15円の恋心
@kosyoz
第1話タバコ
私が彼に出会ったのは、昼休みにたばこを吸っているときでした。「ライター貸してもらえませんか?」誠実そうな顔で話しかけてくる彼の顔は、鼻が高く目が大きい私好みの顔でした。
「大丈夫ですよ」外見だけで気を許してしまった私は、ダイヤシルバーのライターを彼の手に渡し、彼の手の綺麗さに驚きます。
「ありがとうございます」彼は、慎重にたばこに火をつけ、もう一度お礼を言いながら私にライターを返しました。
彼は一度たばこを吸い「カランダッシュのライター使ってるんですか?」と何気なしに聞いてきます。私は驚きのあまり「そ、そうなんですよ」と不自然な返しをしてしまいました。
私はそれを取り繕うように「とてもお気に入りなんですよ」とまたも不自然なことを、口走しってしまいます。
彼はおかしそうに口をゆがめ「僕もカランダッシュのライター使ってるんですよ」と続けました。私は恥ずかしくなり、スッと目を逸らし「そうなんですか」と素っ気ない返事をしてしまいます。
気を悪くしたのか、ただ単にタバコを吸い終わっただけなのか、彼は「ありがとうございます」と何かに向けて感謝し喫煙所を後にしました。
私はとても後悔していました。「なんでもっと気の利いた会話ができなかったのか」その思いが頭の中を駆け巡り、自責の念に苛まれてしました。
しかし、時間が経つにつれて、一度ライターを貸した人のことなどどうでも良くなりました。昼ご飯を食べ終わるころにはすっかり彼のことは、忘れていました。
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