いつもの日常の何気ないひと時
「そこの君。何かお困りかな」
紳士は少年に問う。「妹が欲しがっていた物が売り切れてた」
「マスター(店長)。彼に例の物を」
「良いのですか?」
「構わないさ。プレゼントはこれでいいかな?」「いいの?」
「あぁ。いいさ。僕は通りすがりのサンタさんの従兄弟だからね」
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仕事終わりのひと時を私はさりげなく楽しむことを生きがいとしている。
明日も仕事だろうって?それは事実だがこの生きがいの時間のおかげで寝起きは晴れやかで日々の仕事終わりが待ち遠しくも感じることが出来る。これは自論だが人は楽しみがあると苦労もその為のスパイスになる。
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青年は日々就業時間ちょうどに退社する。決して良い会社のエリートという訳でもない。仕事は幅広く多い方だがなぜか青年は定時に会社を出る。特出した能力は無いがなぜか仕事を綺麗に片して帰る。急な業務も入るのに。彼は仕事人では無いのに。彼は仕事終わりの楽しみの為なら無意識に職務を遂行する。
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青年は定時で退社した。商業街の陰にある公園に足を運ぶ。そこに一人の女性がギター片手に佇んでいた。「こんばんは。常連さん」「聞いても?」「どうぞ」「なぜここで?」「公園って
1日を通して人間の自然な部分が集まるんですよ。素の感情っていうか私は何気なくも人の心の隙間を埋める役なんで」
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会社員の青年が公園で弾き語りをする女性と出会ったきっかけは些細な偶然だった。青年がふとした興味から通勤で通る商業街の裏路地には何があるのかを散策したところ。人だかりとは言えないが様々な年齢の人々が弾き語りをする女性の前で佇んでいるのをみかけたからだった。まるで妖精の様だった。
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商業街の外れの公園で「リクエストはありますか」囁くような小さな声がつぶやいた。すかさず会社員の青年は言葉を紡いだ。「元気になれる曲をお願いできますか」「はい。いいですよ」ギターを弾く音と音色が夜の公園に広がり出した。アンプやマイクを使わない自然な声と音色だった。
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歌い終えると女性はそっと語った。
「この曲は聴いた人によって感想が異なる曲です。ある人は儚さを。ある人は強さを。捉え方は千差万別で。これって人間関係と同じだと思うんですよね。ただ共通していることは皆さん元気になれる曲だねって。私もそう思います。皆さんと又お会いできたらなぁって。
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会社員の青年はそっと彼女のギターケースに硬貨を置く。それに続いて他の観客達も順番に硬貨を置いていく。寒空の公園でも丸の様に人が集えば温もりのある特別な場所になる。青年を含む偶然集った観客に彼女は何かを与え観客は彼女の音楽に何かを与える。
ふと思い青年は帰宅する。
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