エレベータ・ガール

深町珠

第1話 はじまり

scene #1 cut#1


野の花の 如き清しき君なりき 

  愛しくて 我 ただ頬を赤らめる....


エレベータ・モニターのアルバイトをしながら、僕は

どういう訳か、偶然みかけた彼女に、恋してしまったようだった。


それで、メモ用紙にこんな走り書き。


隣で見ていたバイト仲間のSは、「なんか可愛いな、この子」

なんて言いながら...


やっぱりメモ用紙に5線をさっ、と引き、歌詞を連ねている。


生まれたての 朝

  若葉萌ゆりて 零れるように...


コード・ネームは Fm7-Em7-Dm7-Cm7と


バグルスの「ラジオスターの悲劇」みたいなシンプルなコード。

http://mixi.jp/view_item.pl?id=70727


メロディがすらすらと書き加えられて。


ちょっと見、コクトー・ツインズのように見える。

http://mixi.jp/view_item.pl?id=116606


「それ、いいんじゃない?」と僕。


Sはにっこりと笑い「うん、Icebrink Luckみたいな弦を入れるかな」

なんて....


僕らは、この街を見下ろす大学の3回生。


僕は文学部、Sは理工学部だが、僕等は軽音楽サークルの仲間。

時々、駅前で路上演奏をしている。



僕等と彼女のきっかけは、こんなかんじだった....。





scene#2, cut#1。




----***---


駅前。割と大きなこの街、国道が隣接している。大きな〒局、デパート、バス・ターミナル...。

僕等の丘の上キャンパスへ行く、海老茶と白の私鉄バスもここから出ていく。


今日は、日曜日。学校は休みなので、僕は、軽音楽サークルの仲間、Sとこのあたりで路上ライブをするつもりで、ここに来た。


いつものことだが、Sは時間通りに来たためしが無い。


今日も、10時、の約束なのだが..すでに11時。


...遅いな...。


僕は、軽音楽サークルの友人から500円で買ったピアニカを抱えて

Sが来るのを待っている。


駅前の人波は意外と少ないこの場所、殆どの人は地下道を通って国道の向かい側のデパートのある方へ向かってしまうから、ここはパフォーマンスに最適。


でも、肝心のSが来ない事には...。

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