第22話 カリンからの手紙



朝陽が昇る。


ソファで寝ていた僕は陽の光に眼が覚める。


「ふぁ〜〜…良く寝た…」

僕は眠たい目を擦りながら起き上がる。



窓から外を見るとユーリちゃん、クラさん、コンさんが1つに丸まって寝ていた。


コンさんはユーリちゃんの枕兼布団役。

クラさんは風避けの壁役になっているんじゃないか?と思えるような配置。


ユーリちゃんは本当にモンスターに愛されているんだな。



ユーリちゃんはまだぐっすり寝ている。


僕は《索敵》を使用し、ユーリちゃんが寝ている間に保存食用の角ウサギを狩ってくることにした。


5匹程狩って戻ると、ユーリちゃん達は起きていた。


「おはよう!うわ〜たくさん狩ってきたね!」


ユーリちゃんが無邪気に笑い掛ける。


「うん。これからまた長い旅になるからね!保存食にしようかと」


僕達は朝食を食べることにした。


「それで、これからどこ行くの?」

ユーリちゃんがご飯を食べながら聞いてくる。


「とりあえずソルクド王国のギルドに行って、仲間から連絡が来てないか確かめないとかな。向こうの用事が済んでれば、合流する国の名前が書いてあるはずだから」


ソルクド王国に着いた時、まだ連絡が来ていなくて不思議に思ったが…そろそろ来ていてもおかしくない。


むしろ…何も来てなければ、カリン達に何かあったという事だ。



「そういえば、私達の他の地球神の使徒ってどんな人達なの?」

ユーリちゃんがこちらを見て、目を輝かせながら聞いてくる。



「そうだね。1人目はカリン。スヴェール王国の聖女だよ。とても仲間思いで優しい。ユーリちゃんとも仲良くなれると思う」


ユーリちゃんは更に目を輝かせる。


「2人目はヘルディ。ガラム帝国のSランク冒険者だよ。僕達の中では今の所1番年上。頼りになるお兄さんって感じ」


「聖女様にSランク冒険者が2人か〜!みんなすごいね!その中に私が入っても役に立たなそう!」


「その2人もお前並みの強さなのか?」

クラさんが肉にかぶりつきながら問いかける。


「う〜ん…ヘルディとは戦った事あるけど、カリンとは無いからな〜。ヘルディも僕と同じで殺さないように加減はしてただろうし…」


悩ましい。


「でも強いのは間違いないよ!それに、ユーリちゃんもかなり強いでしょ」


僕はユーリちゃんの方を見る。


「え?」

ユーリちゃんはキョトンとしている。


「僕とクラさんが衝突している時に、微動だにして無かったし。クラさんやコンさんと言った強力なモンスターを惹きつけるにはそれなりに強さは必要でしょ」


僕はユーリちゃんに笑顔で答える。



「そうなの…かな?私戦った事ないから…全部クラちゃん達が倒してくれるし…」


まぁそうだよね。

生まれてからほぼずっと一緒にいるんだ。

戦った事はない可能性は十分あるし、むしろドラゴン従えてる子に勝負を挑む人はそんなにいないだろう。



―――僕達は朝ご飯を食べ終え、少しゆっくりしてからソルクド王国の冒険者ギルドに向かう事にした。



――――――――――――――――――――――


☆ソルクド王国【冒険者ギルド】


僕達はソルクド王国の冒険者ギルドに到着した。


いや〜楽だった。


森からここまで、クラさんに乗ってきたからあっという間!

コンさんはお留守番だけど、他のモンスター同様いつでも呼び出せるらしい。

流石魔物使い!


てかソルクド王国では、クラさんが王都に出現しても誰も騒がないんだな…。



僕とユーリちゃんは中に入り、受付のお姉さんに僕宛の手紙が届いてないか聞いてみた。


「はい、一通来てます。どうぞ」


僕は手紙を受け取る。



――――――――――――――――――――


コーキへ


この手紙が届き、コーキがスヴェール王国に来る頃には2ヶ月は最低でもかかるでしょう。

なので、もう会えないかもしれません。

コーキと旅した期間は短かったですが、とても楽しかったです。


さて、スヴェール王国に向かった私達に何があったのか、ここに記します。


スヴェール王国の港に着き、早々に衛兵に捕らえられました。

私とヘルディは牢に入れられ、後日謁見しました。

その時に私とヘルディは死罪となり逃走しました。

私はヘルディに助けられて、無事大神殿まで逃げることができました。

ルージア神の使徒だと思っていた大神殿長は私の味方をしてくれ、今も匿ってくれています。

今の所、私は無事です。


ヘルディは…私を逃した後、戦いました。

しかし私が大神殿に着いた頃、王城を中心に巨大な火の柱が立ち、跡形もなくなりました。


後日、王太子様が大神殿を訪れ、ヘルディが生きている事を教えてくれました。

でもヘルディは牢に入れられ、血だらけでいつ亡くなってもおかしくないそうです。


ここからが本題です。

王太子様はヘルディと国王様の会話を聞いていたそうです。

スヴェール王国国王はルージア神の使徒でした。

そして、国王は何世代も生きているそうです。

その方法は代々生まれる王太子の身体を新しい器とする事。


そこで私は、王太子様と共にクーデターを起こし、ルージア神の使徒を倒しに行くつもりです。

決行日は3週間後。

合流するまでルージア神の使徒に手を出さないという約束を破りごめんなさい。


でもヘルディを私の聖魔法で癒し、必ず逃します。

クーデターが失敗したら、コーキとヘルディでルージア神の使徒を倒してください。


改めて、楽しい時間をありがとう。


カリン


――――――――――――――――――――――――


僕は手紙を持つ手が震える。


なんて事だ…まさか…スヴェール王国の国王がルージア神の使徒だったなんて…


スヴェール王国からソルクド王国まで、鳥モンスターが手紙を運ぶのに約1週間。


ってことは2週間後…下手すれば1週間後にはクーデターを決行してしまう。


ヘルディを倒したのが国王なら、カリン1人では間違いなく勝てないだろう。

王太子様の軍勢がいた所で、結果は変わらない。



「どうしたの?」

ユーリちゃんが震える僕を見て聞いてくる。



「それが…仲間が向かっていたスヴェール王国にルージア神の使徒がいたんだ。1人が重症で、もう1人が2週間しないうちに勝負を仕掛けるらしい…」


僕は震えながら言った。


「大変!直ぐに向かいましょ!!」


ユーリちゃんは口に手を当て、驚きながら提案する。


「無理だよ…間に合わないよ…。手紙にもあるけど、国を渡って船に乗って…着く頃には2ヶ月経ってる」


僕は俯きながら言う。


「なにいってるのよ!クラちゃんに乗せてって貰えば1週間かからないくらいで着くわ!」


「!!!」


僕は思わずハッ…と顔を上げる。


そうだよ!

クラさんがいる!

手紙の内容が衝撃的過ぎて頭になかった。

それなら間に合うかもしれない!


「お願いできる?」


「うん!クラちゃんには私から頼むわ!」


「ありがとう。じゃあ僕はその間に御者さんの所に行ってくる」


僕達はギルドの外に出た。


御者さんには帰りの為にギルド近くの宿に泊まってもらっていた。


僕はその宿に向かい、ドアをノックした。



「すみません。突然お邪魔して申し訳ございません。コーキです」


「お〜。もう用事は済んだのかい?」

御者さんの1人が出てきた。


「いえ、それが急遽帰らないといけない事になりまして…」

「何っ!そうか。なら直ぐ準備を―――」


僕の言葉を聞き、直ぐに準備する為にもう1人を呼びに行こうとする御者さんを、僕は慌てて引き止めた。


「ちょちょっ…待ってください。実は僕、これからドラゴンに乗ってスヴェール王国まで行きます。なので、これをお渡しししたくて…」

僕は大金貨8枚を出す。


「帰りの分のお金と、帰りの護衛を雇う分、後は迷惑料です。受け取ってください」


「え?こんなに!?いいのか…?」

御者さんが驚きながら聞いてくる。


「はい。ここまで連れてきていただき、ありがとうございました。そして、無駄に引き止めてしまいすみません」


僕は頭を下げた。


「いやいや、それは別にいいんだ。十分な前金は貰ってるし、何不自由なくさせてもらったからな。そっか…じゃあ有り難く受け取らせてもらう。理由は分からないが、頑張れよ!あと、またいつでも頼ってくれ!」


僕は御者さんと握手を交わし、宿を後にした。


宿の外にはユーリちゃんとクラさんがいた。


「急いでいるんだろう?我に乗れ。特別に協力してやる」

クラさんが乗りやすいように低い体勢を取ってくれた。


「ありがとう。クラさん。よろしく!」


「ふんっ」


――――パサッ―――――


クラさんが空を飛んだ。


「少し飛ばす。しっかり我に掴まれ」


そう言ってクラさんはスピードを上げた。


………すごい!これなら、本当に1週間かからずスヴェール王国に着くかも!!



―――――僕達はスヴェール王国に向け空を旅するのであった

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