魔王だって聖剣使ってもいいじゃない!〜聖剣と魔剣、二刀流で平和を目指します〜

VAN

第1話 出会い



☆魔王城【大広間】


「ぐっ…な…なんでっ……魔王が聖剣使ってるんだよ!!!」


立派な装備をした勇者一行が片膝をつき、ボロボロになっている。


「私、勇者に憧れてるのっ!あっ、勇者と言ってもあなたの事じゃないわよ」

私は笑顔で勇者に話しかけた。



「バカにしやがって……魔王のくせに…」

勇者は憎き者を見るようにこちらを睨んでいる。



「はぁ…別にバカになんてしてないんだけど…それよりあなたのその聖剣、触ってみてもいい?」

私は目を輝かせ勇者にお願いしてみた。



「いいわけねぇだろ!」

断られちゃった…。残念。



「そう…じゃあもう帰って」


私は聖剣に触らせてくれない勇者達に冷たく言った。

聖剣に触れないなら用はない。

持ち主を倒したら聖剣は人間の街に戻るようになっている。

だから倒したところで意味はない。



「お客様がお帰りよ」

私が二回手を叩くと


―――――シュッ――――――


私の部下、四天王の1人ベガドスが静かにやってきた。


「くっ…離せっ」


一纏めにされ、担がれる勇者一行。


ベガドスは勇者の言葉を無視し、翼を広げ飛び立った。



「ふぅ…どうせ勇者が来るなら…あの方ならいいのに…」


私は人間の国がある方角を眺めながら呟いた。


―――そう、魔王である私が勇者に憧れる事になったきっかけ…



―――――――――――――――――――――


今から約20年前、私の父と隣の国を支配している魔王が戦争していた。


当時は魔王同士でも争いが絶えなかった。



「ペル様、ここは危険です。お逃げください」


「う…うん」


私は戦争が始まると同時に、人間の国の近くにある屋敷に避難していた。


だが、敵の魔王軍がその屋敷にまで来てしまった。

どうやら内部に裏切り者がいたようだ。



私は必死に逃げ、外の木の陰に隠れていた。

だが、見つかってしまった。


もうダメかと思ったその時――


―――ザシュ――


立派な装備を着た勇者が私を助けてくれた。

魔族の子供とはいえ、角は生えている。

人間の女の子とは見間違えることはない。

だが、それでもその勇者は助けてくれたのだ。


「大丈夫かい?1人なの?」


勇者は優しく手を差し伸べてくれた。


「はい。大丈夫です。助けていただきありがとうございます」


私は勇者の手を取った。


やばい…カッコいい!!


「あっ!」

屋敷が燃えている。

私はそれを眺めることしかできなかった…


「………あれは…君が住んでたお家?」


「うん…」

住んでたっていうより、避難してたっていった方が正しいけど。



「そっか…魔族同士の戦争が終わるまでの間、うちに来な」

勇者が素晴らしい提案をしてくれた。



人間は敵だと教わっている。人間は恐ろしい。何されるか分からない。魔族はそういう教育を受けている。

もちろんペルもだ。


だが、まだ子供のペルは教えられた事よりも、目の前で見たカッコいい姿の方が勝ってしまっている。


「お世話になります」

私は丁寧に頭を下げた。



――――――――――――――――――――


森を抜け、人間の国に入った。


なんと、勇者の家は私の住む国のすぐ近くだった。


立派な豪邸の門を潜り、扉の前に来た。


――――ガチャ――――


勇者が扉をあけ、私は中に入った。


すごく広い。

赤い絨毯が敷いてある。


勇者に案内され進むと、1つの広い部屋に入った。


「どうだった?アルス。何か―――って、誰その子?ってか魔族じゃない!」


如何にも魔法使いって姿の女の子がいた。


(勇者様のお名前、アルス様って言うんだ〜)


「ああ、予想通り魔族同士で戦争してた。あれは暫く続くな。ところでミラ、まだ二人は来ないのかい?」


「来てないわ。そんな事よりその子は?」


ミラと呼ばれた女の子は私を指差した。


「そうだね。先にミラには紹介しておこう。え〜と…この子は…そういえばお名前は?」


アルス様はしゃがみ、私に目線を合わせて優しく話しかけてくれた。


「ペルセラーナです。みんなにはペルって呼ばれてます」


私はドキドキしながら名前を伝えた。


(アルス様が私をずっと見てる)


「ペルちゃんね。実はペルちゃんが襲われていた所にたまたま居合わせて助けた。家まで送って行こうと思ったら、住んでいた屋敷が燃えてしまったんだ。だから戦争が終わるまでの間、うちで面倒見ようと思って」


アルス様は真剣な表情でミラさんに話していた。


「……まぁ、ここはあなたの家だから……自由だけど……でも、わかってるの?その子、魔族よ」


「ああ、分かってる。だが、魔族でも小さな女の子だ。あのままにしたらペルちゃんは間違いなく殺されるだろう。見殺しになんて俺にはできない」



「はぁ…分かったわ。私も出来る限り協力する。でも、一応二人の前では角を隠しておいた方がいいかもね」


「そうだな」


「私はミラ。よろしくね。ペルちゃん」


「よろしくお願いします!」


私はミラさんと握手をした。


「じゃあ、2人が来る前にどうやって角を隠すか考えるか」


――――私達は、角の隠し方を考えた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る