第13話 音楽



・・・まあ、現実には奨学金を貰って

芸術学校に通うのは不可能だから(笑)


あくまで夢物語でしかなかった。



父を養わなくてはならないし、その父が作った借金を

家中で払っている。


そこまで、奨学金で出るとは思えない・・・が。


「 ー 学費分にはなるかもしれないな」


とは思う。でも、独り暮しをする生活費までは借りられないだろう。



そんな風に、僕は思っている・・・・。


「家から通えれば、な」



不可能ではないな。とは思う。

しかし・・。バイトしながらではちょっと無理か。





「スズちゃんどうしたのかな?ちょっと見てくるね」と、うららさんが

とことこ。

案外、可愛い歩き方をする時もある。




その時、陽子さんが「奨学金の話、聞いたけど・・・ちょっと難しいね、私達みたいな


場合」


そう。陽子さんも、弟や妹の為に仕送りをしているから・・・。

たまたま、会社、労働組合が支援してくれているので

働きながら通えている。



「うん。」と、僕。


「たぶん、現実的には高校を出てからの進路、になるだろうけど・・・・。

それでも難しいかもしれない。」と、僕は言った。




「ふつうの人とは違うものね、私達。でも、希望を持とうよ。原田さんも

助けてくれるって言っているし。」



「そうだね。」





うららさんが、礼子さん、スズさんを連れて戻ってきて


「どうしよっか。午後は何処か行く?・・・今夜は泊まってくんでしょ?」と

うららさん。


僕は「いえ、帰るつもりですけど」と言うと。


玲子さんは「だーめ。お姉さんが可愛がってあげるって言ったでしょ?

とことん。ね。」と、にっこり。


礼子さんも「そうさ。夕方ではいちゃ、じゃ、切ないよ、陽子ちゃんだって。

ねえ陽子ちゃん?」


陽子さんは「いえ、わたしは・・・・。」と。


突然振られて、どっきり。



僕もどきどき「でも、女子寮に泊まるってのは・・。」




うららさんは「大丈夫。私達全員が大丈夫なら。

大体、キミ16でしょ?

弟が来たって、泊めてあげるもの。ふつー。そうでしょ?」



・・・それは、そうかもしれない(笑)。



「わかりました。じゃ、家に連絡してきます。」



と、さっきの電話ボックスで。また、兄に電話。



うまいことに、兄は席にいて。



「はい、はい。分かりました。お気をつけてどうぞ」


と、仕事の電話を装った(笑)


電話が切れてから、兄は

「またかよ」(笑)と、受話器を見て。





僕は、みんなの所に戻ってきて「靖子さん、マサエさんは来ないんですか?」



スズちゃんは「なんかね、いろいろ忙しいんだって。作曲って大変ね」



「なーるほど。」


「じゃ、あたしたちだけ遊びに行くのも可哀相だから、付き合ってあげよう!」と

うららさん。



「あの子たち、ご飯食べたのかな?」と礼子さん。


うららさんは「世話女房ね、ほんと」と、くすっ、と笑う。


笑顔は、ちょっと可愛くて好き。



陽子さんとちょっとしか年は変わらないのに、随分大人っぽいな、なんて

思う。



「あ、靖子さんは音楽科のレストランで見かけました」と、僕が言うと



「そう。あの子、ひとりが好きだから。ふるさとが恋しいのかな?」と

うららさん。



「まだ来たばかりだしね」と、スズちゃん。


「一年生なんですか」と、僕が聞くと



うららさんは「そう。山形とじゃ、環境が違いすぎるしね。陽子ちゃんみたいに

社会人経験もないから、いきなり学校と仕事じゃね。ちょっと可哀相かな。

きっちりやりたい子だし」。




「そのうち慣れるって。」と、礼子さん。



「じゃ、所在不明は・・・マサエちゃんか。あの子は平気ね、どっかで

なんか食ってるだろ」と、礼子さん。



その言い方が可笑しくて、僕は笑った。



「うん、あの子は平気よ、都会育ちだし。渋谷系ね」と、うららさん。



「渋谷系?」と、僕が聞くと


「今もそうだけど、渋谷で夜遊びしてたんだって。高校生の頃。


だから平気。ほっといて。気にしない子だし」と、礼子さん。




「いい人なんですね」と、僕が言うと


「なんで?」と、スズちゃん。



「気をつかわせないように・・・って振舞ってるんでしょう?」





「なるほどね。」と、うららさん。


キミ、心理学者になれるわ、と。笑って。



「じゃ、なんか食べよ!」と。



おいしそうな学食に誘われて・・・。






僕は、さっき見かけた

カレーのセットメニューを頼んだ。


レストランふう、銀のお皿にごはん、ルーが別になっていて。

サラダ、スープ。 230円。


「誰でも食べられるんですね」と、僕が言うと

うららさんは「そう。バスの運転手さんとかも喜んでるね。」


結構、豪気な学校である。


「アメニティ青池も結構豪華だけど、6人しか住んでないのに

結構寮費が高そうですね」と、僕が言うと


礼子さんは「苦労人だね、キミ。投資だから。企業って税金払うでしょ?

その時に、従業員のための設備投資は税金で落とせるわけ。」



スタミナ丼、大盛り!の、礼子さん。




僕は、よくわからないけど「そんなもんなんですね。」


玲子さんは「そう。それに。デザイナーとかに払うデザイン料って結構高いらしいのね。


著作権、とかあって。そういうのを自社製にすると、かえって安いんだって。」


Aランチを頼んだ。とり天、ご飯、サラダバー。だご汁。



それは、僕も聞いた事がある。著作権。



「なーるほど」




陽子さんは、手打ち蕎麦。温かいおつゆ。

手打ちで温かいのは珍しい。


それと、ミニ丼がついている。


親子かな?




「おかげで助かってるけど」と、陽子さん。




並んで、それぞれのメニューを受け取る。



結構広い学食は、音楽室くらいだろうか。




山の上なので、風がよく入り、涼しい。


夏なんだけど。



僕らは、窓際の、木陰になるあたりの丸いテーブルに。

6人掛け。



「靖子さん、大丈夫かなぁ」と、僕は

カレールーをごはんに掛けて。

なぜか、ポテトチップがついていて

コンソメ味だったのが、また不思議。


スープもコンソメ。



「気になる?」と、うららさん。


上品に、スパゲティをさらりと頂いている。

唐辛子の味のだろうか。


「・・・なんとなく」



礼子さんが「そうねー。でも、ひとりが好きな子だから。

纏わりつくと却って鬱陶しいでしょ?そういう時。」




「・・・・そうですね。そういえば。」



女の子同士って、なんか、通じるんだろうか。



確かに、なにか、イメージに耽りたい時とか

思いやりも、却って仇になったりすることもある。



作曲家って、特にそうかな。




「なにか、作曲もイメージなのかな」と、僕が言うと




玲子さんは「そうね。絵もそうだけど。そういう人もいるわね。

思ったものを作りたい、っていうか。」



うららさんは「音は、キミの方が得意でしょ。」



僕は「まあ、僕は遊んでるだけだし。好きな曲を弾いてたり、歌ったり。

そのうちになんか、違うものになったりするかもしれないけど。

だから、作曲ってしてないんですね。」



陽子さんは「絵もそんなものかな。私は、割とイメージを作る時と

そうでない時とあるわね。好きな絵に近いものを書きたい、とか。」



礼子さんは「そう、有名な絵に似てる方が人気が出るけど、評価は低い」




僕は「音楽もそうですね。有名な曲って、分かり易いから。

芸術じゃないと思うけど」



うららさんは「そう!芸術は爆発だー!」


と、突然面白い事を言うので、みんな、笑った。


礼子さんは「あの爆発ってのは、台本の台詞だったんだって。

でも面白いもんね。あの人が言いそうで。それで受けたけど。

芸術じゃない」



「なーるほど。」



ごはんを食べるのは、みんな、割と早い


職業を持っている人って、だいたいそう。


時間に追われているからなのかな。



「あ、マサエちゃん!」と、うららさんが気づく。



マサエちゃんも気づき「あー、ごめんなさーい、遅きに逸したか。無念じゃ」

と、面白い時代劇みたいな事を言うので、みんな笑った。


「なにしてたの?」と、うららさん。



マサエちゃんは「うん。曲をね、ちょっと。それからさ、演劇の渉くんが

オペラだかミュージカルだかのね、そういうのをやろうって。話を聞いてて。


町野くんもやるんだとか、言ってて。


ね、転校するの?こっちに?


楽しいね、そうなったら」と、マサエちゃんは一気に話す(笑)。




礼子さんは「うんうん、わかったー。そうか。じゃ、付き合ってあげよう。

わたしは午後のお茶でも飲んで。」


玲子さんは「そだね。絵はまあ、いいし。」


うららさんは「よし、じゃ、なんか食べな。牛丼とかさ」


と。


ちょっと待っててー、って。記譜ノートを置いて。ぱたぱた。



「かわいいですね」と、僕が言うと



「あの子、人気あるね。私と同い年なんだけど」と、うららさん。



「うららさん、かっこいいです」と、僕が言うと


ありがと、と。うららさんは微笑む。




 





マサエちゃんは「ごめんねー、わたしのために。」と。

手打ち蕎麦。こっちはせいろ。

それと、ミニ丼ではなく

お稲荷さんと、海苔巻き。


マカロニサラダ。

梨のコンポート。


「よく食うなぁ」と、礼子さん。


「ま、元気な証拠ね」と、うららさん。


「へへ・・じゃ、いただきまーす!」と

ものおじのしない人で、ひとりで


お蕎麦から、おいしそうにつるつる。


最初からわさびをつけたりしないで、ちょっと、お蕎麦を頂いて

それから、おつゆをちょっと付けて。


「食通だね」と、玲子さん。


「父が、蕎麦好きで」と。


マサエちゃんは、大きなメガネが落っこちそう。

なんとなく、可愛らしい。


「ねね。町野くんは転校するの?」と。

いきなり核心に触れてきたので


僕も、隠し事は苦手だから


「たぶん、奨学金貰っても、家に借金もあるし。

父は働けないから、母と兄と僕とで払ってるんです。

だから、ひとり暮しなんて無理だと思う」と。



うららさんは、にっこり。「それは、なんとかなるわ。

私達だって、それぞれに事情があるから

奨学金を借りてるワケ。」



「そうなんですか?」



「そう。私達はね、会社の顧問弁護士が

代理人になってくれて。そういう無理がないように、と

例えば利息をね、ふつうは法定利息より高く取っているから

それを止めて、払いすぎた分を返してもらったり。

そういう手続きをしてくれたわ。」と、玲子さん。


「そうなんだ。」僕は、何も知らなかった。


「国のそういう制度もあるから、奨学金貰う時に

相談できるよ」と、礼子さん。



「そうなんだ・・・ありがとうございます!」と、僕は

深く礼をした。


「まあ、全てのケースで上手く行くとは限らないけど」と、うららさん。


「陽子ちゃんのとこみたいに、単にお父さんがいなくなっただけで

資産がある場合。お父さんの残した家を売りたくない、と言っても

それはどうしようもない訳。」


と、うららさん。


「ま、そういう時は、もう20歳過ぎなんだから

お母さんの感傷とは距離を置いて、ってした方が無難ね。

陽子ちゃんの弟、妹は奨学金で学校は行けるけど。

やっぱり働きながら・・・って事になるわ」と、付け加えた。




「僕のとこもそうだし・・・。」と。僕は言った。


「靖子ちゃんのとこも、なんかあるんじゃないかと思うけど

話したがらないから、あの子。

助けてあげようがないの。」と、うららさん。



「・・・・そうですね。悩みでなければいいんだけど。」と僕。



マサエちゃんは「そういう訳。だからね、町野くんはなんとかなるよ。

きっと。転校して来れるよ。」と、お稲荷さんを頬張りながら。



にこにこ。


明るいなぁ。きっと、事情がある子なんだろうに。



「まあ、町野くん見てると、お父さんを責められないね。それは

モテそうだもの。お父さんも。そういう時ね・・・

優しい人程、情が移っちゃうって事あるから。」と、うららさん。



「僕も、ここへ来てなんとなく思いました。」と言うと


「どんな風に?」と、玲子さん。



「魅力的な人は、それぞれに素敵で。会ってる時は『この子、いいな』って思うもの。」




と言うと、うららさんは、ははは。と笑って「キミって正直ね。素敵。そうだと思う。誰だって。」




「たまたま、父は病気になっちゃったけど、そうでなかったら

ずっとそうしてたと思うんですね。

その為に働いてた。そういう生甲斐もあるのかな、って。

今は思えます。」



「ねね、それってさ・・陽子ちゃんだけじゃなくて、他の子が素敵に見えたって事?」


と、マサエちゃんはにこにこ。



「そうですけど、でも、だからと言って何も出来ませんけど」と、僕。



礼子さんは「そう。キミはそういうタイプね。いいよ、それ。私好きだな、そういう子。」





みんな、笑う。


悩み、みたいなものを話すと、楽だ。



大した悩みでなかったりもする。





マサエちゃんは「じゃさ、来る?こっちへ」


と言うと、うららさんは「奨学金が出ればね」



「そこに尽きるなあ」と、僕はちょっと気になる。



「なんとかなると思うよ。他にあるの、お金が要る理由。」


と、うららさんが聞くので


「オートバイがほしいんです」


と、言うと、一同笑う。


「男の子ね、そういうとこ。」と、礼子さん。


「わたしもバイク持ってるよ。実家にあるけど。」とも。


「なんてバイクですか?」



「CB750」と、礼子さん。



「750かー。すごいなぁ」と、僕は驚く。



「兄がくれたんだけどね。町野くんは何に乗りたいの?」





「SR400を買おうと思ってます」と、言うと



礼子さんは「かっこいいよね、アレ。個性的で。似合うね。キミ」と。



そうかな?と、僕は嬉しくなった。





「でもまあ、それは稼いで買うのね。」と、うららさん。



「はい」と、僕。






うららさんが、大人っぽい理由も

なんとなく分かったような気がした。












マサエちゃんとランチを終えたけど、まだ1時だった。


「じゃ、また後で。3時くらいかなー。」と、マサエちゃんは

にこにこ。手を振って。


「明るくていいなぁ」と、僕が言うと


「あの子なりに抱えてるものはあるんだろうけどね・・・キミの言うように

気配りをしてる子なんだろね。」と、うららさん。



「優しいんですね。」と、僕が言うと


「そう。抱えちゃうと辛いだろうけど。それで夜遊びするんだろね。

無理しなくていいのに。」とも。



「最近は行ってないみたいよー。渋谷遠いし。」と、礼子さん。



「そうだね、アハハ。無理だわ、ここからじゃ。」と、玲子さん。



渋谷までは、一時間くらいだろうか。

でも、終電がここまで来るかどうかは分からない。


たぶん、近郊の急行停車駅までだろう。


「お嬢さんっぽいけど」と、僕が言うと



「キミ、鋭いね。マサエちゃんの家は杉並なの。お父さんは

大学教授だとか。」



「・・・・それで奨学金貰えるんですか?」と、僕が聞くと


「まあ、会社が決める事だし。才能がありさえすれば、って所かな。

お父さんは後継ぎにしたかったらしくて。

それで。」



「いろいろあるんだなぁ。いいトコのお嬢さんでも。」と、僕。



「そうね。貧乏だから不幸でもないの。私らもそうだし。

かえってね、一生懸命にする事があるからしあわせだと思う。」


と、玲子さん。



・・・そうかもしれないな、と

僕は、1年の時に転校した稔くんの事を思い出していた。


お金もある、家柄もいい。でも・・・と言う感じだった。



陽子さんも、なんとなく感じ取っているみたい。






「じゃ、私らも絵に戻るか」と、うららさん。


「あ、バスのキー貸してください。エンジンを見ておきます。」



と、僕が言うと


「はい」と、渡されたキーは


シンプルに、何もキーホルダーについていない。



「通ですね。」と、僕。



「わかる?叔父がそうだから。」

ホルダーに付けると、傷がつくからだ。





学食で別れて。僕は今朝のパーキングの所へと。


下り坂をのんびり歩く。


夏の盛りだけど、そんなに暑くない。


坂道の下は、すこし街があって、すぐに山。


その向こうに富士山が見えて。


曇っているのか、よく見えない。




「いいところだな」


と、僕は思う。


こんな所で音楽出来たらな・・・・なんて思うけど、まあ

才能が無ければダメだな。


「それが一番怪しい」と、笑いながら


VWバスの所へ。



結構変わった構造なので、エンジンを見るのに

ちょっと首を捻ったけど。


ふつうのワーゲンと同じリアエンジンだから、と

思って。


後ろのゲートを開けると、ハッチがあって

そこからエンジンは見えた。


バッテリーは確かに、ちょっと弱いように思えたけど

セルモーターの音が長閑だから、そう感じるのかもしれなかった。



「エンジン直せるの?」との声に

振り向くと・・・・、



靖子さんだった。


白い、つばの広い夏の帽子をかぶって。


おとなしいスタイルなので、どこか避暑地に来たお嬢さんみたい。



「はい。なんとなく・・・。」と、僕が言うと


「わたしは、パイロットになりたかったの。」と、靖子さんは

自ら、話し始めた。



誰もいない所だから、なのかな。



「パイロットはちょっと無理みたいだから、車で飛ばすのが好き」



と。




「何か乗ってるんですか?」と、僕は

バスのエンジンを点検しながら。


デスビ・キャップを外してみると、結構汚れてるので

ボール紙で掃除しておいた。


セル・モータを回すと

ちょっと、掛かりが良くなったみたい。




「うん、家ではね。セリカに乗ってた。」と靖子さん。


「兄もそうです。1600GTV改1750」と。


「偶然ですね、私のもGTV」と。



「女の子でGTvは珍しいですね。」と、僕が言うと


「パイロット志望だったから。」と靖子さんはにっこり。



そういう笑顔は、幼い子みたいに可愛い。




「音楽も好きなんでしょ?」と、僕が言うと


「町野くんもそうでしょ?」と。

楽しそう。


「そうですね。僕のは音楽っていうか、遊んでるだけ。」



「遊べるって凄いよ。私なんて譜面が無いと

どうしていいか分からないもの。」と、靖子さん。



「そうかなぁ。譜面なんて見てないけど・・・。」と、そこまで言って

思い出した。



音楽で奨学金貰うなら、譜面をきちんと読み書きできないと。



「こりゃ、ハードルが高そう」と、ひとり言を言うと


「なんのこと?」と、靖子さんは笑う。


笑い声は子供のようだった。



「あ、ごめんなさい。ひとり言。音楽の試験を受けるなら、譜面も

ちゃんと読み書きできないと、って思って」



と言うと



靖子さんは「転校の事?」と言うので


「はい。マサエさんから聞いたのですか?」



と言うと。こくり。




「器楽だったら、そうでもないかもしれない。課題曲の譜面が読めればね。」と

靖子さん。



「声楽だともっと楽ね。譜面もそんなに難しくないし。

声が綺麗だから、声楽科で受けてみたらいいかもしれないね。」とも。



「声楽か・・・でも、クラシックでしょ?」


「そうでもないみたい。ポップスのね、デモテープ送って

入った人いるもの。」と、靖子さん。



「自由な学校なんですね。」と、僕は少し心和む。



「才能っていろいろだから。音楽財団だと、ポップスの方が多いね。

器楽のジャズロック・クロスオーバーとか。

さっき、キミが弾いてたようなの。」




「なるほど・・・なんか弾いてみるかな。テープに入れて。」




と、僕は少し希望が沸いてきた。








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