろ~」


(片方だけでもウザ過ぎるのに2人連続で言われると上限が見えないぐらいウザさが倍増していくな。そして痛い奴的な意味ではお前らにだけは言われたかないわ!お前らこそ自分たちの異常さ自覚しろよ!)


 彼女ら姉妹クラリスとエルノアと会話続けてると精神やら魂やらが鉛筆の如くゴリゴリと削られるのを大河はヒシヒシ痛感していた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る