第七章 代表決定戦が始まる

 レースは終わった。

 私達は470を港に向けた。ゆっくり回航していく。アンがメインセールをおろす。ジブセールだけで、灯台のある突堤をゆっくり迂回すると、彼女たちの目にオーナとスクールの子供達の姿が見えてきた。

「おめでーとー」

声が聞こえる。目が霞む。


「おねーちゃん、すごいね」

 子どもたちが私達を出迎えてくれた。

「ありがとう、おねーちゃん、頑張ったぞ」

 子供の頭を撫でた

「おばさんも、すげーな」

「誰がおばさんだ」

 マリがまぜっ返す。

「素晴らしいセーリングだったわ」

 オーナーが声を掛けてきた。


 私達は船をバースのエリアに上げた

「ナイスレース」

 ライバルだったイギリス、オーストラリアやスペイン、それにノルウェイチームが声をかけてきた。

「おめでとう、オリンピック、任したわよ。でも次は私達が行くからね」

 ハルも祝福してくれた。みんなスポーツウーマンだ。それを確認できて、なんだか心がホッとする。


 マリはジュンの姿を探した。どこにもいない。真っ先に報告したかった。どうしても、伝えたかった。


「審判団より当レースについて異議が提出されました。十五時に選手代表は集

まってください」

 突然アナウンスが流れた。

「なに?メダルレースだろう?(メダルレースと言われる決勝戦ではジャッジ

はすべてレース海上で即時に行われる決まりだ)レース後に審判が抗議を受け

付けるなんて聞いたことがないぞ?」

「一体何だ?」

 他の選手たちも怪訝な顔をしている。

「表彰式はどうするんだ?」

 ハルがヒメと話している。

「監督はどこいった?」

「さっきから姿を見ないんだけど」

「最終レースが終わったというのに何やってるんだ」

 精密機器メーカーチームは口々に不満を訴える。

「マリさん」


 私は不安な目でマリを見た。


「まったく往生際の悪い奴らだぜ」

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