第28話  運動会


僕たちの噂話は時間が経つにつれ薄れていった、

小学生なんてそんなもんだと思う、行事があれば、

そちらの話題でもちきりになりのだから


夏休みが終われば、すぐに運動会の準備が始まる、

僕が通っていた小学校は10月の初旬に運動会がある、


僕の嫌いな行事の一つでもある、

お昼ごはんの時間が一番、辛いのだ

校庭でビニールシートを敷いてお父さん、お母さんなど家族で昼食を取るのだが

当たり前のように一人で食べなくてはいけない


一学年で10人いるかいないかだったと思う、

今年、僕の学年は5人で一人でいつも居る子だ

ただ、違ったのは真奈美ちゃんが増えた事だろう


運動会の日はあらかじめお弁当をお願いしておくと

ボランティアの人が用意をしてくれる


各自、給食室にお弁当を取りに行くことになっており、

僕は、真奈美ちゃんと一緒に取りに行った。


「賢一君、私と一緒にいたらまた噂になっちゃうよ」

「噂?噂じゃないじゃん、本当の事だし、真奈美ちゃんが嫌だったら離れるけど」

「嫌じゃないよ、心細かったから、私」

「気にしすぎなんだよ、皆は今、お昼ご飯に夢中で、僕らみたいにお弁当を食べている人の事なんてしらないんだから」


実際に、知らないだろう

だいたいの家族は時間が合えば一緒にご飯を食べるだろう

それが、当たり前の光景だと思う人のほうが圧倒的に多いんだから


「賢一君は去年も一人だったの?」

「そうだよ、保育園の時から」

「ごめん、そういえばそうだったね」

「大丈夫だよ、慣れてるし」


慣れてるなんて簡単に言ったけど

正直、参加したくない行事だった

今年は、真奈美ちゃんが一緒だから、心にゆとりがあったけど

居なかったらきっと

家に帰っていたかもしれない

帰ったところで冷たい家だけど、幸せそうに家族でご飯を食べている姿を見ているほうが苦しい


お昼、ご飯を食べ、僕たちはまた自分の席に戻った。


大人が、写真やビデオを撮っている姿をみると

いつも思っていた、邪魔だなと


かけっこ、玉投げとかしか低学年は出場しないのに

なんで、こんなに大人は盛り上がれるのか?


保育園の時からそうだった、

一人が当たり前だし、褒められる事なんて無いのだから

頑張る必要性が無いと思っていたからだ


15時ごろ、すべてのプログラムが終わった。

あの、噂話から

あゆみ、亜美と一緒に帰れていない


あゆみと一緒に居る事で、小学校生活は楽しかったけど

今は、そうでもない


校門の所で我が子を待つ大人達

なんで?

一緒に帰るのだろう


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