第50話 弟子、教わったことをまとめる3-1

「だから、あたしのDS。あたしの部屋にあるから送って!!!」


遥香は帰宅するなり、実家に電話をしていた。

電話には結衣の姉でもある母親が出てくれた。


「だから、DSが欲しいの・・・・・・。うん、元気だって言ってるでしょ。今日も、結衣ちゃんのところに行ってたから大丈夫だよ・・・・。だから、DSが要るの!!!」


遥香の話は殆ど聞かず、遥香の母はマイペースに話し続けるのだった。



「あー、疲れた。」


何とか母親にDSを送ってもらえることになり、一休みのつもりで遥香は風呂に入った。

今日も、頭が豆腐になりそうなくらい色々と教わった。

それを整理する為に、順番に思い返していた。


『ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・』


風呂の中で、大きく響いたのは、遥香のお腹の虫だった。

昼食を腹六分で我慢していたから、お腹が減り過ぎていたのだ。


「お腹減ったなぁ~~。やっぱり、結衣ちゃんのところで食べてきたら良かった。」


ちょっと遥香は後悔していた。



よろずのからの話が終わった後。

直ぐによろずのは帰っていった。

後に残された遥香は、結衣から夕食を食べて帰るように誘われた。

でも、遥香は、早く帰りたい気持ちが強かったので、それを断った。

早く帰って、今日教わったことをまとめたいと思っていたからだった。



ところが、帰宅して、直ぐに終わるはずの実家への電話が、30分近くかかってしまった。

母親から色々と近況を聞かれ、答えざるを得なかったからだ。

電話をしながらバスタブにお湯を張った。

夕飯の用意もしようかと思ったが、さすがに片手では難しいので諦めた。

結局、風呂のお湯が張れたことを口実にするまで、電話を切ることができなかったのだった。


「お風呂に入る前に、先にご飯食べたら良かった。」


更に遥香はプチ後悔していた。




風呂上り。

遥香は、髪の毛をバスタオルで拭きつつ、冷蔵庫から牛乳を取り出した。

風呂上がりの牛乳は、九州でも王道だ。

火照った体を牛乳で中から冷やす。

この感覚がたまらない。

たまにフルーツ牛乳を飲みたくなることもあるが、今日は脂肪分4.5%の高脂肪牛乳をがぶ飲みした。


「ふーーーっ。」



一息つくと、遥香は、まずは今日教わったことをまとめようと考えた。

忘れる前に、先に書き留めておかないと記憶が劣化してしまうからだ。



まずは、投資家として必要な考え方を教わった。

欧米人は投資が上手いが、日本人は下手だと言われている。

これは、リスクマネジメントを知らないからだと遥香は考えていた。

しかし、よろずのは、それだけではないと言った。

リスクマネジメントのバックボーンにある文化自体の考え方の違いが大きな要素を占めていると言っていた。

今の時代から数千年前、石器時代に培われた考え方の違いが、現代にまで影響を及ぼしているとは、予想もしていなかった。

だから、このことを理解して、日本人としての、農耕民族としての利点を前面に押し出さないといけないと言われた。


「そう言えば、桐〇さんが農耕民族の投資というものを言ってたっけ!?」


以前、何かの広告で見たことを、遥香は思い出した。

せっかくだから、〇谷さんの投資本も読んでみようと思った。



「桐〇さんって、投資本出しているのかな??」


気になった遥香は、直ぐにググってみた。

すると、一冊の本が検索に引っかかった。

引っかかった本は、遥香向きではないような題名だった。


「50歳から始めるって・・・・。」


それは、50歳から投資を始める人のための本のような感じだった。

遥香は、まだ18歳。

50歳まで、あと32年ある。


「32年後にならないと意味がないってことは無いよね。」


そんなことを思いながら、大学の図書館の蔵書を遥香は検索するのだった。

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