第9話 第7局
金曜日、深夜、大学の休憩スペース。いつものように師匠と将棋を指す。
「師匠って、将棋以外のボードゲームはしないんですか?」
一昨日、知り合いに、「将棋をしてる人って、他のボードゲームとかも強そうだよね。」と言われた。その時、ふと、師匠は他のボードゲームをするのかどうか気になってしまったのだ。
師匠は盤上から顔を上げ、しばし考えた後、ふるふると首を横に振った。
「そういえば、他のボードゲームは全くやらないね。・・・やってみるかい?今度。」
突然の提案。まさか、こんな提案をされるとは思ってもみなかった。思わず、顏を天井に向け、逡巡してしまう。
やってみたいと思う気持ちがないわけではない。きっと、師匠と将棋以外のボードゲームをしても、楽しいはずだ。ただ、何か違和感を感じてしまう。
顔を前に向ける。その時、師匠と目が合った。師匠はいつものような穏やかな表情で、・・・・・・何かを期待しているような目をしていた。
「・・・やめときます。師匠と将棋を指す時間も減っちゃいますし。」
僕は、ゆっくりと言葉を絞り出した。
僕の答えを聞いた師匠は、うんと一つ頷いた。そして、指しかけの将棋を再開するために、駒に手を伸ばす。その駒音は、いつもよりも大きく感じられた。
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