カレンダー・ガール
深町珠
第1話 1年目 4月
過ぎてしまってから、大切なものを無くしてしまったと思う。
そう言う事は、よくある事だ、と思う。
いつも僕は、そういう風に生きてきたような気もする。
そう、ついこのあいだも.......。
それは、2年も前の事だったろう。
推定形なのは、僕自身が気付いていなかったからだ。
僕は、フリーランスだから、今のオフィスに入ったのは2年前の事。
その子は、僕と同じ時期にそこのオフィスに入ったらしい。
最初に気付いたのは、いつの日だったか覚えていないが
フリー・ディスカッションの日、10人ほどで会議室に集まった時だった。
僕の意見に、やたらと反意を示す女の子が居た。
色白で眼鏡、小柄、痩せぎすで髪は断髪、と云う
あまり色気の無い子だった。
どちらかと言うと、大柄で優しげな子が好きな僕にとって
あまり好ましいタイプではなかった。
どうしてなのだろう、それが今ではこんな風に
想い出を綴るような存在になってしまっている、と云うのは....
今思うと、これはその子にとっての自己主張だったのだろう、と思う。
僕の意識に残るようなアピールをするつもりが、イマ風の若者っぽく
ちょっと攻撃的な感じになっていた、のだろうと思う
(後で聞いた話しだが、僕の年を10歳くらい若く見積もっていたらしい)。
それから、しばらくはそんな感じでさりげなく毎日は流れたが
ある時、何でも無い用事でわざわざ僕のところに、その子は尋ねてきた。
.......メールで済むのになぁ....
そう思いながら、僕はそれでも女の子だから、と
割と丁寧に扱った。
僕はいつでもそれで誤解されるのだが、これはなんというか、習慣だ。
別に女の子だけではなくて、男にも割と丁寧な方なので
相手によってはバカにされたりもするのだが......まあ、それはそれでいい。
その子は、可愛らしくにこにこしながら、ぎこちなく言葉をつないだ。
不自然に礼を言い、ちょこちょこと歩いて行った。
.......ヘンな子だなぁ。
僕はその、痩せぎすな後ろ姿をみて、そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます