13話 この街の治安が心配になりました

 大河は結果的には城壁の門をくぐり街の中へと入るができたが、当然全く嬉しくなかった。これ以上がないくらいに最悪な形での街への通行となってしまったからである。


 街の中は中世ヨーロッパのような建物が並んでおり、街灯一つとっても細かな装飾が施されておりん大河の目には目新しいものが多く、もしこれが普通に入ることができていたのであればさぞ異世界の新しい景色を楽し見ながらゆっくり観光気分を味わうことが出来ていただろう。


 しかしそれは叶わず、特別犯罪を起こしたわけでもあるまいに何故かリーゼント頭の門番の偏見によって不審者扱いされて手錠をかけられ連行されていた。


 その姿を見ている街の住人からはヒソヒソ声で大河の方を指差しながら小声で話す声が聞こえてきた。内容まで聞こえてこなかったのはせめてもの救いではあるが、街について早々に住人達に対して自分の印象が最悪になったであろうことに落ち込み、どう考えても呪われてるとしか思えない自分の現状を嘆くのだった。


 そのまま歩き続けていると見たら忘れられなさそうな壁一面赤色で塗りたくられた見た目が完全にヤバそうにしか見えない建物の中へと連れていかれた。その中にはリーゼントと同じ服を着ている人物たちが仕事をしているようだった。


 しかし何故か中の人たちからは外の人たちとは反対に大河に向けて同情の眼差しを送っていた。建物内をを歩き続けて建物の奥へと進み、取調室と思われる部屋に無理矢理入らされ腕をテーブルに取り付けられていた革の固定具で拘束された。その後リーゼントは部屋から出てから数分後に部屋に戻ってくるとこれまた一目見る必ず印象に残りそうな部分ごとに色を入れているモヒカン頭が一緒に入室してきた。


 「俺様の名前はスコーン・ベーカリー。この街の警備部隊の隊長だでこの街の治安を守っている者だ」


(まるでパンみたいな名前だな。ていうか隊長?弁明も聞くことなくいきなり人を犯罪者予備軍みたいな扱いをして連行するこんな頭のネジが外れてそうな人が隊長!?市民を守るどころか脅かすようにしか思えないのだが)


 大河は改めてスコーン・ベーカリーの姿を隅々観察する。


(こんなのがトップでこの街の治安とやらは本当に大丈夫なのだろうか?とりあえず連れてこられた恨みを込めてこいつの名前はフランスパンと命名しよう。髪の見た目まんまだし)


「そして後ろにいるのが俺の相棒にして警備部隊副隊長のモヒ・カーンだ」


(ここまで名が鯛を表している人を初めて…今しがた見たな、隣のやつを。というかフランスパンが隊長でモヒカン頭が副隊長って…こんなのがトップでよくここの組織やってこれたな。


他の人がさぞ有能なのか、はたまた実際はこいつらより上の人間が統括していて2人はただのお飾りなのか。または見かけによらずフランスパンが優秀……わないな、うん。俺が少し怪しく見えただけで手錠掛けて連行してるぐらいだからそれはない。ぶっちゃけ後者が濃厚だろうな)


 大河は自分の置かれている状況に嘆き、大きなため息を吐く。


(まだ明らかな犯罪行為を目撃したわけでもないのに犯罪者扱いしてるのが隊長とかありえないからな普通は。または…この隣のモヒカン男が見た目に反して優秀で隊長に変わって他の隊員たちに適切な指示を出してるかだが…)


 大河は先ほどスコーン・ベーカリーの言っていた言葉を思い出していた。


(『俺の相棒』とか言ってたからな。そんな風に言っている辺りフランスパンと同種の可能性が高いだろう。見た目で判断して悪いけどそもそもまともな性格してたらこんな奇抜すぎる髪型はしてないだろうからな。よほどの事情でもない限りは)


 大河が2人の事を観察し、思考を巡らせていると自己紹介を終えたスコーン・ベーカリーは話を切り出した。


「それではこれから俺様が貴様にいろいろ質問を行っていく」


「手錠で手を拘束した挙句、テーブルに固定されているこの状態はただ質問を行うためだけの相手への処置では無いのですがこれは」


「それではまず始めに…」


 (あーだめだやっぱりこの人の人の話聞かない系だ。まあとりあえず聞かれたことに正直に答えるとするか)


 訳も分からず捕まってしまったが、穏便に解決するために誠実にに答える努力をしようと大河が決めた直後にスコーン・ベーカリーから驚きの質問が飛んできた。


「現在貴様はいくら金を持っている」


「は?」

  

 大河は予想だにしなかった問いに目が点になり、スコーン・ベーカリーの質問の意図が分からず少し混乱した。



 


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