第6話 ピアにか


「ピアニカ、なんか弾いて見ろよ」



楽しそうに、シュウは言う。




....そうだな....。僕は、ピアニカにソフトホースをつないだ。



それで、息を整えて静かに、一番低いCの音を吹く。



ふーっ。



ブラウする楽器は、なんか、気持ちが伝えやすいような気がする。



C(2)---D-F---G-A---D(3)---C#(3)-C(3)--



と、メロディを吹くと、シュウは、静かにハーモニクスで

F---CC---G--F....とバッキング。



アジムスの「フライ・オーヴァー・ザ・ホライゾン」だ。



雑踏が聞こえない。

楽器の音と、気持ちがつながった。


シュウのギターが、抱きかかえるようにバッキングしてくれる。

メロディは、ふわふわと。



本当に空を飛翔んでいるような気がする。


音と僕等は一体になって。


心地よい浮遊感だけが残る。無限の自由空間にいるような気持ちがする.....。



1コーラス終え、アド・リブパート。



ふと気がつくと、周りに人だかりが出来ていてビックリするけれど、演奏は止めない。

それも、いつものことだ。



コンプレッションの効いたギターが、よく伸びた音でメインのフレーズに戻ると、僕の番だ。


ふと、顔を上げると.....



人垣の向こうに、あの子の姿が見えた。(!)。

通りすがりに、ちょっと覗いてみた、と云う感じだった。

春の風がさらりと髪を靡かせて、ふわふわと所在なげな感じ....




僕は、演奏しながら....イメージを思い起こす。




----*---


風になれたら

春の風....


かたさき揺れる 君の髪

ちょっといたずら 靡かせたいな



ナチュラル・ブラウン 君の髪

木もれ陽に 煌いた時


飛んでいきたい 春風のように



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