第107話 第48.5局弟子編⑯
大学入試合格発表当日。
少し遠くから掲示板を眺める。今はまだ真っ白な掲示板。数分後には、そこに、合格者の番号が書かれた紙が掲示されるのだ。その瞬間を、今か今かと待つ多くの人。
「・・・緊張してる?」
「・・・はい。」
僕の隣に立つ師匠が、僕の顔を覗き込む。その顔には、いつものような穏やかな表情が浮かんでいたけれど、いつもより少しだけ強張って見えた。もしかしたら、師匠も緊張しているのかもしれない。
「・・・師匠、もし落ちてたら」「駄目」
「・・・・・・」
「そんなこと、言っちゃ駄目。」
「・・・はい。」
そんな会話をしていると、大学の職員と思しき人たちが、掲示板の前に登場する。そして、掲示板に巨大な紙を張り付けた。
一気に掲示板に群がる人、人、人。悲鳴のような歓声。
「いってらっしゃい。」
「・・・行ってきます。」
師匠に背中を押され、ゆっくりと足を踏み出す。目の前の多くの人をかき分け、掲示板の前へ。
「・・・・・・・・・・・・あった。」
心が一気に喜びで満ち溢れる。これまで勉強してきた記憶が、走馬灯のように脳内を流れる。
踵を返し、師匠のもとへ。
「師匠!ありました!!ありましたよ!!!僕、四月から、師匠の後輩です!!!!」
僕は、全身を使って、喜びを師匠に伝える。
師匠は、そんな僕を見て、「おめでとう。」と一言。そして、くるりと僕に背を向けた。
「じゃ、君のご両親に報告しなきゃね。私、先に休憩スペースに行ってるから。報告が終わったら来て。・・・・・・将棋・・・しよ。」
「え・・・・・・あ、はい。やります・・・けど・・・。」
僕の言葉を背に、師匠はスタスタと歩き出す。
なんか・・・・・・淡白すぎやしませんか。
やった!
やった!!
やった!!!
ああ、まずい。こんな顔、彼に見せられない。
彼が来るまでに、このにやけ顔を何とかしておかないと。
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