第6話

【担任の話】

 はい。私のクラスでいじめがあったのは事実です。まさか、沼田さんがいじめの主犯だったなんて。知らなかったです。気づけなかったって? そうですよ。何も分かりませんでした。あの子たち、隠すの上手いんですね。

 柚さんの机が隣の子と離されていた? あー、たしかに、言われてみれば離されていたのかも。でも、あのクラスには、そんな机たくさんありましたよ。というか、机なんてキチンと整っていることなんてなくて、ひっちゃかめっちゃかでしたよ。だから、離されているというふうには見れませんでした。 

 この学年はね、県内でも荒れていることで有名なんですよ。今日もパトカーがきていた? そうそう。パトカーなんて、ほぼ毎日きますよ。恥ずかしいことですが、万引きとかリンチ、盗み、暴行なんて、日常茶飯事ですよ。

 こっちもね、生徒から虐められるんですよ。この間なんて、授業してたらクスクス笑い声聞こえてきて、「なんだろ?」って思ったら、廊下を通りかかった先生から、

「笹原先生、背中に紙が」

って。

 私の背中に「死ね。きもい」って書いた紙が貼られていたんですね。気づきませんでした。

 陸上部の杉山先生なんて、給食で残した牛乳が入ったバケツを頭の上からかけられていましたよ。最低ですよね。どうなってるんですかね。今の子達は。頭おかしいですよ。

 そのくせ、体罰はダメだなんて言われて。こんな嫌なことされたら、ピンタくらいしたくなりますよね。それをグッとこらえなきゃいけないんだから。教師っていう職は地獄ですよ。

 そして、今いじめ主犯の子が誰かに殺されたせいで、私に問い合わせが殺到して。精神的に参りそうですよ。

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