第33話 シンプル・ラブ

2年の冬と言うと、そろそろ進学を考える時期・・・だと、最近は言うけれど

1978年は、そうでもなく・・・。

みんなテキトーだった。



中学の頃、CB無線で知り合った、隣町の中学生たちのひとり、洋一は

高校には入ったが、私立のバイク禁止高校だったので

無視して乗って、事故を起こして退学になり

学校が斡旋した工場も辞めて、アルバイト暮らし。


そういうヤツだったが、気のいいヤツで


よく、一緒にバイトした。



洋一が誘うので、一緒にタイヤ屋でバイトした事がある。



そこに、まあ・・・・偏屈なバイク乗りがいて(どこにでもいるが)。


古いCB250EXを乗っていて。


俺がSR400を買いたいと言うと「まだ早いよ、オマエには」なんて

横柄な口を利く。


こういうヤツはだいたい、否定的な感情がある(から、モテナイ^^)。


黒ブチめがね、ニキビ面、髪の毛がぼさぼさ、薄汚いジャンパー、ズボン。

屁理屈が多い。



なので俺が「早いと言うのはどういう根拠ですか」と、聞いたら。



ヤツは「大排気量は重い、パワーがある」と、ヘンなことを言うので



俺は「SRは158kg、27psです。あんたのホンダより軽いし、パワーもない」と

言うと。



ヤツは「50ccからはじめろ」なんて言う。



俺は「50ccは持ってますが」と言うと


ヤツ「じゃ、つぎは90ccだ」




とか言うので「根拠はなんですか」と、マジメに聞くと

答えられない(笑)。




黙っているから「あんたは50ccのつぎに90ccだったのですか」と言うと



そいつは、250を買ったというので



洋一は「おかしーじゃんか」と、笑うので



そいつを怒って、逃げていった(笑)。




洋一は「筋とおんねぇよ、なぁ」と・・・・。



はっきりした、いいヤツだ(^^)。



そこのタイヤ屋では、ちょっとバイトしたけどすぐ辞めた。



そこの社長がまた、いやらしーヤツで。


「こう、入れるとき痛いくらいのほうがいいね」なんて・・・・。

どっかで買ってるんだろう、フィリピンかなんか。



金だしてまで買うかねぇ、と・・・俺も洋一も呆れていた(笑)。


洋一もしゃっきりしてるヤツだから、ガールフレンドは一杯居たし。



哀れ、モテナイおっさん(笑)。妻帯者の癖に、そんなとこ行きやがってと

俺も洋一も蔑んで見ていると・・・。


それが気に入らないらしくて、逆上する。



ので・・・・。


バイト辞める日に、倉庫でぶっ飛ばしてやった(笑)。

給料もらってからね。






洋一はそのあと、GS400Eを買うのだが・・・。

その頃ディスコで知り合った女の子を好きになって。



「一緒に添い寝したんだ。ムラムラ来たからキスしたら

任せてきて」


だから好きになったんだ、と言う・・・。


シンプル・ラブ。



女の子の方も、洋一が好きだったんだろう。




で・・・そういうカップルによくあるように、別れが来て。




俺のところに来て「今夜は付き合え!」と・・・・。



ディスコに行って、酔っ払って踊ったり。



「別れても好きな人ー」なんて歌ったり(笑)。




まあ、どうしようもない真っ直ぐなヤツだ。




たぶん、学歴は高校中退のままなんだろうけど

後々、まともな女と結婚して


家をリフォームして。ふつうのおっさんになった。



面白いヤツである。



GS400Eは、どうしたんだろ(^^)。






CB無線は、1977年頃ソニーが流行らせて。

俺も、洋一も持っていた。

0.5wだけど、そこそこ飛ぶので

楽しいコミュニケーションツールだった。

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