第10話 Sランク冒険者ヘルディ



☆ジャーロヘガル州【冒険者ギルド:応接室】



応接室には、僕・カリン・ヘルディ・ギルドマスターの4人がいる。


ソファには、僕の隣にはカリンが座っている。

対面にヘルディ、その横にギルドマスターだ。



「お初にお目にかかります。ジャーロヘガル州ギルドマスターのベルビアです。あなたの噂は私も耳にしております」


ジャーロヘガル州のギルドマスターは女性だ。

カリンの絶壁……小ぶりの宝と違い、ベルビアさんは豊満で存在感が凄まじい物を持っていらっしゃる。

これをチラ見しない男はいないだろう。

僕も許されるなら凝視したい。



だが、ベルビアさんはただのギルドマスターではなさそうだ。

ゴースリア王国のギルド総括エルヴァさんに会った時と同じオーラを感じる。

只者ではない雰囲気…とでも言うのだろうか。



「初めまして、ゴースリア王国のコーキです。よろしくお願いします」

僕は頭を下げた。


「スヴェール王国のカリンです。よろしくお願い致します」

カリンも挨拶をした。



「…で、俺に話ってなんだ?」

ヘルディさんが、僕の方を見て聞いてきた。



「はい。是非、僕と手合わせ願います。噂に聞くSランク冒険者の実力を見たいのです」


僕は真剣な表情をして答えた。

ストレートに神の使徒か?なんて聞けるわけもないし、手合わせをすれば分かりそうだからね。



「ん〜…悪いなコーキ。俺は無駄な戦いはしたくない。たとえ訓練でもな。それに――いや、なんでもねぇ」


ヘルディさんが何か言おうとして止まった。



「どうしても…ですか?」


「ああ」


どうやら…どう頼んでも受けて貰えなそうだ。

困った…


少しの間、応接室には沈黙が続いた。


すると―――


――――――ガチャ――――――


「失礼します!マスター、業魔の森にレッドドラゴンが2匹目撃された模様です」


受付のお姉さんが、ギルドマスターに緊急伝令を伝えにきた。



「なんですって!?今のところ被害は?」


ベルビアさんが勢い良く立ち上がり、受付のお姉さんに聞いていた。


どうやら冒険者3人が遭遇し、重症らしい。

まだ街の方には来ていないが、いつ業魔の森を抜けて来るかは分からないらしい。



「ベルビアさん。レッドドラゴンは俺に任せてくれ」


ヘルディさんが立ち上がり、ベルビアさんに言った後僕を見た。


「コーキ。お前もこの依頼を受けろ。そして、お前の実力を見せてくれ。お前も俺の実力を見たいんだろ?レッドドラゴンはちょうど2匹だ。1人1匹担当すればいい。それに俺が認めるくらいの強さなら、手合わせしてもいい」


「ちょっ…Sランク冒険者2人に依頼したら報酬はとても払いきれるか…」


「俺の分はいい。コーキの分だけ払ってくれ」


僕は受けると言ってないのに、勝手に話が進んでいく。

まぁ、手合わせしてもらえるなら受けるけどね。


「分かりました。レッドドラゴン討伐お願いします」


―――こうして、僕はレッドドラゴン討伐を受ける事になった。


まぁ、ヘルディさんの戦闘姿が見れるからいいか…


僕達はレッドドラゴンのいる業魔の森に向かった。


―――――――――――――――――――――――


☆ジャーロヘガル州【業魔の森】


業魔の森に着いて1時間ほど歩き、目撃証言のあった場所近くに到着した。


索敵サーチ


(この反応…証言通りいるな)


「本当にいましたね、レッドドラゴン」


僕はレッドドラゴンのいる方角を向き、呟いた。


「!!この距離でもう分かるのか…やるなお前」


ヘルディさんが僕の方を見て感心していた。


ここまで近づかなくても索敵は出来たけどね。

それに僕に感心しているが、ヘルディさんもレッドドラゴンには気づいていたみたいだ。



「もうすぐレッドドラゴンと遭遇する。そしたらカリンは離れてろよ」


「ええ。大丈夫よ」


「それじゃ、レッドドラゴンのところに行きましょう」


僕達はレッドドラゴンの元へ歩みを進めた。



…………………


寛いでいた2匹のドラゴンがこちらを見る。


「俺は右、コーキは左だ。いいな」


「はい」


僕達は担当するドラゴンを決めた。


レッドドラゴンが起き上がり、僕達を睨みつける。


「「グォォォォオオオオ」」


2匹のドラゴンが咆哮する。


《身体強化・風煙》


僕はスピードが上がる身体強化を使用した。



「準備はいいか?んじゃ、いくぞ」


ヘルディさんが僕の方を見て言った。


「はい」


僕は返事をし、剣に触れた。



――――――シュパッッ―――――

――――――ドンッ―――――――


僕が担当した左のドラゴンは頭部が切断された。

ヘルディさんが担当した右のドラゴンは、一瞬で懐に移動し突き上げられた拳で倒されていた。



(あの一瞬で懐に入るなんて…凄いスピードだ。それに…ただの拳であの威力…)


ヘルディさんも僕が担当したドラゴンを見て驚いていた。


「ハハッ!あの一瞬でドラゴンの頭部を切断するか!やるなコーキ。Sランクは伊達じゃねぇな」


「どうですか。手合わせする気になりました?」


「ああ、いいぜ。どうする?今やるか?ちょうどここなら人もあまりいないだろうしな」


「ええ、お願いします。カリン、ギルドに戻って討伐完了した事を伝えてもらえませんか?」


僕はカリンの方を見てお願いした。


「…ええ、分かったわ」


何かを察したのか、カリンは頷きギルドの方へ向かった。


僕はヘルディさんの方へ剣を構える。


「武器は出さないのですか?」


突っ立っているヘルディさんに聞いてみる。


「ああ、俺の武器は拳だ。武器を使わないなんて、お前を舐めているわけじゃねぇよ」

ヘルディさんが笑いながら言った。


「それに…その強さ…ちょっと気になる事があるからな…」

先程の笑顔と違い、真剣な表情になった。


空気がピリッとする。


「では、いきますよ」


―――シュッ―――――


僕はヘルディさんの左後方へ回り込み、剣を振った。


――――――ガキンッ―――――


ヘルディさんは振り向かずに籠手で僕の剣を防いだ。


――――ズサッ――――


「くっ…」


剣を弾かれた僕は地面を擦る様に着地した。


「今の…なかなかのスピードだ。4速まで上げておいて良かったぜ」


(4速?ヘルディさんの魔法だろうか?)


「特別に教えてやる。お前も今、身体強化を使っているな。だが、俺の身体強化は特別性でね。1〜6速まで上がるんだ。で、今が4速ってことは……もう分かるよな?」


ヘルディさんは余裕の表情でこちらを見ている。



「ええ、よく分かりました。教えていただきありがとうございます」


《身体強化・極》


僕は強化版身体強化を使った。

これは黒神狼の時に使って以来だ。



―――――シュッ―――――


僕はヘルディさんに向かっていった。


「…ふん。真正面からぶつかりに来るとは…舐めてんのか」

ヘルディさんは僕目掛けて拳を突き出す。


《身体強化・5速》


―――――――キンッ――――――


―――――ズサァァァ―――――


僕達は互いに吹っ飛ぶ。

だがどちらもしっかり着地した。


「5速の力と互角か…やるな」


ヘルディさんが僕の方を見て言う。

まだ余裕の表情だ。


「互角?何言ってるんですか?」


僕はヘルディさんに聞き返す。


「………何?」

ヘルディさんの表情が険しくなる。


―――――ピシッピシッ――――


僕の剣を受け止めたヘルディさんの左手用籠手にヒビが入った。


「なっ…!!」


ヘルディさんがそれを見て驚いた。


「なるほど…やるなコーキ。これは楽しめそうだ」


《身体強化・6速》


「俺のトップギアだ。いくぞ…」


互いに最強の身体強化を使用した。

ここから先はどうなるか分からない。


――――両者睨み合った。

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