第10話 あなたと行きたいペアチケット

「…ペアチケット…私…行く相手いないのに…。どうでも良い時に当たったりして…」




私は優綺が気になる存在に変わっていた。


身体の関係ばかりの私達。


だけど優綺は言ってくれた




“都合の良い女” とか “軽い女” とか


そう見ないって言ってくれてる



でも………



私は自身は……



自分の存在に



良いイメージを持っていない






そんなある日の事。




私は、映画館の前を行ったり来たりしていた。




「また、彼氏にフラれたか?」




そう言われ振り返る私。



「優綺ぃっ!?」

「さっきから見てれば行ったり来たりじゃん」

「えっ?いつから見てたの?」

「さあ、いつからだろうな」



歩み寄り、頭をポンとする優綺。



ドキッ



「で?どうしたんだ?」

「ペアチケット…当っちゃって…」

「ペアチケット?」

「うん…」

「一緒に行く?お前の都合と俺で良ければだけど」


「そんなの全然良いよ!当たり前じゃん!むしろ…優綺が良いし…」

「分かった。じゃあ行くか」

「うん…」




私達は映画館の中に入る事にした。





そして――――



「ごめん、ありがとう」

「いいえ。歌音、この後、時間ある?」

「…今日は…もう帰らなきゃ」

「そうか…」

「…ごめん…」

「いや…良いよ。一緒にご飯でもと思ったけど」

「そうか…ごめんね。それじゃ」

「ああ」



私は帰り始める。



「歌音」



名前を呼ばれ振り返る。



グイッと引き寄せられキスをされた。




「…優…綺…」




私は、優綺の胸に顔を埋めるように抱きつく私。



「歌音?」


「…優…綺…。…私…優綺が…好き…」

「…えっ?…歌音…」

「もう…体だけの関係なんて嫌…私を…優綺の彼女にして…」



バッと離れる私。



「ごめんっ!…今の聞かなかかった事にして」



グイッと引き止めると背後から抱きしめた。


ドキン



「体だけの関係なんて思ってないから…勘違いすんなよ」


「でも…」


「確かに会う度に関係あったかもしれないけど…だからって…その時間(とき)は、そういう風に思ってないから…もし、歌音が、そう感じていたなら謝る」



私は、首を左右に振る。




向き合う私達。



優綺は、両頬を優しく包み込むように触れる。



ドキン




「歌音…返事はすぐに言えないけどお前の気持ちは凄く分かったよ」


「…もしかして彼女いるの?」

「彼女はいないよ」

「だったら!……ごめん…。私の我儘だね」

「気にするな」




私達はキスをし別れた。












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