第2話 第2局
金曜日、深夜、大学の休憩スペース。いつものように師匠と将棋を指す。
「ふと気になったのだけど。」
将棋が中盤戦にさしかかった頃、師匠が口を開いた。僕は盤上を見つめながら、少しの意識を師匠の方に向ける。
「君、私の他には誰と将棋を指すことが多いんだい?」
とてもたわいもない質問だった。僕は頭の中で駒を動かしながら、ありのままを答える。
「ここ最近は、師匠としか指してないですね。他の人と指すよりも、師匠と指す方が好きですし。」
ぴしっという音が聞こえた気がした。顔を上げると、師匠が驚いた表情をしていた。その理由が分からず、僕は首を傾げる。数秒後、師匠ははっとしたように「そ、そうかい。」と答え、盤上に顔を向けた。その顔は、少し赤みがかっているように見えた。
今日の将棋は、いつもよりも白熱したものになった。いつもは師匠が僕をコテンパンにするのだが、何故だか今日は、師匠の手が鈍っていたように感じられた。・・・まあ、負けたのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます